続・最後の男

20 芯まで蕩けて

１

　


　千堂と冨田の結婚には、考えさせられた。

　デキ婚、と言ってしまえばそれまでなのだが、子供が出来たとわかって、何の迷いもなく結婚に踏み切った二人は、ただ時期タイミングを計っていただけで、互いとの結婚の意志は固まっていた。

　そして、その時期タイミングが訪れた二人を、羨ましいと思った。

　俺と彩の時期タイミングは、妊娠じゃない。それは、確かだ。



　じゃあ、いつだ……？



　勢いで関係を持ち、付き合い始めた千堂と冨田は、勢いのまま結婚した。

　俺と彩は、理詰めで始まった。

　ならば、やはり、理詰めで攻めるしかないだろう。

　悔しいが、千堂と冨田に先を越されて、焦りを感じた。

　彩の気持ちを確かめたくて、子供の話を持ち出してみたが、反応はイマイチ。

　電話じゃ表情が読めないから、会って話してみようと思っていたのに、彩の体調不良で会えなくなった。

　気持ちは焦るばかり。

　彩に会いたい。

　悶々とした感情に振り回され、ようやく彩に会えるのは一週間後。三週間も『待て』をさせられて、とにかく色々と限界だった。

　母親からは相変わらず、見合い相手との結婚を勧める内容のメールが届く。

　彩に会いに行ったと聞いて、だいぶ強く抗議したが、清々しいほどさっぱりと無視スルーされた。

　彩に会えない週末。

　俺のスマホの検索履歴は、『婚約指輪』『結婚指輪』『籍を抜くには』の三つ。

　指輪は、まぁ、金額の参考程度に見たものだ。

　彩の好みもサイズもわからないから、一緒に買いに行くことにする。

　親の戸籍から抜けるのは、分籍と言うらしい。

　だが、結婚すると同時に抜けるのと意味合いは同じで、絶縁を意味するものではないらしい。

　親と絶縁したければ、そう宣言して、一切関わらないしかないようだ。

　同じようなページを何度も開いて、一日中彩のことを考えていた。

　千堂のことを言えない。



　腹を括るしかない――！



　彩が、甘い言葉でプロポーズして、喜んでＯＫしてくれる女じゃないことはわかっている。彩を攻略するには、子供たち、主に真の攻略が絶対条件。

　だが、真を攻略するにしても、彩の協力が必要なわけで。

　つまりは、彩にプロポーズをＯＫさせるしかない。

　結論のない問題に悩み、月曜の朝の俺は、金曜の午後よりも疲れ果てていた。

　そして、再び週末。

　いくら考えても、これだ！　と思うプロポーズの言葉が浮かばず、雰囲気に任せることにした。



　とにかく、プロポーズする！！



　それだけは、決めていた。