【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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4.秘密の関係

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「なんとか……って」

「トイレ行くなりなんなり――」

「いや、それはさすがにナイでしょ!」



 そもそも、この状況がナイのよ!



 私は心の中で叫んだ。

「ずっとそのまんまも困る!」

「けど、今抜いたら、がっつり麻衣さんをおかずにしますよ」

「――!」

「当たり前でしょ。好きな女が俺のシャツ着てドアの向こうにいるとか、何回抜けるか――」

「鶴本くん!」

 堪らず、遮った。

 さすがに、後輩の性事情は聞くに堪えない。

「私、帰るから、このTシャツ借りていいかな」

「休みだし、慌てて帰ることないでしょ」

「けど――」

「麻衣さん、昨夜のこと、覚えてますか」

「え?」

 咄嗟に考えた。

 覚えてないことにした方がいい。

 今の会話も、冗談で流してしまえば、仕事で気まずい思いをしなくて済む。少なくとも、気まずくないフリはしやすい。

「あ――。ごめんね、迷惑かけて」

「麻衣さん」

「いい年して酔い潰れて記憶無くすとか、ホント、恥ずかし――」

 私はペラペラ喋りながら、立ち上がった。Tシャツの裾を押さえながら。

「麻衣さん!」

「お世話様でした。Tシャツは洗って――」

「麻衣さん!!」

 不意に腕を掴まれ、後ろにひっくり返った。ベッドに尻もちをつく。更に腰を抱き寄せられ、私は鶴本くんの膝の上に乗っかる姿勢になった。

「鶴本く――」

「なかったことにはさせませんよ」

 うなじに、彼の息がかかる。

「俺が治してあげます」

「え?」

「不感症、俺が治します」

 うなじに、彼の唇の感触。

 熱い。

「気持ち悪いですか?」

「え――」

「俺にこうされるの」

 わざとらしくチュッと音を立てて、キスをされる。

「気持ち悪いなら……やめます」

 彼の前髪にうなじをくすぐられて、思わず背筋を伸ばした。

「さすがに、気持ち悪いってのは望みなしだってわかるから……」

「…………」

 言えばいい。

『気持ち悪い』と。

『吐き気がする』と。

 そうすれば、鶴本くんは私を諦める。

 仕事で気まずい思いをしても一時だろう。

 鶴本くんは若いし格好いいから、きっとすぐに彼女が出来る。私なんかより若くて、可愛くて、素直で、感度のいい子。

「なんか、色々考えてるでしょ」

「え?」

「そもそも、気持ち悪かったら、こんな風に大人しくしてませんよね」

「え!?」

「そうですよ。生理的に無理、ってなら、もっと大暴れして逃げますよね」

「ええ!?」

 開き直ったらしく、鶴本くんの腕に力がこもり、私は更に彼に密着する体勢になってしまった。

「ちょ――」

「嫌ですか?」

「放して!」

 男の人とこんな風にくっつくのは、久し振り。

「気持ち悪いですか?」

「鶴本く――」

 久し振り過ぎて、恥ずかしい。

「本音を言ってください!」

「わかったから!」

 しかも――。
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