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15 暴れだす感情
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しおりを挟む翌日。
私の足取りは重かった。
意外にも、私は智也との別れを冷静に受け止めた。
安全運転で真を迎えに行き、車内ではテストの出来はどうだったとか、話す余裕もあった。家に帰って、ゲームばかりしている亮を叱り、宿題も見た。両親からの温泉土産の饅頭やらクッキーやらも食べた。お風呂に入って、ぐっすり寝た。
ずっと、心のどこかで別れを意識してきたからか、自分でも意外なほどショックは少なかった。
「おはようございます」
エレベーターを待っていると、千堂課長と谷主任に会った。
「おはようございます」
二人に、迷惑をかけたことを謝罪し、三人でエレベーターに乗り込んだ。
「顔色悪いですけど、大丈夫ですか?」と、千堂課長が言った。
「やっぱり、気が重いですよね」
昨日は十時には布団に入った。夜中に何度も目が覚めてしまったけれど、寝不足というわけではない。
あとで鏡を見よう、と思った。
「溝口部長、かなり心配してましたよ」と、谷主任が言った。
「え――?」
「堀藤さんが謹慎になったって知って、俺んとこに電話ありました」
智也から、谷主任に――?
「実は、前から頼まれてたんですよ。益井課長のことで、堀藤さんに何かあったら連絡くれって」
そんなこと……。
「俺んとこにも電話来ましたよ。めっちゃ怒られました」と、千堂課長。
「『どうしてこんな騒ぎになるまで放っておいたんだ!』『課長として職務怠慢だ!』って。あの人の怒鳴り声、久し振りに聞きました」
千堂課長は、ハハハと苦笑いする。
「すいません、ご迷惑をおかけして。公私混同ですよね。本当に、すみません」と、私は二人に頭を下げた。
「いえいえ。ま、気持ちはわかるんで。堀藤さん、溝口部長に益井課長とのこと、言わないんでしょう? 恋人としては気になりますよ」
「そんな……、いい年をして――」
「年なんか関係ないじゃないですか」と、谷主任が言った。
隣の千堂課長が、うんうん、と相槌を打つ。
「好きな女のことを知りたいとか、守りたいって思うのに、年は関係ないですよ。そこは、素直に喜んで守られてなきゃ」
「そうですよ。俺なんか年下で部下だから、いざとなったら守られちゃうんですよ? 俺だって格好つけたいのに……」と、千堂課長がため息をついた。
「そういうもんですか?」
「そんなもんですよ。男なんて子供なんで、そんな風に格好つけてないとプライド保てないんですよ」
「プライド……ですか」
「そう。自分が必要とされてるって、確認したいんですよ」
『俺はそんなに頼りないか』
昨日の智也の言葉を思い出す。
智也も、不安だったのかな……。
甘え上手な女なら、そんなことは言わせなかったんだろうけれど、残念ながら私はそうじゃない。
甘え方なんて、すっかり忘れてしまった。
いや、そもそも、私に甘えるなんてスキルがあったかどうかも疑わしい。
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