サレたふたりの恋愛事情

深冬 芽以

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5.交際を申し込まれました

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「両親は仕事が忙しくて帰ってこないんだと思っていたんですけど、実はそれだけじゃなくて、それぞれ恋人がいたらしいです」

 篠井さんが真剣な表情で、黙って私の話を聞いている。

 篠井さんにしたら、自分の両親は仲が良すぎるって話の後だし、バツが悪いだろう。

 それに、同情されたいわけじゃない。

 私は唇をもごもごさせて、無理して笑った。

 うまく笑えていたかはわからないけれど、そうした。

「中学生の時に両親は離婚したんですけど、その時に言ったんです。二人に。離婚するなら結婚しなきゃ良かったのに、って。そしたら、二人揃って同じことを言ったんです」

 それまで、二人が揃っているところもろくに見たことがなかった私は、最後に揃って同じことを言ったことに、違和感しかなかった。

「大人になったらわかる、って」

 私はぬるくなった梅サワーの缶を強く握った。

 缶は少し凹んで、私はそれを隠すように飲み干し、今度は力いっぱい握った。

「両親とは?」

「え?」

「今も連絡を取ってる?」

 首を振る。

「いえ。それぞれ再婚して、もう何年も連絡を取ってません」

「兄貴とは?」

 また、首を振る。

「答えは出そうか?」

「え?」

「親に言われたんだろ? 大人になったら、親の気持ちがわかるって。わかりそうか?」

 三度、首を振る。

「わかる前に、更に謎が深まりました」

「というと?」

「羽崎、は母の旧姓なんですけど、父と離婚した後、母は二度結婚したんです。今は……なんて名字だったかな」

 決して自虐的にではなく、自然と笑えた。

 母の現在の名字なんて、興味がない自分に。

「二度とも、私は祖母の元を離れませんでした」

「再婚相手が嫌がった?」

「母が、嫌がったんです。ずっと祖母に私を任せっきりにしていたのに、新しい夫との生活に私を置こうとする理由がないでしょう?」

 篠井さんが少し険しい表情で髪をかき上げた。

 休日は髪をセットしていないから、前髪が目にかかって邪魔そうだ。

「母親だから、で十分な理由だろ」

「祖母もそう言ってました。でも、母は私を連れて行こうとはしなかった。だから、聞いたんです。結婚した時と離婚した時と結婚した時に。男のために捨てられる子供なんてどうして産んだのか、って」

「どストレートだな」

「ムカついたんで」

「で? 母親はなんて?」

「同じです。大人になったらわかる、って」

「つーか、大人って何歳だよ」

 篠井さんが既に空のビール缶を握り潰す。

 篠井さんの疑問が簡単そうで難しいことに気づき、私は笑った。

「そういえば、そうですね」

 最初に言った『離婚するくらいなら結婚しなければいい』というのは、横暴だと今ならわかる。

 だって、結婚する時にはまさか離婚するなんて思ってない。

 もしかしたら、子供も同じ。

 産む時には、いずれ捨てたくなるだなんて思わないはず。

 でも、ならば、なぜ私が生まれたのか。

 自分が母親に向いているか、自分が子供を愛せるかなんて一人産めばわかるものではないのか。

 それとも、兄は愛せた?

 私の目には、兄も私も等しく愛されていなかった。

 いや、愛についてはわからない。

 わかっているのは、両親は私のことも兄のことも関心がなかったこと。

 そして、兄も両親への愛や関心など持ち合わせていなかった。

「知る必要、ねーだろ」

「え?」
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