地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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ダンスパーティー

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 魔王の城で行なわれる魔界と地獄の合同ダンスパーティー。
 それのおかげで今、人殺し課はおめかしをしている最中だ。
 パーティーに相応しいスーツにドレス、どれもこれも美しい。
 Mは丁寧にメイクをしてもらい、普段より美人になったとご満悦だ。

 元からMは美人で可愛らしいが、今のMには大人の色気を感じてしまう。
 淡い桃色のレースがふんだんにあしらわれたドレスを着てMはくるくる回る。

「どうです?綺麗ですわよね?」

 人殺し課の皆が静かにうなずくとMは更に機嫌が良くなる。
 さあ、パーティーの時間だ。
 スーツを着込んで皆が会場へと向かっていく。
 何故か閻魔もスーツを着込んでついてきていた。
 そのことを考えると仕事をサボって来たのだろう。

「閻魔大王、かっこいいですね」

「そう?やっぱり殺ちゃんは本音しか言わないんだから」

 閻魔もご機嫌な風にスキップをして、前を見てなかったのか壁に激突してうずくまっている。
 殺はそんな馬鹿な閻魔を心配して彼のもとへ駆け寄るが心配は要らなかったらしい。
 殺が近づく前に閻魔は立ち上がり、またスキップを開始したのだ。

 不死身とはまさにこのことを言うのだろう。
 殺は少し呆れて閻魔を見つめる、はしゃぎ過ぎだろうと思いながら見つめた。

「ついたよ!」

 大きな扉の前に閻魔を含めて人殺し課が立つ。
 扉を開ける者がゆっくりと扉を開けていく。
 扉の先に広がっていたのは今まで見たことのない華々しい世界だった。

 ダンスパーティーに招待された人々で会場は賑わう。
 洋風の豪華絢爛な作りの部屋に、大きなシャンデリアが吊るされていた。
 壁際に用意された見たことがない料理、だが確かに言えることは美味しそうということ。
 料理が輝いて見えて御影とサトリは涎を垂らしそうになる。

「ようこそ!人殺し課の者達よ!」

「お招きいただき光栄です、魔王様」

 殺が魔王の前でかしずく。
 それにあわせて人殺し課の皆、閻魔も一礼した。

「……イケメンだな、殺」

「そうですか?魔王様」

 今日の殺は髪型がセットされて前髪がオールバックになっていた。
 いつもの前髪が真ん中の殺に慣れていた魔王にとって、その姿は新鮮だった。

「そんなことより料理を食べていい?!」

「もう我慢出来ないのじゃ!!」

「いいよ、好きに食べな。飲み物も揃えてるからどうぞ」

 御影とサトリの要求を魔王は快諾する。
 魔王は楽しいことが好きなのだ、だから我儘な者を求める。

「僕達も何か食べに行こう」

「そうですね」

 殺は陽の誘いを受け入れて食べ物を食べに行った。

~~~~

 食べ物の前に立つと殺はご飯物よりスイーツに目がいってしまう。
 どのスイーツを食べようか?何を食べようか迷っていたのは殺だけではなかった。
 人殺し課職員が全員迷っていたのだ。
 見たことのない料理を前にすれば迷うのも当然。
 だが御影とサトリは取り敢えず適当に料理を決めた様だった。

「「美味い!!」」

 二人の声が重なる。
 よほど料理が美味しかったのだろう、ならばスイーツにも期待が高まるものだ。
 そう思っていた時だった。

「ねえ、私と踊ってくださらない?」

「いいえ、私と!」

「何を言っているの?私とよ」

 殺は沢山の女性に囲まれていた。
 皆が殺のかっこよさ、美しさを気に入って殺を取りあっていたのだ。
 更に取りあわれていたのは殺だけではない。
 陽も見目麗しい女性達に囲まれて、踊りをせがまれていたのである。

 殺は少しだけ苛ついた。
 自分の大切な陽に近づく忌々しい女性達に。
 殺は女性達に興味がないかの様に女性達を押しどけて進んでいく。
 殺は陽を取り囲む女性達を退けて彼の前に立ちはだかる。
 すると魔王がマイクを持って大声を出した。

「踊りの時間でーす!皆、好きに踊ってな!」

 それを合図にしたかの様に殺は陽の前で跪き手を取る。

「一緒に踊ってくれませんか?」

「……はい」

 陽は殺の色っぽい笑みに思わず「はい」と答えてしまう。
 殺はすぐさま立ち上がり陽の手を取り導き、会場の真ん中で優雅に踊りだす。
 運動神経のいい彼らは踊りくらい簡単に踊れた。

「儂らも踊ろうか!」

「男同士だけど御影とならいっか」

 踊る人数が増えていく、だがその中でMも沢山の男に囲まれていて踊れないでいた。
 私と踊ってください、その慣れない声が鬱陶しくて。
 けれども、そんな中に救世主が現れる。

「私と踊ってみませんか?お嬢さん」

 聞きなれた声が鼓膜を震わせた。
 声の主は閻魔であり、彼は強引にMの手を引っ張る。
 美男美女、それに圧倒されて周りの男達は何も言えなかった。

「私を救ってくださりありがとうございます。閻魔大王様」

「困っている者が居たら助けるのは当たり前でしょう?葛葉ちゃん」

 二人は楽しそうに踊る。
 この楽しい時間が永遠に続く様にと願いながら。


~~~~


「陽、楽しいですね」

「ああ、楽しいな」

 華麗にステップを踏みながら殺と陽は会話をする。
 そして殺は先ほどの独占欲も吐く。

「私は貴方が他の女性と居るのが憎いと思ったりもします。それほどに貴方が好きなのです。だから貴方も私を愛してくれますか?」

 陽は好きという言葉に顔を赤面させて小さな声で殺に返事を返した。

「僕もお前が他の女性と居るのが憎いって思ってしまう……。だからそれくらいお前が大好きなんだ。ずっと愛している……」

 愛しているという言葉を聞いて殺はふにゃりと笑う。
 それはとても嬉しそうに。
 瞬間に陽は殺に抱き締められて接吻をされる。
 陽はやはり相も変わらず真っ赤な顔だった。

「陽は私の恋人ですから、手を出したら許しませんよ!!」

 会場中に殺の大きな声が響く。
 殺が陽に接吻をしてから時が止まったかの様に皆が静かだったが、一瞬で歓声が湧きあがる。

「幸せにしてやれよ!!」

「お似合いですよ!」

 皆が二人に向けて拍手をした。
 真っ紅な髪の殺に真っ赤に染まった顔の陽。
 やはり二人はお似合いだ。
 皆に祝福されて殺と陽は笑顔になる。
 こんな非日常も悪くないと。





「閻魔、話がある」

「なーに?魔王様」

 閻魔はMと一通り踊りを終えて会場の隅っこに立っていた。
 だが魔王はバルコニーへと閻魔を連れて行く。

「いったい何の用だい?」

「殺は危険だ、おそらくだがお前より強い」

 魔王は精一杯の警告を閻魔にする。
 だが閻魔はそれを笑い飛ばした。

「殺ちゃんは裏切らないから大丈夫!」

 明るく笑う閻魔に魔王は取り越し苦労かと自嘲した。
 彼らはお互いを信頼しあっている、だから裏切りなんて起こさない。

「君は人の心配が出来る様になったんだね」

「うっせー」

 そう子供の様に文句を言う魔王は確かに成長していた。
 王として民を思いやれる様に。
 ごめんなさいが出来る様になった彼には、これから民が味方についていくだろう。
 彼はどこまで成長出来るか?
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