【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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【番外編】最後の夜、最初の夜

最後の夜 -3


「ああ。違うでしょ。ん? 違わないか? どっちにしても、見られてるのは私たちの話に興味があるからじゃなくて、私たちに興味があるから、でしょ?」

 千尋が、男性のテーブルを見ながら言った。

 男性の一人も千尋を見て、微笑む。

「けど、あっちも全員既婚者でしょ? ナンパ目的じゃないよね」と、あきらも堂々と男性たちに顔を向ける。

「ナンパ!? 私たちだって指輪してるし、それはないんじゃ――」

「――ワンナイトのお誘いだったらどうする?」と言いながら、千尋が男性たちに手を振った。

「千尋!」

「冗談よ」

「千尋が言うと冗談に聞こえない!」

「失礼な。尻軽みたいに言わないでよ」

「そうじゃなくて! 私は――」

「――麻衣とさなえが遊び慣れてないのはわかってるから」

「ちょっと! 私は慣れてるみたいな言い方、やめてよ」と、あきら。

「ナンパをかわせるくらいには慣れてるでしょ?」

「え? そうなの? あきら、ナンパされること多いの?」と、さなえが食いつく。

「こういう、Sっぽい顔が好きな男って、結構いるのよね」

「誰がS顔よ」と、あきらが梅酒を飲み干す。

 軽く手を上げながらバーテンダーに声をかけ、同じものを注文する。

「みんなは?」

 聞かれて、それぞれ同じものを注文した。

「あと、ナッツとかチーズとか、適当に盛り合わせで」

「それ、俺らに奢らせてよ」

 バーテンダーの背後からにょきっと顔を出した男性は、すごく背が高かった。

 きっと、百九十センチ以上、あると思う。

 その男性はメニューを見ながらつまめるものをいくつか注文した。

「あっちの広いテーブルに移ってもいいかな」

 男性が指さしたのは、窓際の、レンガ風のパーテーションで仕切られた半個室の席。

 バーテンダーは頷き、カウンターに戻って行く。

「あっちで一緒に飲みませんか?」

「可愛い娘自慢に付き合ってくれるの?」と、千尋が言った。

 結婚指輪が見えるように、左手で髪を掻き上げながら。

「うちのお姫様の話も聞いてもらえます?」と、男性が微笑んだ。

 私とさなえがハラハラしながら様子を見ていると、千尋とあきらが目配せした。

「ご厚意に甘えましょ」

「え? 千尋?」

「飲みながらちょっとお喋りするだけよ」

「だって――」

「――誓ってお喋りだけです」と、男性が右手を胸に当て、左手を顔の前に上げた。

 薬指には少しごつめの指輪。

「俺らみんな、奥さん愛してますから」



 それなら、どうして他の女と飲もうとするの?



 私の心の声が聞こえたのか、男性はフッと笑った。

「ほんの少しの後ろめたさって、夫婦円満の秘訣だったりするんですよ」

 男性の後ろでは、他の男性が頷いている。

 バーテンダーが戻って来て、テーブルの上のものを移動し始め、私たちもバッグを持って席を離れた。

 楕円形のテーブルを囲むソファに、男性四人と女性四人が並んで座った。千尋とあきらが端に座り、男性と隣になった。

 改めて乾杯し、簡単な自己紹介をする。下の名前と、年齢、仕事。

 千尋の隣から、テツ、コウ、カズ、マキと名乗った。四人は大学時代の友人で、全員三十三歳。

 私たちに声をかけたのは、テツで、偶然にも千尋と同業者だった。同じ、女の子の親ということもあって、写メを見せ合ったり、仕事の話で盛り上がる。
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