地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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純粋な思い出?

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 幼い日の約束。
 儂はそれを大切な思い出として生きている。
 お互いがずっと仲良く一緒にいられるようにと願って……。



 少し暑い春の日のこと。
 御影は天狐の主様に貰ったお小遣いで桜餅を買いに出かけていた。
 春の訪れを感じながらも頭の中はお菓子のことで一杯。
 いつもお菓子を買いに行く店に出向いたら店の主人が「おー!御影くん!今日は何を買っていくんだい?」そうやって話しかける。
 もう顔なじみだから、いつも雑談を交わして楽しい時間を彼は過ごしていた。
 そんな時だった。

「御影~!!」

 爽やかな透きとおった声が御影の耳に入る。
 彼が振り向いた先には友人の狐、春紀がいた。
 御影の方に手を振りながら走る彼は少し暑苦しそうに手の平をひらひらさせている。

「春紀!奇遇じゃな!」
「こっちの主様にお使いを頼まれちゃって」

 春紀は疲れましたという態度を全面に出したが御影に「一緒にこない?」と訊ねる。
 御影は嬉しそうに首を縦に振り春紀の後に続く。




 春紀が買い物に来た店は呪(まじな)いものを置いている呪い専門の店であった。
 少し不気味な雰囲気に押し潰されそうになるが、春紀は「大丈夫だよ」と御影の手を握った。

「おじちゃん!いつもの!」

 それだけで通じるのか店の主人と思われし人物は売り物を漁り春紀に直接手渡しする。
 彼に渡された物は恐ろしく滑っている風に見え、しかも何かの生物なのだろうか目が沢山ついている。
 御影は怖くなり春紀にそれは何?と恐る恐る訊く。
 春紀は笑いながら「平和を祈る儀式に使うんだよ」そう答えた。
 平和を祈るか……なかなか良いことだなと御影が考えていると……。

「おじちゃん、これ頂戴!」

 彼はまた何かを買っていた。
 何を買ったのかは分からないが相も変わらず不気味なものには変わりなかった。
 数秒間だった。
 数秒間黙っていた店の主人が口を開いたのだ。
 その言葉は……。

「……本当にそれで良いのか?」

 その一言だけだった。
 後はずっと黙っていた。

「良いから買ったんだよ」

 純粋無垢な笑顔で春紀は答える。
 店の主人は少し悲しそうに彼を見つめてお会計に入る。
 御影は値段をチラ見してみたら思わず叫びそうになるほどの金額を前にただ呆然としていた。
 わぁーい……。春紀のところの主様は羽振りがいいな……。
 彼は遠い目をして今日のお小遣いのことを思い出してみる。
 いつも節約!と言っている主様はそういえばちょっとしかお小遣いをくれてないなと……。
 御影が遠い目をしている間に春紀のお会計が終わる。
 春紀は笑顔で遊びに行こうと御影の腕を掴んで走っていく。
 御影はいきなりのことに頭が追いつかなくて導かれるままに走っていく。


~~~~


 森の中を彷徨いながら二人は走る。
 木々の隙間からの暖かい木漏れ日、鳥のさえずり、堂々と咲き誇る花々……。
 どれもが今日初めてな御影は周りの景色に見とれながら春紀についていく。
 幻想的な森の奥に行くと少し開けたスペースに大きな桜の木がさらさらと風に吹かれて花弁を空に舞わせていた。

「これは永遠に咲く桜の木だよ。立ち入りは良くないけど大切な人を招きたくてねー!これは僕たちだけの秘密だよ!」

 僕たちだけの秘密……!
 御影はその言葉をかっこいいと頭の中で整理して笑顔で首を縦に振りながら「ああ!約束じゃな!」と大きな声で言い放った。
 すると春紀は嬉しそうに笑いながら先ほど店で買った奇妙なものを取り出した。

「ん?どうするのじゃ?それ」

「永遠に御影と仲良くいられるようにのお呪いに使うんだよ!」

 そう言って彼は桜の花弁を集め始める。
 大量な花弁を集めて花の山を作り、そこに呪いの用具を沈めていく。
 御影はそれを見つめている。
 そうしたら彼は「御影、この花弁の山に手を入れて。僕ももちろんやるから」と言った。
 御影はゆっくりだが手を桜に沈めていく。
 春紀は躊躇いもなく手を沈める。
 すると薄紅色の光が二人を包んだ。
 二人は目を閉じながらも手はそのままにしている。
 轟音の響くなか春紀が何かを唱えていたが御影はそれを聞き取れなかった。

 淡い光に包まれて御影はいつの間にか眠っていた。
 起きた頃には夕方になっていた。
 御影は何故か重たい体を起こして空を見上げる。
 紅く染まった桜も風流なものだ。
 春紀は先に帰ったのか誰も居ない。
 御影は一人で桜餅を手に取り口に入れる。

「……美味しい!」

 御影は一人なんてどうでもよさげにただ桜餅を貪って紅い紅い夕闇に包まれ消えていった。




 ……久しぶりに昔の夢を見たのう……。
 奴は元気かのう?
 最近は会ってないから心配になる。
 あれは昔から健康に無頓着だったからなぁ。
 次に会ったときは小言を言わねば。
 なんせ永遠の友人じゃからな。










「ふはっ!」

 昔の夢を見て僕は笑ってしまった。
 やっぱり彼奴は馬鹿だ。
 あのお呪いのことに気づかないなんて。
 奴が友達?笑わせないでくれ。
 あんな馬鹿なのに近づかれると思ったら吐き気が押し寄せてくる。
 だいたい、あの桜に妖力が詰まっていることに気づかないとは……。

「っぷははは!」

 馬鹿すぎてまた笑えた。
 取り敢えず今はまだ動くときじゃないな。
 さぁ、僕の栄光への道はどう切り開かれるかな?
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