地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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名を貰いし犬の独り言

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 殺様は厳しい。
 私はそう思っていたのです。
 だけど、それだけではなかったんだ。
 今まで何で殺様を気にしなかったのだろう?
 私は殺様と共に働けて幸せ者なのに。


 私は名も無き犬でした。
 人型だけど唯の犬です。
 私は地獄で働く為に色々と資格を取って下剋上を果たしてきました。
 それがきっかけだったのでしょう。
 私はおそらく殺様に気に入られて殺様の部下になりました。

 最初は慣れない仕事に失敗の連続で殺様によく怒られたものです。
 それでも必死に食らいついて仕事を成功させるほどになれば叱られるのも減りました。

 完璧に仕事をこなした後は殺様は「……ゆっくり休んでください」と毎回言ってきてましたが、今思えばあれは殺様なりの気遣いだったのでしょうね。
 少し胸がほっこりとします。

 殺様は女なのに男として生きてます。
 あのかっこいい姿には女として憧れを持ってしまい最終的には私も見習おうと男装をしていました。

 殺様はそれを見て「普段の貴方で良いと思います……」と、そう呟いていました。
 何故か男装は不評でした。
 次こそは頑張ってかっこよくきめます!

 さて何故今更、殺様が厳しいだけではないと私が言い始めたのか気になり始めたでしょう。
 理由は簡潔に述べると私に名前をくれたからです。
 私は人間界でいうスラム街という場所に住んでいました。
 親も居なくて自分が何故生きているのか分からない……そんな状況でした。

 だけど生きていかねばならない!そうポジティブに考えていた私はさっきも述べた通り色んな資格を取って見事、下剋上を果たしました。
 地獄にきて殺様の部下になって仕事を完璧にこなす様になった頃には殺様とよく仕事の終わりに酒を飲みに行く仲になっていました。

 殺様は酒に強いのかいつも素面の様にちゃんと呂律も回っているし足取りもふらふらしてません。
 それに比べて私は……考えたら恥ずかしいです。

 ある日のことでした。
 殺様といつも通り酒を飲んでいると私の名前の話になりました。
 当時の私の名前はナナシ。
 名前がないのが由来でした。
 名前がないと仕事が出来ないので適当につけた名です。
 私は笑いながら由来を話すと何故かとても悲しそうな顔をしていました。

 今でも理由は分かりません。
 すると殺様は静かに呟きました。

「朝希」

 私はキョトンとした態度で「何ですか?その言葉は」そう訊ねました。
 殺様は溜め息を吐きながら「貴方の新しい名前ですよ。」そう答えました。

 殺様は更に続けます。

「朝の希望……それが由来です。名前は人を表しますから重要ですよ」

 私は朝の希望……?
 少しずつ胸がドキドキしていくのを覚える。
 私は嬉しさのあまり殺様に抱きついていました。
 殺様はそんな私の頭を優しく撫でてくれていて私はまた強く抱きしめてました。
 すると、ある疑問が……。

 殺様は何故?殺すという名前なのだろう?
 私は聞いてしまいました。
 そうしたら殺様は少しはにかみながら「私は人を殺してしまう……。だからですよ」そう言って焼き鳥を一口食べていました。

 私はそのとき殺様はなんて優しくて悲しいのだろう……そう考えてました。
 私に立派な名前を渡して自分は苦しみを背負う。
 私は酒の影響もあってか思わず泣いてしまいました。

 そんな私を殺様は優しく宥める。
 その後、飲みすぎた私は殺様におぶられて帰路に着きました。
 殺様はどこか幸せそうに口笛を吹いて私を家まで送ってくれたのです。

 この後は私は寝室まで歩いていきゆっくり就寝しました。
 殺様は次にあったときは笑顔で朝希と私を呼んでくれました。

 一言で言えば幸せです。
 私は名を呼ばれて笑う。
 幸せってこういうことなんだなと初めて気づきました。

 さて、今日も殺様と仕事をします。
 殺様は最近は開かずの間に招いてくれる様になったのですよ!
 今日はどんな茶菓子を持って行こう?
 悩むなぁ。
 これからも殺様と一緒に居られると思うと嬉しくて仕方がないです。
 さぁ、もうそろそろ仕事です!
 頑張りますよ!!

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