続・最後の男

深冬 芽以

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15 暴れだす感情 

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 一週間ぶりの社内は、私に友好的とは言えなかった。

 なにせ、私と智也の関係を知らなかった人にまでバレるようなことを言ってしまった。噂の的だ。

 それでも、営業部の人たちがいつもと変わらずに挨拶をしてくれて、救われた。

 私の隣、荻野さんの机は片付けられていた。函館の実家に帰ったと、千堂課長が教えてくれた。私に謝っておいて欲しい、と言っていたことも。

 益井課長は外勤に直行で、私は束の間、ホッとした。本当に、ほんの束の間。

「堀藤さん!」

 始業三十分。

 受話器を置くなり、千堂課長が私を呼んだ。

「ちょっと」

 課長の表情には焦りと、苛立ちが見えた。私は何事かと課長の後に続き、小会議室に向かった。

「くそっ――!」

 ドアが閉まるなり、課長が悪態をついた。

「さっきの電話、奥山商事が契約の破棄を伝えてきた」

「え?」

 聞き間違いかと、私は本気で思った。

「しかも、FSPうちで保管している、これまでの奥山商事に関係する資料の全てを提出するようにとまで言ってきた」

「どうして、そんな――」

「益井課長が何かしたらしい」



 また、あの女が――!



 胃が、キリキリ痛む。

 いい加減、うんざりだ。

 千堂課長は会議室の受話器を取り、ボタンを三つ、押した。内線だ。

「千堂です。益井課長が戻り次第、急いで小会議室に来るように伝えてください。……お願いします」

 受話器を置く。

「――ったく! 一体、何をやったんだ」と、振り向きざまに言った。

「謹慎中、奥山商事に行ったんだよね?」

「はい。あ、いえ。渡部部長から昼食に誘われたんです」

「食事?」

「はい。個人的に、その、同情されてしまったというか……」

 まさか、ヘッドハンティングされただなんて、言えない。

「その時の様子は?」

「契約を破棄するなんて話はありませんでした。その……、益井課長との関係が思わしくないことは打ち合わせの態度でバレバレだったので、大変だろうけどこれからもよろしく、みたいな感じで……」

「じゃあ、やっぱり益井課長が原因か」

「けど、益井課長は担当を外れるんじゃ――」

「そうなんだけど。どうしてか、朝一で奥山商事に行ったらしい。渡部部長が言うには、『御社の益井課長から興味深いお話を伺い、全面的な契約解除を決定した』って。けど、解除なんて言い方をしても、一方的に決定なんて、実質は破棄だ。あの渡部部長にそこまで言わせるなんて、どんな逆鱗に触れたんだか」

 千堂課長はガシガシと頭を掻きむしる。

 益井課長が何を言ったかはわからないが、そのせいで先週の荻野さんの失態まで蒸し返されて、賠償問題になんて発展したら堪らない。

「私、奥山商事に――」

「いや。まずは事実確認だ。益井課長が何をしたのか正確に把握してからじゃないと――」

 コンコン

 ドアがノックされ、千堂課長が声を発する前に開いた。

「千堂課長?」

 益井課長が涼しい顔をして入って来る。

「私を呼んでいるとか? 忙しいんで、手短に――」

「奥山商事で何をやったんですか」

 益井課長は目を丸くし、わけがわからないという表情を見せた。それから、私をジロリと睨みつけ、また千堂課長に視線を移す。

「契約内容について提案に伺っただけですけど?」

 飄々とした物言いに、千堂課長の苛立ちゲージの上昇が分かった。

「何か、連絡がありました?」

「契約解除だそうです」
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