151 / 179
18.私の身体が濡れたから
5
しおりを挟む「ここは?」と、私は築十年のオートロック付き十階建てのマンションを指さした。
「三階って、あんまり景観良くないんじゃない?」と、ベッドに頬杖をついて駿介が言った。
「今よりはいいじゃない?」
「けど、この周辺はスーパーなさそうだよ?」
「そっかぁ」
私は賃貸情報誌をめくる。
二人で暮らせる部屋を探していた。
駿介の部屋が勿体ないほど、彼は私の部屋で生活しているから。
けれど、なかなか気に入る物件がなかった。
「四月中の引っ越しは無理かなぁ」と、私は雑誌を閉じた。
「いいじゃん。俺、この部屋好きだよ?」と言って、駿介が私のうなじに口づける。
「二人で暮らすには狭いよ」
「けど、ずっとひっついてられる」
彼の手が私のパジャマのボタンを外していく。私は、その手をぺしっと叩いた。
「たまには一人で大の字になって寝たいし、ベッドももう限界じゃない」
「確かに。部屋の前にベッドを入れ替える? 来週にでも、買いに行こうか」
「来週はダメ! みんなで集まるって言ったでしょ?」
「あ、そっか」
龍也の宣言通り、公開プロポーズのその日に、龍也とあきらは入籍した。
すぐに二人で暮らし始め、今は釧路行きの準備に追われている。
千尋は、帯広まで迎えに行った有川さんと籍を入れたけれど、その直後から悪阻が始まって、ひと月ほど帯広に留まっていた。
陸は、ゴールデンウイーク前にイギリスに発つことになった。
そして、三月中旬。
千尋と有川さん、龍也とあきらの結婚祝い、陸の壮行会を兼ねて、大和とさなえの家に集まった。
「んじゃ! 色々おめでとう! 頑張れよってことで、かんぱーい!!」
意気揚々と、大和がビールの缶を高々と持ち上げた。
「はいはい、ありがとう」と、陸が素っ気ない返事をして、缶に口をつける。
「なんだよ、ノリが悪りーな」
「色々とか一括りにしておいて、よく言うよ」
「そーだよ! ちゃんとお祝いしようよ」と、私が陸に同調する。
「龍也とあきら、千尋と有川さん、結婚おめでとう!」
「ありがとう!」
千尋たち四人が声を揃えて言った。
「陸、イギリスに行っても頑張ってね!」
「ん、サンキュ」
「じゃ、カンパーイ!」
「かんぱーい!!」
各々の缶で乾杯をして、口に運ぶ。
お酒が飲めない千尋とさなえはダイニング、私たちはリビングのローテーブルと折り畳みのテーブルを繋げて囲んでいた。
オードブルやおつまみ、お寿司やピザを持ち寄って、駿介と有川さんも一緒に。
駿介は一緒に来ることを迷っていたようだけれど、私は当然のように引っ張って来た。
千尋も、来づらそうにしていた有川さんを連れて来た。
「有川ってさぁ――」と、大和がさも昔っからの知り合いかのように、有川さんに言った。
「俺を『陽気で軽そう』って言ったんだって?」
初耳だった。
「それって、チャラいってこと? 心外なんだけど」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる