地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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御影の能力

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第一章 七話


少年と骸骨にお礼を言って別れる準備をする。少年は別れ際にまた遊ぼうと言ってきた。
だが殺は何も言えなかった。
この事態が解決すれば現世との境界もなくなるかもしれないから。
そうしたら地獄で少年と会うことは二度とないだろう。
殺はそのことが言い辛かった。

だから殺は自分の証である紅い髪を切って渡す。

「これ……きらきら光ってて凄く綺麗」

少年が言う通り切り離された髪は紅く美しく光っている。
淡く優しい光。
神気に満たされた髪は触れるだけで身も心も浄化される。

「これはお守りです。沢山の友達が出来るお守り。これで暫く私が居なくても大丈夫ですよ」

その言葉に少年は全てを察する。
殺がいなくなることを察して、その手に追い縋った。

「行かないで……」
「それはなりません。私たちが行かなくてはもっと死人が出てしまいます。……大丈夫です!人間界の視察のときに会えるかもしれませんから!」
「本当?」

少年はまた会えるかもしれないという言葉に心を躍らす。
それほど殺が彼にとって大きな大事な友達という存在なのだ。

「ええ、絶対に会いに行きます。そのときにはついでに花子さんに謝りに行きましょうか」
「あはは!そうだね!」
「神様、もう行かなくては」

骸骨がそろそろ行かなくてはと言う。そうだな、もう行かないと。
骸骨にも髪を渡して前に進んだ。
若干妖力を使い過ぎた所為か足取りは重い。

最後の敵までもう少し。
だがしかし、いつまで歩いたのだろうか?さっきからずっと同じ道を歩いている気がした。
地獄までの道、それがまるで無限ループ。そんな気がして殺は少し不審に思った。
そうしてサトリがあるものを発見する。

「嫌だなぁ……呪符の欠片があるよ。これは何か出て来るね……」
「正解でーす!」
「「「「「!?」」」」」

皆がいきなりの声に驚く。 
振り向いた先には大きな翼を持った赤色の混合者がいた。

「この世界の絶対的支配者!混合者様のおっ通りだー!」
「すいません。生憎、呪符の欠片が一個しかないんで出直してください」
「やだぁーー!」
「チッ、面倒くさい」

殺は素直に悪態をつく。
みんな、へとへとで混合者のノリについていけていないようだ。
そりゃそうだ、みんな疲れている。そんな時にハイテンションな奴を投入してみろ。
悲惨な事になる。

「さーて、ここからがゲームの始まり!」
「ゲーム?」

ゲームという言葉に皆が反応を示した。
少し身構える殺に、何が起きているのか気になるMと御影とサトリ、少し怯えている陽。

「そう!先ずこの無限ループの世界は私が作っておりまーす!ですがこの世界、攻略方法があるのです」
「攻略方法を教えてから死んでください」
「まあまあ!そう堅いことを言わずに!じゃあ攻略方法を言いまーす!耳の穴を開けて聞いてね!」

耳の穴は開いてるだろうと心の中で突っ込む。

「一つは私から呪符の欠片を奪って倒すこと。二つ目はこの世界を普通に戻すスイッチを探すこと!どっちでもいいよー!まあ、後者の方が楽かな?」
「どっちも一緒じゃん」

サトリが面倒臭いといった態度を全面に出し発言する。
彼には全てがお見通しだった。
だからこそ面倒だったのだろう。

「んー?」
「心を読ましてもらったけど、スイッチは君の体の中っつーか……君の能力のon.offを操れってことだよね。それは流石に無理だから前者を選択しまーす」

能力を強制的に切るってことはどの道倒さなきゃならない。
この混合者は無限ループの中で嘲笑う気満々だったみたいだ。
混合者はケタケタ笑いだす。

「それは難しい方を選んでしまいましたねー!では始めましょう!死のゲームを!」

その言葉を聞いた瞬間に待ってましたと言わんばかりに御影とサトリが混合者に拳で先制攻撃をする。
だがおかしなことに攻撃が当たった相手はMだった。
Mは二人の拳を受け、吹き飛ぶ。

「あぁん!」
「何やってるんですか!?兄さん!」
「いやいや!こっちもいきなりMが出てきてびっくりしてるのじゃが!?」

一体どういうことだ。
そんな疑問は一瞬にして解かれる。

「方向を操る能力」
「サトリ兄さん!?」
「それが奴の能力だ」

サトリは忌々しいものを見る目で混合者を見つめる。
如何やらサトリは能力すらも見通していたようだった。
サトリの心を読む能力はこんな時に役立つものだ。

「御名答ー!その通り私は方向を操れるのでありまーす!だから無限ループが出来たんですよ!さあ、貴方たちに私が破れますかね?!」

……まさかの能力持ちだった。恐らく妖が方向を司る強力な者だったのだろう。
だがそれでも関係ない。例え敵がどんなに強かろうと倒すまでだ。
絶対に負けてなるものか。
殺は混合者を斬り殺す気でいる。
だがその時に御影はにやりと笑った。

「みな、耳を塞ぐのじゃ」
「耳を塞ぐ?」
「早くせい!」
「わかりましたわ!」

御影に言われるまま耳を塞ぐ。
その様子に混合者は興味津々だ。

「私を倒す方法が見つかったのー?でも私はどんな攻撃でも方向を変えれるよ!」
「五月蝿い馬鹿じゃの……スーー……」

御影が大きく息を吸う。
これから何が起こるのだろうか?
殺は少しそれが気になりながらも見守ることにした。
すると御影が大きく口を開かせる。

「ぎしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」

その時、誰もが思った。
御影ってこんな声が出るんだなと。
耳を塞げってこういうことか、塞がなかったら鼓膜が破れるところだったと、皆が冷静に思った。

音による全方向の破壊攻撃は範囲も広すぎて相手は能力を使っても意味が無かったようだ。そりゃそうだ。仲間にすら攻撃がいっていたもの。

「今のうちに呪符を探すぞ」
「……そうですね」

そうやって呪符の欠片を探していると混合者が呪符を持っていることに気づいた。
如何やらこの亡者、呪符をも隠して嘲笑っていたらしい。
タチの悪い亡者だ。

呪符を貼って燃やして亡者を捕まえる。
あれだけ派手な登場をしたのにあっさり倒せたなと思うが、実際は御影のおぞましい攻撃で終わったのだから当たり前だ。

……御愁傷様としか言いようがない。

「これで無限ループはなくなりましたね」
「ああ、最後は間近じゃな。皆は大丈夫か?」

御影の問に皆は余裕を見せて答える。

「僕なら大丈夫だ。いつでも戦える」
「俺もー」
「私もですわー!」

「それでは行きましょうか!」
「「「「おう!」」」」

そうやってみなは最後の敵の下へと向かって行った。





みんなヤラレタか……。
平等王様も捕まってしまった。
許さない、あんなに優しい平等王様を捕まえるなんて。
やはり地獄の奴らは最低だ。

だが今はそのことは置いておこう。
もう時は来たのだ。
見せつける時が、暴れる時が。
地獄が終わったら次は現世!
そして最後を飾るのは俺だ!

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