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24 願い
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しおりを挟む智也は私の身体を気遣ってくれたけど、大丈夫だと言って譲らなかった。
二人で抱き合ったまま、ベッドに入る。
三十分前。
私は人生で二度目の婚姻届に記入した。
私が退院する前に智也が用意してあったもの。
証人の欄には、私のお父さんと夏子の署名。
「婚姻届、いつ出す?」
私の髪で指遊びしながら、智也が言った。
「大安がいいとか、覚えやすい日がいいとかあるか?」
「んー……」
「彩の誕生日は?」
来週末は私の誕生日。
四十一歳になる。
「忘れなくていいね」
「プレゼントをまとめたりしないからな?」
「なに、それ」
「姉さんに言われた。誕生日が結婚記念日って女は嬉しいか、って聞いたら、プレゼントをまとめられなければ、って」
私はクスッと笑った。
夏子の言葉より、智也がそんなことを相談していたことが嬉しくて、可愛いと思ったから。
「最初の結婚記念日のプレゼントは……やっぱ指輪かな。誕生日のプレゼントは何がいい?」
「大丈夫かなぁ……」と、私はわざとらしくため息をついた。
「何がだよ?」
「智也の金銭感覚。結婚したらお小遣い制だよ? 必需品以外は基本は自分のお小遣いの範囲内で買うんだよ? そんな生活、したことある?」
「……高校生の時?」
「因みに! その頃のお小遣いは?」
聞かなくても想像はつく。
両親が仕事で留守がちで、しかも生活に困って仕事をしているわけではないとなると、当時の私の小遣いの倍はくだらないだろう。
「覚えてねーけど……」と、智也は口をへの字に曲げて天井を見つめる。
「高一で一万、高二で二万……とか?」
やっぱり。
「けどっ! だからってアホみたいに使い果たしたりしなかったぞ?」
私の恨めしそうな視線に気づいてか、智也は慌てて付け加える。
「飯代とか服代も込みだったし。三年の頃は参考書とかでほとんど消えてたし」
「デート代の間違いじゃない?」
「――っ! そりゃ、そういう……のもなくはなかったけど! 別に――」
「そんな生活に戻れる?」
「ん?」
私は智也の胸の上の手を伸ばし、サイドチェストの上のスマホを取ってと、手をパタパタさせてジェスチャーした。取ってもらったスマホを操作し、目当てのサイトを表示させると、彼に見せた。
「サラリーマンの小遣いの平均?」
智也はサイトを読み進め、終わると無言でスマホをチェストの上に置いた。伏せて。
それから、私をギュッと抱き締め、頬にキスをする。
「愛してるよ、彩」
「そんなこと言っても、お小遣いは増えません!」
「あーや」
「ダーメ!」
智也に見せたサイトには、年代別の小遣いの平均額と、年収別の平均額が載っていた。
三十代の平均額は、三万六千円程。四十代は、三万七千円程。
年収別では、六百万で四万三千円程。七百万で五万円程。
そう言えば、私は智也の正確な年収を知らない。課長は月給制だが、部長以上は年俸制なのは知っている。
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