地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

文字の大きさ
33 / 167

事の発端、とある者の真名

しおりを挟む
 
 嗚呼、面倒な者たちが現れた。
 私の邪魔をする者……そんな奴等は全員、殺せば良いよね!
 きゃはははは!

 少女は笑う。
 愉快とでも言う様にに笑う。
 その姿は誰が、如何見ても狂っている。
 普通の世界、日常が歪んでゆく。
 平和だった筈の世界は誰によって壊されるのか……。
 さあさあ、皆様!どうぞご覧ください!
 最後に笑うのは復讐を誓う者か……。
 はたまた平和を願う者か……。




「……埒があかない!」

 最初は一人しかいなかった部下が大量に殺たちの目の前に立ちはだかる。
 だが強さは圧倒的に殺と陽の方が強いのか、案外あっさりと一人一人ノックアウトされていく。
 正直なところを言うと部下は傷つけたくないのだが覚悟を決めたのだから、真相に辿り着く為に部下を倒していかなければならない。
 其にしても……。

「数が多過ぎる!」

 いったいどれだけ行方不明になっていたのかが痛いほど分かってしまう。
 体力の消耗戦。
 部下を一人一人、殴って気絶させる。
 陽は部下の腹を狙って足蹴りをしていた。
 部下は気絶していく、泡を噴いて白目を剥いて倒れた。

 数が多い部下、其がどんどん減っていく。
 だが疲れるの一言に尽きる状況とは正にこれだ。
 順調に部下を倒していくなか殺はあることに気がついた。

「首に彼岸花の模様……?」

 それを見た瞬間に殺はあることを思い出した。
 嗚呼、なるほど!
 彼は謎を解いたかの様に怪しげな笑みを浮かべる。
 そして部下たちと殴り合いで戦っている陽に向かって叫んだ。

「貴方の見立て通り、これは裏切りではありませんでした!!」

 彼岸花の家紋……。
 これは或る一族の家紋だ。
 そう、忘れさられた一族の……。

 部下はまだ、襲いかかってくる。
 それを只管に捌いていく。
 すると部下の手があらぬ方向に曲がって陽に向かって攻撃を繰り出してきた。
 それをいち早く見抜いた殺は陽を押しのけて部下の拳に刃を突き刺す。

「痛いよォォォォォォォ!!」

 部下は泣きだしながらも攻撃を重ねてくる。
 まるで軸のない人形の様にぐねぐねと手足が曲がっていく。
 痛い、痛い。
 そう繰り返す部下の声などお構いなしに殺は部下を殴る。

 部下が急に自我を取り戻したのは部下を操っていた犯人の作戦だろう。
 情が湧く様にする為の作戦。
 だがそんなことは殺には通じない。
 若干、陽には通用しているが……。

 殺は逆に部下たちを解放する為に戦いを繰り広げる。
 何せ、この術は部下たちを気絶させない限り解けないとわかったから。
 勝手に地獄の妖を式神として扱うには無理がある。

 何故なら、人間界の妖は契約したら式神に出来るが、地獄や天界の妖は契約自体は出来ないのだ。
 何故かと言うと人間が妖と契約を結ぶのは、大抵は悪事の為。
 それがあるからこそ地獄の獄卒など、人間に罰を与える者が、人間の悪事に手を貸してはならないからだ。
 それと天界の者は高貴な者。そんな者と人間も釣り合わない。

 ならば何故、式神に出来たかって?
 其は無理矢理に対象の体を支配する術をかけ、契約に近い状態を作り出す。
 正式な式神ではないが、式神と同じ様な状況になるから式神という扱いでいいのだ。

 すると後方から大きな声が響いた。
 よく聞き慣れた声、無駄に威勢のいい五月蝿い声が。
 これはとうとう戦場が終わる時が来る。

「おーい!」
「援軍ですわよ!」
「其奴らの考えていることは読み取ったから状況はわかってるぜ!」

 やっと味方が登場か……。
 ヒーローは遅れてやってくると言うが、彼らはヒーローには当てはまらない。
 ヒーローでもないんだから遅れるな。
 そう思いながら殺と陽は「遅い!」と叫んだ。
 それでも彼らは何にもダメージを食らわずに、「ごめんなさい!」と謝るだけだ。
 皆がそれぞれの戦い方、呪術、遠距離からの攻撃、斬撃のスキルを利用して戦いに挑む。
 さあ反撃といこうじゃないか。




 どれくらい経っただろうか?
 殺たちは気絶している部下を見下ろす。
 早く処置をしてあげないと。
 そう考えながらゆっくりと地面に座る。
 見つめる先はほとんど気絶している部下たちだ。

 皆が処置を施そうとしている中で、一人違うことをする者が居た。
 殺は部下の一人を思いっきり平手打ちして起こす。

「おい!殺?!」

「状況を訊く為です。他意はありません」

 部下の頬が痛々しく赤く染まる。
 だが殺がとった行動は無駄ではなかった様だ。
 部下が目を覚ます。
 目を覚ました部下は殴られた腹と、叩かれた頬を無意識におさえながら、キョロキョロと辺りを見回した。

「痛い……。あれ?殺様?体が自由……!」
「やっと戻りましたか」

 殺は安心して自然と部下の頭を撫でていた。
 そしてサトリの方を向いて「もう全て分かりましたよね」そう言葉を述べた。
 もちろんサトリは「おう!わかったぜ!」と答える。
 犯人が分かれば犠牲者の共通点も分かるものだ。
 殺はこれはまた厄介な事件に遭遇したなと太陽がゆっくりと登る空をずっと見つめ続けた。





 犯人が分かったんだね!
 いやー、閻魔さんは心配していたんだよ!
 動機は犯人さんに直接聞いてきてね。
 犯行動機まで説明するのは面倒だからね!



 そう考えながら閻魔は子供の様な笑みを浮かべてお茶をゆっくりと啜りながら飲んだ。
 閻魔は陽の光が射し込まない部屋で太陽を憧れる。
 閻魔は一人、昔のことを思い出す。
 全ての元凶、自分にとって愛おしかった親代わりを。
 ……これらの事件が起きる様になったのは、全てあの鬼が消えた忌まわしき日の所為だ。
 不幸の鬼、否……




 その鬼の名は……幸
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...