地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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死闘

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「油断せず」

 無音の世界で罪が言葉を放つ。
 その瞬間だった。

 ガキィ!

 無音の世界に突如、五月蝿く響く衝突の音。
 刀と刀がぶつかり合い火花が舞う。
 皆は目が開けられないので何が起こっているのかは想像で補っていた。

 おそらくだがサトリと罪が正面からぶつかったのだろう。
 だが、その先が想像しにくい。
 ギリィと刀がずれ動くだけで、進展がない。
 力づくでお互いが、お互いを退(しりぞ)けようとしているのか?
 暫くの間は刀が擦れる音が微かに聞こえるだけだった。

 だが、それだけで終わる筈がない。

「これは如何だ?」

 罪は刀をそらして外し、サトリから距離を置くことで衝突していただけの状況を変えた。
 その瞬間に無数の斬撃が風をまとって放たれる。
 サトリは斬撃が放たれたことを即座に察知して、その場を跳んで離れる。

「あぶねーな」

 サトリは笑っていた。
 それは久々に強敵と刃を交わすことが楽しいからか?
 罪は刀を振り回し、只管サトリを斬ろうとする。
 だがサトリはその力を認めてこそか、力づくでは勝てないと判断し、攻撃をそらして力を分散していた。

 サトリは罪の心を読む。
 憎しみだらけで、あまりにも見てられない。
 だが、これも作戦の為だ。
 見るしかない。
 そうしてサトリはある記憶を見る。
 それを見たサトリは自分にとって都合の良い記憶だと判断し、笑った。

「お前、不幸の鬼を止められなかったんだな!現場に居たくせに!」

「なっ!?」

 サトリの言葉を聞いて動揺した罪はサトリに隙を与えてしまった。
 サトリは刀を低く構え、突きの姿勢をとったかと思えば一瞬でその腹を刀で突き破った。
 罪は血を吐き膝をつく。

「ガッ!?」

「お前は翠を助けられなかった無能だよ」

 サトリは罪の動揺を誘って隙を作らせた。
 その隙を利用して一撃必殺を見舞わせたというところだ。
 だが罪はその一撃で怯むことはなかった。

「お前如きがこの無念の記憶を見るなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 罪はその目に青の光を宿し、力強く立ち上がったのである。
 罪は足を上に素早く運び、上段蹴りの姿勢になる。
 そして誰もがついていけないだろう速さでサトリの顔面横を蹴った。

 サトリは倒れそうになる。
 すると罪はサトリの頭に踵(かかと)を落として地面にひれ伏さそうとした。
 だがサトリは地面に手をつき、力を込め、地面から勢いよく這い上がった。

 その勢いに任せて罪の顔面を刀で突き刺そうとしたが、罪はサトリの手を見切って掴んでしまった。
 罪はニヤリと嗤う。
 罪の心が読めたサトリは次に何が起こるかわかった。

「おらっ!!」

 罪は断崖絶壁の場所にサトリを投げたのだ。
 これには心が読めるサトリも冷や汗をかく。
 だがサトリは冷静に刀を地面に突き刺して、投げられた時の力を地面に分散して断崖絶壁のギリギリで止まる。
 そして目にも止まらぬ速さで崖からも罪からも離れる。

「ギリギリだぜ!」

「くそがっ!」

 罪はまたも正面からサトリにぶつかろうとする。
 だが今度はサトリが見切った。
 サトリは罪の突きをさらりと交わして腹に蹴りを入れた。
 罪は上空まで飛ばされる。
 だが罪は余裕があった。

「これなら如何だ!?」

 罪は風を強めて、竜巻を作る。
 そしてその竜巻はまるで意思を持っているかのようにサトリを襲おうとする。

「Mの事件以来ぶり!!」

 余裕そうにサトリは竜巻を避けていく。
 だが竜巻は消えない。
 サトリは消えない竜巻を如何するか悩んでいた時だった。

「うおっ!?」

 足下がぐらつく。
 足下を見れば小さな風の渦が発生していた。
 これも罪の力か。
 サトリは体勢を崩し、仰向けに倒れる。
 すると罪が上空から勢いをつけてサトリの腹めがけて降りた。

 罪の足がサトリの腹に減り込む。

「うぅ……ぐぅ」

「如何だ?痛いだろ。その声を聞かせたくて辺りを無音にしたんだぜ」

 殺は罪の笑い声を聞き、悪趣味だと蔑んだ。

「はっはっは、これで終わり……っ!?」

 罪は己が足をサトリの腹から離す。
 罪の足は斬り裂かれ、血が無惨にも噴き出していた。
 サトリは呻きをあげながらも、藻搔いたのだ。
 サトリは片足を上げて体勢を崩した罪の、もう片方の足を蹴り、倒れさせる。
 そうして罪の上に跨り、刀を罪の顔に突き刺そうとした。
 だが……。

「危ないな」

 罪は顔をそらしてサトリの刀を避ける。
 そうして、サトリの頭に頭突きを食らわし、体勢を整えた。

 サトリは再び呻きをあげる。
 だがしかしサトリは退かなかった。

「俺の能力を見せてやるぜ!」

 その言葉を聞いた瞬間に罪の目の前に無数のサトリが立ちはだかる。
 罪は分身か何かかと思い、刀を握る。

「全員殺してやるよ!」

 罪は無数のサトリを斬り始める。
 罪の前に立ちはだかるサトリの群れは弱い。
 本体は何処だと罪が考えていた時だった。

「バーカ!此処だよ!」

 サトリは罪の背後にいたのである。
 そして罪を刀で斬ろうとする。
 もう罪は逃げられない、避けられないとサトリが勝ちを確信した時だった。

「言っただろう?全員殺すって」

 罪は背後を振り向き、サトリの振りかざした刀を己が腕で防ぎ、彼の腹を殴った。

「ぐぁっ!?」

 罪はサトリを全員殺す為に、全員の動きを把握していたのだ。
 それだけでは終わらない。
 罪は体勢を崩したサトリを斬り刻んでいった。
 サトリは悲鳴をあげる。
 サトリの幻影たちは消える。

「ははっ、絶望しかないだろう?楽には死なせない」

 そう言って罪がサトリにトドメをさそうとした時だった。
 サトリの腹に突き刺していた刀が動かなくなる。
 罪は目を疑った。

 なんとサトリは腹に突き刺さった刀を掴み、罪の動きを止めたのだ。
 罪は嘘だろうと焦る。
 するとサトリは笑った。

「生憎、俺は絶望なんて知りたくないんでね。いつも希望しか見たくないのさ。だから……絶望は去れ!!」

 ガッ!

 罪は殴られ吹っ飛ばされる。
 罪は混乱した。
 あれだけ斬った筈なのに何故、立ち上がれるのかと。
 するとサトリは一言でその疑問を解決してみせた。

「根性」

 その一言はあまりにも幼稚だが、何よりも強い言葉だった。
 罪はその言葉に怒る。

「根性なら……俺にもある!」

 罪が青い光の風をまとう。
 この一撃で決める。
 そう言っているかのようだった。

 サトリも目を鋭くさせる。
 そうして青の闇をその身にまとわせた。
 サトリも終わらせるつもりだ。
 この不毛な争いを。

「いざ」

「尋常に」

 二人は刀を構える。

「勝負!!」
「勝負!!」

 その瞬間、すべてが風をまとった。
 一瞬。
 一瞬でお互いに攻撃をした。
 二人は全てを出し切った。

「ぐっ!?」

「いっ!?」

 サトリの腕に切り傷があらわれる。
 あまりの速さに傷口が開くのが遅くなったというところか。
 それは罪も同じだった。

 無傷だった筈の片足に大きな傷が出来る。

 罪は両足を封じられたも同然だった。
 サトリは罪の方を向いて走る。

「今度はこちらの番だぜ!!」

 サトリは刀を構える。

「ちくしょう!まだ終わってねぇぇぇぇぇぇぇ!」

 罪が叫んだその時だった。

「いいえ、終わりよ」

 高い女の声が響いたかと思えばサトリの攻撃は阻まれていた。
 またも皆が聞いたことのある声。
 それは紛れもなく邪の声だった。

「邪先輩!?」

「罪く~ん!足使えないなら、もう終わりよ。退きましょ?人数的にぶがわるいわ!」

 邪は至極真っ当なことを言う。
 だが罪は抵抗する。

「ですが!ここまで消耗させたのですから……」

「私のご飯、暫く食べてないわよね?私のご飯に喧嘩売ってんの?」

「う……」

 罪は邪には逆らえないようだった。
 邪は罪の腕を掴み、闇へと消えていく。

「じゃ~ね!五人の英雄!……また今度」

 最後の声は怒りに満ち溢れていた。

 風が止む。
 台風がおさまる。
 それはすべてが終わったことを現していた。

「終わった……のですか?……サトリ兄さん!」

「サトリ!」

 サトリは地面で寝転んでいた。
 それを見た皆は一目散にサトリに駆け寄る。

「大丈夫ですか?!」

「ああ、無事だ。……良かった、守れて」

 嗚呼、太陽が眩しい。

 戦いに勝った者は安堵していた。
 愛しい世界を守れたことに。
 英雄という名声などいらない、欲しいのは平和。

 勝者はいっときの平和に目を細める。





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