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4.秘密の関係
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言った途端に、鶴本くんが視線を逸らした。と言うか、思いっきり顔を背けた。
「なに?」
なにかマズいことでも言ったか、と不安になる。
「鶴本くん?」
「この状況でそういうこと言われると……」
「――と……?」
「マジでヤバいです……」
「はい?」
鶴本くんは耳まで真っ赤にしていた。
私のどの言葉がそうさせたかはわからないけれど。何か、誤解させるような言い方をしてしまったかと、考えた。
「鶴本くん? 私は……、その……、そう! 信頼関係の話をしたのであって――」
「わかってます。わかってますけど! 男を警戒しまくってる麻衣さんに信頼されてるって、めちゃくちゃ嬉しくて……」
「そんな、大げさな……」
トンッと、鶴本くんが私の肩にもたれた。
「ちょ――」
「ホント、本気で好きです」
彼の髪が首筋をくすぐる。
「不感症が治ったら、俺と結婚してください」
肩が、熱い。
鶴本くんの熱に、火傷しそうだ。
彼の気持ちがどこまで本気かはわからないけれど、彼が本気だと信じていることはわかる。
このまま、引き下がってはくれないことも。
「私よりお給料少ないのは嫌だなぁ」
「え?」
鶴本くんが顔を上げた。
こんな状況じゃなければ、熱があると思うほど顔が赤い。
可愛いな、と思った。
「だって、結婚したらなるべく早く子供欲しいし。私が休んでる間、生活に困るのはねぇ……」
鶴本くんを傷つけたいわけじゃない。
「それはっ――、仕事も頑張ります」
出来るなら、気持ちに応えてあげたい。
「期限は?」
「え?」
「私の不感症を治すための期限。その時が過ぎても私の不感症が治らなければ、この話はナシ」
けれど、正直、現実味がない。
不感症が治るのも、鶴本くんと結婚することも。
だから、かもしれない。
頑なに拒絶する必要はない気がした。
「その時は、諦めて」
どうせ、私の不感症は治らない。
「約束して」
期限が切れる前に、鶴本くんが嫌になるかもしれない。
こんな、面倒臭い女。
「期限が切れたら、全部なかったことにして」
鶴本くんの喉仏が動いた。唾を飲んだのだろう。
私の言葉に顔の赤みが引いていく。
「わかり……ました」
「期限は?」
鶴本くんの眼球が下に動き、右に動き、それから私を映した。
「一年」
「長くない?」
どうせ一年ももたないだろうけれど。
鶴本くんのような若くて健康な男が、一年もの禁欲に耐えられるはずがない。
相手がいないのと、目の前にいるのにデキないのとでは、全然違う。
「そんなに、俺が耐えられないと思ってるでしょ」
「え?」
「不感症って、具体的にはどうなんですか?」
「どう……って……」
「触られても気持ち良くない、とか? 挿れたら痛い、とか?」
「なに?」
なにかマズいことでも言ったか、と不安になる。
「鶴本くん?」
「この状況でそういうこと言われると……」
「――と……?」
「マジでヤバいです……」
「はい?」
鶴本くんは耳まで真っ赤にしていた。
私のどの言葉がそうさせたかはわからないけれど。何か、誤解させるような言い方をしてしまったかと、考えた。
「鶴本くん? 私は……、その……、そう! 信頼関係の話をしたのであって――」
「わかってます。わかってますけど! 男を警戒しまくってる麻衣さんに信頼されてるって、めちゃくちゃ嬉しくて……」
「そんな、大げさな……」
トンッと、鶴本くんが私の肩にもたれた。
「ちょ――」
「ホント、本気で好きです」
彼の髪が首筋をくすぐる。
「不感症が治ったら、俺と結婚してください」
肩が、熱い。
鶴本くんの熱に、火傷しそうだ。
彼の気持ちがどこまで本気かはわからないけれど、彼が本気だと信じていることはわかる。
このまま、引き下がってはくれないことも。
「私よりお給料少ないのは嫌だなぁ」
「え?」
鶴本くんが顔を上げた。
こんな状況じゃなければ、熱があると思うほど顔が赤い。
可愛いな、と思った。
「だって、結婚したらなるべく早く子供欲しいし。私が休んでる間、生活に困るのはねぇ……」
鶴本くんを傷つけたいわけじゃない。
「それはっ――、仕事も頑張ります」
出来るなら、気持ちに応えてあげたい。
「期限は?」
「え?」
「私の不感症を治すための期限。その時が過ぎても私の不感症が治らなければ、この話はナシ」
けれど、正直、現実味がない。
不感症が治るのも、鶴本くんと結婚することも。
だから、かもしれない。
頑なに拒絶する必要はない気がした。
「その時は、諦めて」
どうせ、私の不感症は治らない。
「約束して」
期限が切れる前に、鶴本くんが嫌になるかもしれない。
こんな、面倒臭い女。
「期限が切れたら、全部なかったことにして」
鶴本くんの喉仏が動いた。唾を飲んだのだろう。
私の言葉に顔の赤みが引いていく。
「わかり……ました」
「期限は?」
鶴本くんの眼球が下に動き、右に動き、それから私を映した。
「一年」
「長くない?」
どうせ一年ももたないだろうけれど。
鶴本くんのような若くて健康な男が、一年もの禁欲に耐えられるはずがない。
相手がいないのと、目の前にいるのにデキないのとでは、全然違う。
「そんなに、俺が耐えられないと思ってるでしょ」
「え?」
「不感症って、具体的にはどうなんですか?」
「どう……って……」
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