続・最後の男

深冬 芽以

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1 心の距離

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 スウェットの裾から彩の手が滑り込み、指先で腹に触れた。これもまた、珍しい。

「まぁ、事情はどうであれ、どちらか一方だけが責められるのは違うと思う。それに、どちらかといえば既婚者側の責任が大きいと思うし」

「確かに、な」

 彩の指が脇腹をくすぐる。思わず仰け反った。

「千堂課長には、何て言ったの?」

「ん?」

「聞かれたんでしょ? 噂の事」

「ああ……」

 彩の指が、乳首に触れる。離れる。触れる。

「『不倫は軽蔑するが、冨田のことは軽蔑してない』って言っといた」

 俺の反応を楽しむように、彩の指先が刺激する。足先に、彼女の足の感触。

「『グチグチ言わずに冨田に聞け』とも」

 彼女の足が俺の足に絡みつき、けれど、すぐに離れた。だから、俺から足を絡ませた。が、彩は膝を曲げてそれを拒んだ。

「彩?」

 俺は身体を回転させ、彼女に覆い被さった。

 掛け布団を少しはぐって、彩の顔を覗き込む。セックスを仕掛けるにしては、浮かない表情。

「なんだよ、どうした?」

「……別に?」

 明らかに、何か言いたげに顔を背ける。

「なんだよ」

「なんでもない」

 彩は時々、こうして子供みたいになる。それが可愛いのだが、結局は言わせるんだから、さっさと言えばいいとも思う。

「彩」

 俺は無理矢理、彩の足の間に自分の片足をねじ込んだ。さっき拒絶されたように、今度は両足を彼女の足に絡ませる。

「やだっ!」

「なんで」

 彩の首筋にキスを落とす。それから、舐める。それよりも、彩は足の方が気になるようで、足をバタバタさせる。弾みで、彼女膝が俺の股間を蹴り上げた。軽く。

「痛ってぇ――」

 大した痛みはなかったけれど、わざと大袈裟に言った。彼女の肩に額を押し付ける。

「えっ? あ、ごめん!」

 俺が腰を浮かせて身を屈めると、スウェット越しに彩の手が触れた。

「大丈夫?」

 まるで子供のたんこぶを擦るように、俺のモノを擦る。そりゃ、反応するに決まってる。

「……大丈夫そうだね」

「お陰様で」

 俺は彩の首の下に腕を入れ、持ち上げた。キスをする。舌を絡ませる。

 彩の手は俺のモノと自分の身体に挟まれた。彼女の指が動くたびに、刺激される。

「使い物になるか確認しろよ」

「え?」

「口で」

 俺がフェラをせがむと、彩はいつも恥ずかしがる。スること自体じゃない、シているのを見られるのを。そう言いながらも、シてくれるけど。

 初めて彩を抱いた時にシてもらって以来、俺は彼女のテクニックにハマった。

 それまでは、長い爪で傷つけられるのも、テカテカした唇で銜えられるのも、あまり好きじゃなかった。

 けれど、彩の爪はいつも短いし、口紅も俺とのキスではがれる程度。

 そして、とにかく優しくシてくれるのが気持ちいい。

「やだ」

「は?」

「今日はシてあげない」

「え? なんで?」

 やっぱり、今日の彩はなんだかおかしい。

「彩?」

「……」

 彩は顔を背けて、黙ってしまった。

「なんだよ。言いたいことがあるなら、言えよ」
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