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【番外編】最後の夜、最初の夜
最後の夜 -1
「いよいよ、麻衣も結婚かぁ」と、千尋が深いため息とともに呟く。
今夜、既に三度目の台詞。
「結局、社労士試験には落ちちゃったんでしょ? 結婚したら、試験勉強どころじゃないじゃない。いいの?」と、あきら。
「どうして? 先輩の麻衣ちゃんが教えてあげたら、心強いじゃない?」と、さなえ。
「何言ってんの。結婚したらヤリたい放題じゃない。勉強する時間があったら子作りしてるわよね?」と、千尋が当然のように言った。
「それでなくても、鶴本くんは若いんだし」
「……そうなの?」
さなえの視線に、私はカシスソーダを飲んで誤魔化す。
「そっかぁ……」
顔を赤らめて、うっとりとした表情すら浮かべるさなえは、二年振りだと言うアルコールを口に含む。とは言っても、軽めのピーチサワーだ。
私が駿介にプロポーズしたのは一年と少し前。
その二か月後、社労士試験の結果発表があり、駿介は不合格だった。
さすがに準備期間が短すぎたと、次回に向けて奮起した。
が!
慣れない仕事と結婚式の準備、新居への引っ越しに、愛を育む時間に忙しい駿介に、試験勉強の時間などあるはずもなく。
結局、今年も不合格に終わった。
それがわかったのが、つい三日前。
「ま、子供ができたらセックス自粛だし、気合も入るんじゃない?」と、千尋が言った。
千尋は今夜に向けて卒乳し、上機嫌でビールジョッキを握り締めている。
上機嫌なのはアルコール解禁だけが理由じゃないだろうけど。
明後日、私と駿介は結婚式を挙げる。
その式で、千尋の娘・未来ちゃんが花束贈呈をしてくれるのだ。
私の親戚にも駿介の親戚にも小さな子供がいないからお願いしたのだけれど、二つ返事でOKしてくれた。までは良かったのだけれど、ホテルでドレスをレンタルできることを知らせると、早々に試着に訪れ、新婦顔負けの枚数を試着し、写真を撮って帰ったらしい。
自分の結婚式や写真には興味がなかった千尋でも、娘のこととなると話は別なのだと驚いた。
それは、さなえにも言えることだった。
未来ちゃんはまだ一歳二カ月で、当然一人で花束贈呈は気が重いだろうと、大斗くんと勇斗にもお願いした。
大和とさなえも快く引き受けてくれて、未来ちゃん同様に衣装のレンタルの為にホテルを訪れた。
そして、黒のタキシードから始まって、紺や白を試着し、写真を撮って帰った。
四人のグループに未来ちゃんのドレス姿のアルバムが送信され、続いて大斗くん&勇斗くんのアルバムも送信されてきた。千尋とさなえはお互いにお互いの子供を褒め合い、私とあきらは個別のトークで、千尋とさなえの親バカっぷりを語っていた。
確かにみんな可愛かったけど……。
「っていうか、麻衣ちゃん。お酒飲んでも大丈夫なのは、確認したんだよね?」と、さなえが聞いた。
「うん。結局、あの後、ちゃんと生理きたから」
「ホント、あの時は大騒ぎだったよね」と、あきら。
「申し訳ない……」と、私は背中を丸める。
「式とか新婚旅行のことを考えたら、出来てなくて良かったのかな?」と、千尋。
「まぁ、うん……」
先々月末。
駿介の社労士試験がようやく終わり、結婚式の招待状を出し終えた私たちに、妊娠疑惑が持ち上がった。
結婚式の日に生理になるのは嫌だから、婦人科を受診しようかなと話していて、気が付いた。
生理が大幅に遅れていることに。
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