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17 一難去ってまた一難
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しおりを挟む益井課長が退職してから二週間。
奥山商事は長期契約を解除し、単発での契約に切り替えることに同意してくれた。私は最終案をまとめ、工場に発注し、納品を待つばかりだった。
社内では、益井課長の退職について、男性陣のほとんどは『私情に流されて会社に損害を与えた』と怒っていて、女性陣のほとんどは『ああいう人のせいで、これだから女はって言われるのよ』と怒っていた。ただ、ごく一部では『男を取り合った結果』だと笑っているらしい。
『堀藤さんが益井課長に勝った』なんて言われているのも知っている。が、そう言っているはほとんどの人は、通常は私と関わらないから、気にならなかった。
真のギプスも取れ、一週間の注意期間も過ぎて、体育の授業も解禁になった。友達関係も変わらずのようで、ホッとした。
仕事と真に気を取られている間に、亮が漢字テストで五十八点を取ってきたのには焦り、翌週の再テストのために週末は漢字の鬼となった。
月曜日の夕方、『九十四点で合格した!』とメッセージを見た時には、ホッとした。
改めて、もっとちゃんと子供たちと向き合わなければ、と思った。
智也は私の気持ちを尊重してくれて、しばらく来なくていいと言ってくれた。代わりに、俺が帰るようにする、と。
七月は経営会議で、八月は夏季休暇で帰って来てくれた。
「はぁぁぁ」
顔を合わせるなり、智也は私を抱き締めてため息をついた。私の背中で腕を交差させ、二の腕を掴む。
「この柔らかさ……」
どうせ!
太りましたよ!!
そうなのだ。
春頃から三キロも太ってしまった。
初めの頃は、益井さんのことがあってストレス太りだと自分を誤魔化していた。生理不順の上、生理痛や出血量の増加もあったから、早くも更年期かとも思った。
が、益井さんが退職して平穏が戻ったにも関わらず! 夜ご飯の炭水化物を抜いているにも関わらず!! 体重は減らないし、生理不順も続いている。
「智也ってデブ専なの」
自虐的な嫌味を言い、私は彼の足を踏んだ。智也は足を引いたが、私のことは離さない。
「デブなんて言ってねーだろ」
「どうだか」
「ぽっちゃり?」と言いながら、智也が私の肩におでこをぐりぐりと擦りつける。
「四十にもなれば、中年太りっていうのよ」
「なに、イライラしてんだよ」
「生理だから!?」
「女は大変だな」
その日は、お腹が痛いという私のために、智也がポトフを作ってくれた。
幸せを噛みしめたが、硬すぎたじゃがいもは噛めなかった。
結局、久し振りの外泊は、ほとんどをソファとベッドで過ごした。私は極度の腰痛と腹痛で横になってばかりで、智也はそんな私のそばでスマホを弄ったり、本を読んだりしていた。
「何しに来たかわかんないね」と、私は智也の太腿を枕にして呟いた。
「いつも、何しに来てるんだよ」と、智也が私の髪を指ですいた。
「一緒にいられるんだから、いいだろ」
いい年をして、キュンと胸がときめいた。
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