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時の流れ
しおりを挟む閻魔は一度だが死を経験している。
元々は日本に初めて生まれて初めて死んだのが閻魔だ。
彼は死んでから、イザナミが創りし様々な神に出会った。
そして数千年は幸せだった。
そう、幸せだった……。
彼の周りの神は時の流れに逆らえず消えていく。
亡者の閻魔はこれ以上は死ぬこともないので、一人とり残される。
閻魔は酷く悲しみ泣き叫んだ。
周りには新しい命が生まれているのに昔の神は消えていくのだ。
これでは人間と変わりない。
彼はそんな建前を作り生物の摂理に逆らって不老不死を求めた。
こうして現在の世界……。
誰もが死なない地獄が誕生した。
そこはまるで楽園の様な世界だった。
楽しく愉快に狂っている。
彼が生んだ世界は結局はその程度のものだった。
歪んだ世界には歪んだ者しか住めない。
生への摂理を逆らった者は皆何に対しても無関心だった様だった。
それを見て閻魔はまた嘆いた。
昔は皆で笑っていた。
だが今は違う。
無機質な表情で、ただ働くだけの人形みたいな生き物を見るのはもう嫌だ。
だがある程度、時が経った頃だった
ふと部下に目をやると甘いお菓子を食べながら笑顔で別の部下とお喋りをしていたのだ。
閻魔は動揺してしまう。
何せ他人の笑顔を見たのは数千年振りだったからだ。
彼は思わず足音をたててしまい部下に気付かれてしまう。
閻魔も慌てているが一番に慌てているのは部下の方であった。
部下の慌てる一面も見たことがなかった閻魔はまた驚いて後ろに後ずさり転んでしまう。
「閻魔大王!大丈夫ですか?!」
「ああ、大丈夫だよ……」
彼はゆっくりと立ち上がり部下に直接質問を投げかけてみる。
「ねえ、何で君たちは感情を表さないの?」
勇気を振り絞って出た言葉は随分と短いものであった。
閻魔は泣きそうな顔で二人の部下を見つめる。
すると部下は申し訳なさそうに答えた。
「言っていいかは分かりませんが大王様は不老不死を創って感謝され過ぎていますから皆、大王様に馬鹿らしい一面を見せたくなくて無感情の様に働いているのですよ。つまり……私たちを永遠に仲間にしてくれてありがとうございます」
久しぶりのありがとうを聞いた。
閻魔の創りし世界には確かに歪みがある。
感情の出し方がわからない者や、何をして良いかわからない者。
それらが歪みの結果である。
だが、それが気にならないほどに優しい者たちがいたのだ。
閻魔はそういうことなのかと安心して涙を拭いながら笑って言葉を紡いだ。
「こちらこそ、ありがとう!」
それから閻魔は皆の前で命令を下した。
自由で居ろ……ただそれだけだが難しい命令。
だが、皆は喜びながら語った。
これで閻魔大王とお話しが出来ると……。
閻魔は信用が厚い。
仕事はギリギリの際にやってくれる程度だが、優しくて何でも話を聞いてくれるという実に頼り甲斐のある方だからだ。
彼は今日も不老不死を進化させようとする。
それを誰もが止めない。
だって、仲間が増えたら楽しくなるでしょう?
そうやって誰もが研究に加わった。
~~~~
閻魔は疑問に思っていた。
殺が何故、人間研究を続けているのかを。
話を聞いてみたら殺は笑いながら答えた。
「人は花の様なものです。蕾をつけ美しく咲き誇り最後は散っていく……。その儚い時間が好きなのです」
閻魔にとっては殺の発言は理解出来なかった。
何故、短い命に拘るのか。
彼は無邪気で心が純粋無垢な子供みたいなもので、殺の言った儚さが理解出来なかったのだ。
子供はヒーローに憧れる。
超人になるのを夢見て育つ。
彼もその一員だからこそ不老不死を創った。
殺はまた言葉を発する。
「永遠ほど辛いものはありませんよね。
大事な物ほど増えるのは嘘ではないですがその分、大切なものも減っていく……。だからこの体になったのには後悔が無いとは言いきれません。ですが……」
閻魔は息を飲んだ。
言葉の続きが気になって仕方がない。
それに後悔があるというのは何故なんだ?
彼の頭の中が疑問で埋め尽くされる。
その時だった。
「閻魔大王といつまでも一緒に居られるのは嬉しいですね」
殺は「前言撤回!後悔してないかもしれません」と、また言葉を変える。
閻魔はどっちが本当なのかわからないままだが、ただ一言ありがとうを伝えた。
殺は目をパチリと開き、キョトンとした態度をとったがすぐさまいつも通りに戻る。
一つ違うことは殺が微かに笑んでいることだった。
閻魔は今日も不老不死を生きている。
また仲間が増える。
家族が増えていく。
だが、あまりにも自由なそこは時々乱闘が起こる場合がある。
その場合は殺が乱入して喧嘩両成敗となるのが日常だ。
仲良く喧嘩をして、それを止めてくれる家族が居る。
なんて幸せなことか……。
皆が笑いあい、ときに喧嘩をし、仲直りをしたり、泣きあったりする……この日常はもう誰にも渡せない大切な宝物となっていた。
閻魔は笑いかける。
五人の英雄に笑いかける。
これからもよろしくとお願いしながら。
厄災から民を守る仲間として彼らを優遇する。
閻魔は皆の頭を撫でながら真剣な顔で話しかけた。
「絶対に生きて帰ってね」
そう強く願いながら五人を抱き締める。
五人は少し気恥ずかしそうにしていたがすぐに閻魔に抱きつく。
五人の英雄との日常はこんな感じだ。
いつも無理はしない様に、生きて帰ってくる様にそれを祈る。
不老不死の彼らが死ぬかもしれない極地に立たされるのはどれほど怖いか……。
それに閻魔の創った不老不死は不完全だ。
毒で攻撃されたら死んでしまう。
不幸が彼らを襲い、病に陥らせればお終いだ。
閻魔は彼らがどれほど恐ろしい極地に立たされているかわかっている。
彼らが周囲に知られずに恐怖していることも知っている。
だがそれ以上に五人が居なくなったらと考えて、いつも本当の恐怖で震えているのは閻魔だ。
いつかこの厄災が解決されれば皆が泣き暮らさなくて済む。
閻魔は皆を守る為に今日も働く。
五人の英雄は閻魔の下に集う。
これも愉快な縁。
全ての発端の者の下へ彼らは集った。
閻魔は今日も不老不死の研究を重ねる。
五人の英雄は今日も一日元気に閻魔の為に、平和の為に働く。
全員が幸せを求めて……。
~~~~
封印が厄介だな……。
だがもうすぐだ……。
もうすぐ解ける!
幸、お前の間違いを正せるぞ!
この世界を壊してやれるんだ。
我が蘇るその時に今の世界が終わり新しい世界が幕を開けるだろう。
さあ、どうやって閻魔とかいうガキの心を抉ってやるか……。
楽しみだなぁ……。
ふひひひひ……。
ふはははははははは!!!
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