ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 15*過去

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「デザートを注文してあるから、君はゆっくり食べて行くといい」

 悟之さんが立ち上がった。

「会えてよかったよ」

「悟之さん」

「もう……会うことはないだろうけど――」

「悟之さん!」

「もう、戻れないんだよ。伊織」

 悟之さんと入れ違いで、デザートが運ばれてきた。チョコレートパフェ。

『チョコパフェを食べてる時の伊織は、本当に幸せそうだね』

 そう言って笑う悟之さんを、思い出した。

『見てると僕まで幸せな気分になれるよ』

 チョコパフェにスプーンを入れる。

『私にチョコパフェを食べさせるだけで幸せ気分を味わえるなんて、お手軽ね』

 チョコソースのかかったバニラアイスは甘くて、冷たい。

『些細なことこそ、幸せなんだよ』



 どうしてこんなことに……。



「溶けるぞ」

 顔を上げると、大吾が心配そうな顔で私を見下ろしていた。数分前まで悟之さんが座っていた場所に、座る。

「大好きなチョコパフェだろ。幸せそうに食えよ」

「だって……」

「悟之さんも俺も、チョコパフェそれを食ってるお前を見てるのが好きだったな」と言って、頬杖をつく。

「すげー幸せそうに食うの」

「そんなこと……」

チョコパフェこんなんを大学の研究室で食ってたのって、お前ぐらいだよな」

 ははは、と大吾が笑う。

「元はと言えば大吾が買ってくるようになったからじゃない」

「そうそう! お前が生理中で甘いモン食いたいって言うから、大学近くを走ってた移動販売車のパフェを買って行ったんだよな。そしたら、生理の時はお腹を冷やしちゃダメなのにってめちゃくちゃ怒られてさ」

「めちゃくちゃって程でもないわよ」

「いーや! めちゃくちゃ怒られた。で、悟之さんがお前に言ったんだよ。怒るか食べるかどちらかにしなさい、って」

 あの頃はまだ、私にとって悟之さんは『講師』だった。

「懐かしい……ね」

「ああ……」

「……悟之さんに会ったの?」

 なんとなく、悟之さんは大吾に会いに行ったと思った。

「カフェに来てさ、伊織がパフェを食べてるからって」

「他には?」

「僕にはもう、伊織の幸せそうな顔を見る資格はない」と言いながら、大吾が私の手を握り、クリームが乗ったスプーンを自分の口に運ぶ。

「って、いつもの胡散臭い作り笑顔で言ってた」

「胡散臭いって……」

「悲劇のヒロインならぬ、悲劇のヒーローぶってるけど、自業自得だろ」

 変わらない大吾の容赦ない物言いに、なぜかホッとする。

「結局、あの人は自分が一番可愛いんだよな。悪役演じてる自分に酔ってるって感じ?」

「プライドの高い人だから……」

「そう見せないところがムカつくよな」

「どうしたの? 今日は随分――」

「別にっ! 澄ました顔して下劣なことしやがるから――」

「何か、言われたの?」

 大吾の言葉を遮って、聞いた。

 大吾が感情を露わにするのは、珍しい。
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