地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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二人の過去話

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 眩く光りが輝く。
 瞬間に何かが頭の中に入り込んでくる気がした。
 いや、確かに何かが入ってきてる。
 木が沢山な森の美しい景色が頭の中で浮かぶ。
 そこには一人の少女が立っていた。
 これが二人の過去なのか?





 少女は木の下で一人泣いていた。

「何で?私は頑張ってるのに」

 そう弱々しく泣く少女はとても美しかった。
 木漏れ日が包み込む暖かい天界に冷たい涙が溢れていく。

「姫様!またここに居たのですか?!帰りますよ!」

「嫌だ!」

「五月蝿い!!」

 ばちんと音が鳴る。
 少女の頬は赤く染まり痛々しい見た目になっていた。
 少女は沢山の従者に引き摺られて家に連れ戻される。
 自由なんてあったものではなかった。

「まーた、あの姫がー」

「本当に役立たずなんだからー」

「「きゃははは!!」」

 馬鹿にした様な声が少女の部屋の前で響き渡る。
 少女はいつも周りから虐げられてきていた。
 だからこそ、周りが信用出来なかった。

「何で私だけが……」

 そう泣き続ける少女は同情も与えられずに酷い環境で生き続ける。
 女だらけの醜い蹴落としあい、それが嫌で少女は仕事を頑張り偉い地位についた。
 それも周りに虐げられない為に。

「あの子、調子に乗りすぎじゃない?」

「本当にムカつく、死ねばいいのに」

 だが無情にも少女の周りの悪口は無くならなかった。
 少女は毎日暴言を聞いて育った。
 だから褒められたことがなくて毎日泣いた。

「我は駄目な子……」

 少女はまた家を抜け出しては森へ出向く。
 暖かい木漏れ日が少女にとっては泣く許しの様な気がしてありがたかった。
 少女はまた泣く、だが其の日は違った。

「何で泣いている?」

 まるで心配しているかの様な声が少女の頭上に響く。
 上を見上げれば大きな優しそうな金色の男が立っていた。

「貴方は?」

「我は冥王!君は何で泣いてるのだ?もし良ければ相談にのるが……?」

 初めての優しさだった。
 直感で少女は冥王が信用出来る者だと判断する。
 全てを話したくて、辛かったことを話したくて少女は口を開いて言葉を発する。
 馬鹿にされたこと、憎まれていることを全て話す。

「……ふむふむ、君は悪くないね!悪いのは君を妬む奴らだ!」

「妬み?」

「そう!君は美しく優しい、そして有能ときた!周りの性格が悪い奴らなら妬んでも仕方がない!」

 美しく優しい、そう言われたのは初めてだった。
 少女は自分を真っ直ぐに見てくれて評価をしてくれた冥王に感謝をする。
 そして約束をした。
 毎日、森で会おうと……。



 少女は毎日、森へ出向いた。
 それは全て冥王に会う為に、他愛ない会話をする為だった。
 幸せな日が続くことが嬉しかった。
 冥王と会うのが楽しかった。

 だがそれを皆が良く思わなかった。



「姫様!こんな所に居たのですね!早く帰りますよ!それと貴方は姫様から離れてください!」

 従者たちが冥王を囲み矢で威嚇する。
 従者にとって冥王は少女の仕事を妨害する邪魔な存在だった。
 冥王は小夜子が怖がらない様にと手を握れば従者が矢を放つ。
 冥王に矢が刺さっていく。

「痛い!痛い!何で我らを攻撃する?何でこの子の幸せを望まない?!」

 冥王は悲しそうな顔で叫ぶ。

「姫様!行きますよ!」

「嫌ぁぁぁぁぁぁ!!」

「小夜子!!」

 その夜、冥王は小夜子へ会いにいった。
 外部からの気配に気づける家とは知らずに小夜子に会いにいく。
 だがすぐに彼らは引き裂かれる。
 最後に冥王が残した言葉は「また会いにくる」だった。





 殺たちは自分の頭の中に入ってきた記憶にただ黙る。
 真っ黒な少女は笑顔で「貴方たちは小夜子さんと冥王様を引き裂かない?」と訊ねる。
 だが殺は笑顔で言い放つ。

「姫は返してもらわないと」

 少女は一瞬だけ顔を歪めるが殺の表情に気づき、すぐに笑顔になる。

「貴方たちに任せます」

 眩しい光りが少女の背後からもれる。
 其がこの世界から出られる合図だった。

「では、貴方の思い描く結果になるかはわかりませんが」

「それでも貴方に任せたいのです」

 少女が光りに包まれていく。
 瞬間に世界が光りに包まれる。

「さあ、戦いの時間ですよ」





 冥王は泣いていた。
 きっと殺たちがあの世界から出られないのだと思い泣いていた。

「泣いているのですか?冥王様」

 低い男の声が響く。
 殺の声だった。
 冥王は焦る、自分たちを引き裂く存在に。

「これで終わりにしましょう」

 それが戦いの合図だった。







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