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6 ダブルパンチ
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智也が私の身体を引き離そうとしたけれど、私は首から離れなかった。
こんな泣き顔を見られるなんて、恥ずかしい。
「そう思うんなら、どうして声をかけた?」
「……?」
「邪魔だと思うなら、どうして声をかけた?」
「……智也、辛そうだったじゃない。熱があるのに外で立ち話なんて――」
急に勢いよく腰を突き上げられて、思わずしがみつく腕を緩めてしまった。智也が私の肩をグイッと押し退け、正面から向き合ってしまった。
「お前のそういうとこ、好きだよ」
「なに、それ」
「大事なこと、ちゃんとわかってる」
「どういう――」
強く押し付けるキスと同時に、智也が腰を揺らし始め、話どころではなくなった。
さっきまで、主導権は私にあったはずなのに、今ではなされるがままに突き動かされるばかり。
仕掛けたのは私だけど、結局話もうやむやにセックスで誤魔化されたようで、少しムッとした。
下腹部に力を込めて、智也を締め付ける。
「あっ――! ば――」
そのまま激しく腰を二、三かい上下させると、智也が私の腰を掴んで動きを止めた。
膣内で智也が大きく跳ねる。
静かな部屋に、互いの荒い息遣いだけ。
「彩……」
付き合い始めて気づいたことだけれど、意外にも智也は余韻を大切にする。
さっさとゴムを外して眠ったりしない。
しばらく抱き合って、キスを欲しがる。
『したがる』のではなくて『して欲しがる』。
だから、私からキスをする。
そして、智也が応える。
いつの間にか習慣のようになっていた。
『好きだよ』とか『良かったよ』とか、『ずっとこうしていたい』とか、そんな言葉の代わりのような気がして、私にとっても大切な儀式のようになっていた。
智也も、そんな風に思ってくれていたらいいな……。
「金曜、札幌に帰るから」
「うん」
もともと、来週は智也が帰ってくる予定で、子供たちは父親のところに行くことになっていた。
来週の月曜日は智也の誕生日。
二人で過ごす、三度目の誕生日。
今年も智也のリクエストは、いつもの誕生日メニュー。
あと何度、作ってあげられるのだろう……?
そんなことを考えた罰かもしれない。
智也の誕生日は、二日間片時も離れずに過ごした。智也は料理を喜んで食べてくれて、いつも以上に甘いセックスをして、真面目に仕事の話なんかもした。
幸せで、幸せで、浮かれていたのかもしれない。
春。
凪子さんが営業部長に昇進し、二課に新しい課長が赴任してきた。
「益井環です」
智也の元カノだった――。
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「どういう――」
強く押し付けるキスと同時に、智也が腰を揺らし始め、話どころではなくなった。
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仕掛けたのは私だけど、結局話もうやむやにセックスで誤魔化されたようで、少しムッとした。
下腹部に力を込めて、智也を締め付ける。
「あっ――! ば――」
そのまま激しく腰を二、三かい上下させると、智也が私の腰を掴んで動きを止めた。
膣内で智也が大きく跳ねる。
静かな部屋に、互いの荒い息遣いだけ。
「彩……」
付き合い始めて気づいたことだけれど、意外にも智也は余韻を大切にする。
さっさとゴムを外して眠ったりしない。
しばらく抱き合って、キスを欲しがる。
『したがる』のではなくて『して欲しがる』。
だから、私からキスをする。
そして、智也が応える。
いつの間にか習慣のようになっていた。
『好きだよ』とか『良かったよ』とか、『ずっとこうしていたい』とか、そんな言葉の代わりのような気がして、私にとっても大切な儀式のようになっていた。
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