131 / 164
12.断罪パーティー
10
姫の言い方はさておき、つまりはこうだ。
姫はとあるユリアに騙された男の復讐がしたかった。
そして、ユリアの被害者が他にもいると知り、同時にユリアが自身の元夫である滝田と長年男女の関係にあることも知った。
滝田との離婚時に調査員が不慮の事故に見舞われて不倫相手までは特定できなかったが、それがユリアであると確信した姫は、ユリアの勤め先であるトーウンコーポレーション内で協力者を得ようと考えた。
まぁ、尤もらしく言っていたが、半分はユリアの上司となる皇丞の協力があればラッキーという気持ちと、半分は以前から気に入ってちょっかいをかけていた皇丞が結婚して幸せそうなことを妬んでパーティーで接触し、見事に玉砕したところに俺が声をかけたんで、ターゲットを俺に変更したってことのようだが。
とにかく、俺がユリアの直属の上司で、独身で、姫の好みだったことで、マンションに突撃してくることになる。
だが、俺が引っ越すことまでは考えていなかった。
引っ越し先を探し当てて再度突撃すると、なんと登の元妻であるりとが即席恋人を演じた。
その時点で滝田と登の関係を知っていた姫は、何が何でも俺を協力者にしようと決めたらしい。
俺が本気でりとに惚れるまでは想定外だったようだが。
姫が巻き込み事故と言ったのは、ユリアの男が滝田だと知って昔の恨みがよみがえり、ユリアへの復讐のついでに滝田への復讐も成し遂げようと決めたからだ。
そして、りとにつきまとう登の姿を目撃し、俺を協力者に引き込むための餌にすることにした。
まったく……。ただの姫、とか誰だよ……。
とんでもない曲者姫。
ま、おかげで俺は登を排除できるからウィンウィンだけど。
「仲良くする相手を間違えましたわね」
「……なんで……。俺はただ、会社のために……」
呆然自失の登が、己の髪の毛を搔きむしる。
そして、突然天井を見上げる。
「うおぉぉぉぉぉっ!」
気が触れても仕方のない状況だ。
誰もが残念な男を、残念そうに見る。
「お前っ! お前さえいなきゃ――」
そう言うや否や、登が前のめりになる。
俺は咄嗟にりとを身体の後ろに隠した。
だが、登の視線はりとではなく、姫でもなく、ユリアを捉えていた。
「ユリアァァァァァッ!!」
奇声を発しながら、登がユリアに掴みかかる。
「キャァァァァァッ!!」
ユリアの悲鳴に、ユリアの父親が、これまた反射的に登に掴みかかる。
登がユリアの髪を引っ掴み、左右に振る。
「痛いっ! やめろっっ!!」
まさに地獄絵図。
「やっ、やめろっ!」
登がユリアの父親の制止を振り払った時、ユリアが登の身体を思いっきり押し退けた。
「離せっ!!」
ふらついた登が会場出入口の前に倒れ込む。
メデゥーサのように逆立つ髪、辛うじて踏みとどまった中腰の体勢、怒ったり泣いたりで幼稚園児の塗り絵の方がまだましだと思える化粧、そして、荒い息。
一年ほど前、会議室でタブレットをぶん投げた林海きらりほどぶっ飛んだ女はいないと思った自分に言ってやりたい。
上には上がいる――。
会場内の全員、姫でさえ唖然とする中、ドアが開いた。
そして、ホテルスタッフらしい男性が顔を出す。
「あの――」
「――しっちょー!!」
スタッフの足元から顔を覗かせた力登が、俺を見るなり走り出した。
俺とお揃いのタキシードを着た力登。
苦しくなったのか蝶ネクタイは外されている。
相変わらず重そうなお尻をフリフリさせながら、俺を真っ直ぐ見て瞳を輝かせる。
そんな力登の目には、自分に向かって手を伸ばす二人は目に入らない。
「りき――」
「――力登!」
俺は全力で力登に向かって走り出した。
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。