地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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雨よ降れ

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 嗚呼、最悪だ。
 陽は静かに項垂れる。
 皆がお菓子を食べたいと言い出して、ならば誰が買い出しに行くかとじゃんけんをした結果は陽の惨敗でお菓子を買いに行くことになったのだ。
 だが、最悪なのはそれではない。
 帰ろうとしたら急に雨が降ってきたのだ。

「はぁ、ついてない……」

 陽は寒さに身震いしながら雨宿りの場所を探す。
 通り雨の様だったから雨宿りの方が効率が良いと判断をしたまでだった。
 来た道を戻り商店街へ向かう。
 すると自分と同じ状況の人がちらほら見えた。

「傘を持っている者が羨ましい……」

 陽は溜め息を吐きながら何も持っていない己が手を見つめる。

 雨が髪を、肌を濡らす……。
 その姿を見た女性たちは思わず顔を紅く染めてしまう。
 滴る雨が陽の色気を増させる。
 自分の魅力に気づいてない彼は無防備に街を歩いた。

 すると、いろんな人に声をかけられる。
 いわゆる、逆ナンと言うものだ。
 陽は雨宿りに適した場所に逃げるがそこでもナンパをされてしまい困りはててしまう。

 彼は疲れて雨宿りをしていた店に入る。
 その店は食堂で時刻は昼時。
 陽はお腹が空いてしまっていたので、食堂でうどんの食券を購入して食べる。
 辛党な陽はうどんに一味をたくさんかけて食べた。

 唐辛子の効果か、寒さに震えていた体がどんどん温まっていく。
 彼はすぐにうどんを平らげて少し休む。

「ここ数日は忙しかったな……」

 彼は自分の日常を思い返した。
 仕事漬けで休む暇もない。
 正に地獄だ。
 だが……何だろうか?充実感がある。
 彼は温かいお茶を飲みながら考えた。
 考えると胸の中がポカポカと温かくなって幸せという文字が頭をよぎる。

 そうか。
 僕は幸せを手に入れたのか。
 陽は少しはにかんでお茶をすする。

 しばらくの間は外に出たくないなぁ……。
 すると携帯が鳴る。
 どうやら殺からの連絡の様だ。
 仕事か?そう考えながらもメールを見ると内容に思わず笑みを浮かべてしまった。

『八寒地獄の影響で寒いでしょう?傘を持って迎えに行きます。それと、此方ではストーブの取り合いが始まっています。帰ったら馬鹿共を蹴散らすので、どうぞ温まってください』

 普段の様子が見られる内容。
 僕はこの日常が好きなんだな。
 そう思いながら店を出る。
 しばらくは出たくなかったが大好きな人が迎えに来るとなったら話は別だ。

 店の前でドキドキしながら触り心地の良い紅い髪を持つあの人を待つ。
 何故かわからないが、体が先程より熱くなっている気がした。

 寒さなんて感じないくらいの温かい胸に両手を当てれば、手にも温もりが伝わってくる。
 この温もりだけは絶対に失ってはいけない。
 昔から欲しくてたまらなかった大切な宝物……。
 お金よりも宝石よりも価値がある……。

「陽!!」

 嗚呼、やっと来てくれた。
 陽は嬉しそうに笑顔を見せる。

「遅れてすいません」
「いや、迎えに来てくれてありがとう」

 いつも通りの会話。
 それを大事にすること。
 幸せの一歩を踏み出す為の重要なことだ。
 それにしても……。

「殺、何故か傘が一つにしか見えないのだが」
「何故か傘が足りなかったのですよ……風邪をひきたくないのならば一緒の傘に入りましょう」

 瞬間、陽の顔が真っ赤になる。
 何せ相合い傘をするのだから。
 殺は陽を傘の中に入れる。
 お互い意識をしているのか少しぎこちない。
 ふと殺の方を見ると傘を陽に向けていた為、殺の肩は濡れていた。
 それを見て陽は彼を愛おしく思い、無意識に抱きしめてしまった。

「!?」

 混乱する殺を無視して抱きしめる腕に力を込める。

「僕は我儘になったのだな……」

 そうやって笑いながら発される言葉に殺は興奮を抑えられなさそうになる。
 男は獣とは正にこのことか……。
 殺はそうやって悩みながら、どうやって陽を襲わない様にするかと只管に考えるしかなかった。




「うふふふ。成功ですわ!」
「そーか、良かったな」
「眠いんじゃが……」

 傘が一つ足りなかった理由?
 そんなの私たちが隠したからですわ!

 そうやってMが叫んでいると……。

「ほう……貴方たちの仕業でしたか」

 後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
 もちろんだが……

「殺様!!」
「お仕置きです……!」
「あぁん!!」

 一通りMと御影とサトリをお仕置きした後、ストーブから引き剥がし陽に使わせる。

 はぁ、今日も怒涛の一日だったと振り返る皆はそれでも笑っていた。
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