17 / 167
仕事の後日談
しおりを挟む殺は今日という日が来るのを忌々しく思っていた。
その理由は簡単である。
何故なら、前回の祭りの警備の仕事を受け入れてもらう為に一日命令を絶えずにこなすということになったのだから……。
きっと奴等のことだ、堂々と仕事を押し付けてくるであろう。
そう思っていたが実際は違った。
「殺!書類を持ってきて!」
「どうぞ」
「殺ー!茶が欲しいのじゃが」
「はい」
「罵ってくださりませ‼︎」
「黙れ、雌豚」
「殺、命令だ少し休め」
「え?」
以外と普通に仕事もしてくれるうえに、陽に至っては休めと命令をしてきた。
さりげなく命令にする心遣いに感謝しきれないほど感謝し仕事を少し片付けてから休む。
かなり疲れていたのか今にも眠ってしまいそうだ。
暫くは眠気と戦う殺だったが結局は負けてしまい心地良く浅い眠りについた。
「陽!」
「何だ?騒々しい」
「……腹立つ……。まぁいいや、ちょっと閻魔に用事があるんだけど代わりに行ってくれない?」
サトリが苛つきながらも必死に堪えて話す。
だがその顔はどう見ても鬼の形相だ。
「自分で行けばいいではないか」
「あっそー。なら殺に行かせようかなー?気持ち良さそうに寝てるけど」
「なっ!?」
陽の表情が焦りに変わる。
我ながら酷いことを言ってしまったとサトリは考えてしまうが、数秒後には別にいっか!となる。
陽は憎そうにサトリを眺めている。
何せ閻魔に会ったら最期……、長話に付き合わされるのだ。
閻魔は仕事をサボって長い時間、人をお喋りに巻き込むのだ。
これは絶対に行きたくないパターンである。
だが行かねば殺が起こされてしまう。
陽は仕方なく閻魔の下に赴くのであった。
「覚えてろよ!!」
「はいはーい!いってらっしゃい!」
「これで邪魔者は消えましたわね……」
「ああ、始めるぞ」
「「「第一回!早く殺と陽をくっつける会議!」」」
説明しましょう。
この無駄な会議はその名の通り殺と陽をカップルにしようと目論む会議です。
主に馬鹿共が集まってお菓子を貪り食べながら雑談してる光景をご想像いただきたい。
「それで如何するのじゃ?」
「くっつけるにはねー……とっとと命令を使うとか?」
「それはいけませんわ!!」
サトリの発言にMが食ってかかる。
Mの怒りの顔つきにサトリは何事といった表情で御影に助けを求めている。
だが御影は机に顔をつけて黙っていた。
要するに見捨てたということだ。
その間にMの一人語りが始まる。
「いいですか!?幸せ溢れるカップルに仕立てるには無理矢理は言語道断ですわ!!自然と好き合って付き合うに至る……この普通が重要ですわ!!」
「はぃ……」
サトリは小さい消え入りそうな声で答える。
御影は相変わらず机に突っ伏したままだ。
サトリはそれを恨めしそうに睨んでいる。
「くっつける為に私たちはサポートをしなければなりません!例えば二人きりの時間を作るとか自然と好印象を持たせるとか!そのくらいでいいのですわ!」
「じゃあ、この会議は何の為に……」
サトリは疲れたかの様な態度でMに問いかける。
それに対しMは豊満な胸を張って答えた。
「結束して行動する為ですわ!」
「はあ……「ほう……」
「「「!?」」」
思わず皆が背後に振り向く。
皆が振り向いたその先にはなんということか、殺が立っていたのだ。
殺のその表情は笑ってはいるが目が笑っていない。
皆の様子はそれぞれだ。
固まったままの御影、世紀末を迎えたかの様なサトリ、恍惚の表情を浮かべているM……。
そんなことは如何でもいいと言わんばかりに殺は口を開ける。
「仕事しなさーーーーい!!」
「ひぃ!!」
予想は大体はついていたが、その後に予想外な言葉が殺の口から発される。
「何故です……」
「「「え?」」」
「何故に私を呼ばなかったんですかぁぁぁぁぁぁ!?」
「「「ぇぇぇぇぇえ!?」」」
皆が驚き、御影にいたっては呆然としている。
この会議で一番の障壁となるのは殺だと思っていた分の反動が凄く大きかったから仕方がないことだろう。
それはさて置き呼ばれなかったことに何故か怒っている殺に皆は驚きの白さの表情を浮かべている。
取り敢えずMが宥めてから、これが何の会議か知ってのことかと訊いた。
殺は首を縦に振る。
その瞬間にMがパァっと明るくなるが殺が「陽と仲良くなりたいだけです。他意はありません」と言って「チッ」と舌打ちをしてから会議を始める。
だが御影は思った。
M、お前は見逃しているぞ……確かに殺は表情には出さなかったが声が若干焦ってたぞ……と頭の中で考えていた。
「まぁ、始めますわ!もう殺様が知ってしまったので堂々としましょう!」
Mは生き生きとした表情で始める。
殺は待ってましたと言わんばかりの表情だ。
つまり真面目に楽しんでいる。
目はキラキラと輝いているが、その目は獲物を狙う肉食獣の目であった。
「手っ取り早く陽と仲良くなる方法を教えなさい」
殺が急かす。
だがMは普通に一言で返した。
「殺様が自分の感情を認めて素直に優しくなればいいのですわ」
「なっ!?」
流石の殺も固まる。
ここまで直球でくるとは思わなかったのだろう。
未だに混乱している殺に少し同情しそうになるが、別に如何でもいいやとサトリは斬り捨てる。
「……まぁ、認めるのは置いといて、優しくはしてみましょう」
この日はこれで幕を降ろした。
次の日に殺は陽を甘やかすつもりだった。
だがそれは水泡に帰す。
「殺、書類が溜まっているぞ。持って来てやる」
「ありがとうございます」
「殺、そろそろ甘いものが欲しくなっただろう?
ココアを淹れてきたぞ」
「えっ!……ありがとうございます」
「殺、疲れただろう。肩揉んでやる」
「ありがとうございます!」
甘やかす前に甘やかされていたのだ。
殺は嬉しさと悔しさという複雑な思いに陥らさせられて再起不能だ。
そして、萌えという感情が湧き上がり思わず鼻血を出してしまう。
再起不能になる前に鼻血で紙にこっそり遺言を書いていた。
『かわいい』
陽はその遺言に気づかずにいきなり鼻血を出して倒れた殺にオロオロしている。
御影とサトリとMは、お前ら夫婦かよと突っ込む衝動に駆られている。
すると陽が遺言に気づいたのか殺の袖を掴んで少し赤い顔で「男に可愛いとか普通は言わないぞ」と言った。
更には言い終わった後に顔を背けて「お前はかっこいいな」と言う。その言葉で殺がトドメを刺されて本格的に倒れた。
必殺、夫を駄目にする嫁。
「お主は何をやっとるんじゃぁ!」
「この状態の殺にトドメを刺すなんて……!」
「外道ですわ!ありがとうございました!」
「え?え!?」
陽は混乱している。
普段は猫の様な素っ気ない態度なのに今は子犬の様な愛らしい目で如何しようかと困っている。
罵詈雑言と絶賛の言葉がとめどなく投げかけられる。
陽は訳がわからなくなり、泣きそうになったその時だった。
陽が急に誰かの胸に引き寄せられる。
誰かなんて一目でわかった。
殺だった。
「皆さん何をしているのですか?」
「いや、お主が死んだと思ってつい……」
「私を勝手に殺すな!!」
「でも……お前の仇打ちの為……」
「そういうの要らないです!」
「罵って!!」
「黙れ雌豚!!」
「あぁん!」
殺は怒った顔で皆を見事に叱りつけていく。
一人は「もっと!」と叫んでいたが、殺は敢えてスルーした。
殺は皆を叱り終わってからすぐに陽に駆け寄る。
「陽、大丈夫でしたか?」
「殺ぁ……」
訳もわからずに泣きそうになっている陽にまた鼻血を出しそうになるが堪える。
陽は殺の胸に顔を埋めて泣くのを我慢している。
時々現れる上目遣いに殺はノックアウト寸前だ。
「怖かったでしょう……。大丈夫ですからね。私が居ますから」
「ああ……」
「ん?……何か言いたいことが?」
陽は恥ずかしそうに小さな声で呟いた。
「お前が怖いときも僕が居てやるから怖がるな。そして感謝しろ……」
陽の謎発言に殺は口をポカンと開けるもすぐに笑顔で「ありがとうございます」と言った。
陽は泣きそうだが嬉しそうに笑っている。
その姿を見た者は後にこう言った。
こいつらもう付き合ってるのでは?と……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる