続・最後の男

深冬 芽以

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 結婚するからには知っておく必要がある。

 けれど、今、この甘いムードの時に聞く必要もないかもしれない。

 だが、小遣いの話をしている時点で、既に甘くはない。

 さらに言えば、智也は結婚後の家計の管理をどうするつもりだろう?

 前の結婚生活では私が管理していたけれど、旦那さんが管理している友達もいるし、共働きだから支出を分担している友達もいる。

 愛を囁かれ、求婚され、婚姻届を記入した一時間後にお金の話とは、つくづく結婚は甘くない。

「彩?」

 智也に顔を覗き込まれ、ハッとした。

「なに、難しい顔してんだ?」

「ううん。なんでも?」

 私のこめかみにキスをして、それから再び枕に頭を沈める。

「今の見て気になったんだけどさ、小遣いでやりくりしなきゃなんないのって、具体的になに?」

「んーーー……。そこそこで違うだろうけど、趣味に関するものは小遣いからだよね。あと、飲み代、煙草吸う人は煙草代、仕事中の飲み物代? あとは――」

「――俺で言えば?」

「智也で言えば……、まずは飲み代じゃない? あとは、趣味とかこだわりの物だよね。……思いつかないんだけど」

「うん。俺も思いつかない」

 そうだ。智也は特別何かに執着することがない。趣味らしい趣味も聞いたことも見たこともない。

「昼飯は?」

「あーーー、うん。お弁当でよければ作るよ? 外回りで食べられない時とかは、別で渡すかな?」

「前もそうしてた?」

「……うん」

「嫌じゃなければ話してくんない?」

 きちんと付き合い始めてから、元夫のことはほとんど話していなかった。吹っ切れていたし、思い出すこともほとんどなかったから。

「お小遣いは手取りの約一割。基本給ね。三十万なら三万、四十万なら四万。ボーナスもそうだった。基本はお弁当を作ってたけど、作れなかったりいらないって言われた時は、お昼代で千円渡してた。床屋代や病院代はその都度」

「……具体的には?」

「それ、聞きたい?」

「参考までに」

 正直、気が引ける。

 智也の収入がわからないから、誤魔化しようがないから。

 ぶっちゃけ、元夫は高給取りだった。智也が今の自分と比べて卑屈になるようなことは避けたい。

「聞いて卑屈になったりしないから、言えよ」

 私の心配などお見通しのようだ。

「離婚直前は手取り三十八万で、小遣いは四万。ボーナスは夏で百万くらい、小遣い十万。飲み代と煙草代、タクシー代、パチンコ、ゲーム、浮気代で毎月足りなくて二万から三万は持ってかれてた。喧嘩した時は、お弁当も夜ご飯もいらないから十万寄こせって言われたこともあるし、ボーナスの小遣い三日で使い果たして更に十万寄こせって言われたことも――」

「――ストップ!」

 智也に、手で口を押えられた。

「話、脱線してる」

 そのようです。

「元夫の浪費についてはわかった」

 智也が手を離し、今度は唇にキスをくれた。

 この一時間ほどで、何度キスをされたろう。
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