サレたふたりの恋愛事情

深冬 芽以

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12.真実は残酷で……

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*****


「本当に会うのか?」

 大貴は何度も聞いた。

 その度に迷う。

 だが、一縷の望みを懸けて、俺は意思を変えなかった。

 夏依が母さんに呼び出された数日後、俺は大貴にあることを頼んだ。

 最初、大貴は断った、と言うよりも反対した。


 だが、引き下がらない俺に負けてくれた。


『夏依の両親に会わせてほしい――』


 まずは父親。

 大貴自身会いたくないようだったが、夏依が偶然会った父親に忘れられていたことに傷つき、俺のプロポーズを拒んだことを話すと、連絡してくれた。

 数年ぶりの息子からの電話に、父親はすんなりと会いに来た。

 一週間後の週末、指定したカフェで、俺と大貴はわざと別々の席に、大貴は入口に背を向け、俺は入口に向かって座った。

 店に入って来た時、俺はすぐに彼が父親だとわかった。

 カジュアルスーツに整えられた髪、伸びた背筋、堂々とした佇まい。

 大貴に似ている。

 そして、じっと見ていた。

 俺に気が付き、その視線に少し不快そうな表情をしてから店内を見回して、大貴の元に向かう。

 息子のことはわかるんだな、と思った。

 それから、ムカついた。


 夏依むすめのことはわからなかったのに――!


「久しぶりだな」

 父親はそう言って、大貴の正面に座った。

 大貴の父親を見る目は、とてもそうとは思えないほど鋭く、今も消えない憎しみがまざまざと感じられた。

「元気か?」

 大貴がその問いに答えるより先に、店員が注文を聞きに来て、父親は「コーヒーでいいか?」と息子に聞いた。

「ホット三つ」

 そう言ったのは、俺。

 店員が立ち去り、俺は大貴の隣に座った。

「初めまして、篠井といいます。大貴の友人で、夏依の恋人です」

「夏依……?」

 父親が怪訝そうな表情で俺を見る。

「今日は、俺が大貴に頼んで、あなたを呼び出してもらいました」

「理由は?」

「離婚の理由が知りたくて」

 父親の眉間に皺が寄る。

「なぜ、きみにそんなことを話さなければいけない?」

「夏依が――」

「――息子おれには聞く権利があるだろう?」

 大貴のこんなに怒りに満ちた声を、初めて聞いた。

 だが、父親は平然としている。

「お前は知っているだろう」

「夫婦揃って不倫して、子供にバレたから」

 父親がちらりと俺を見て、だが俺の表情から既に知っていると察して、大貴に視線を戻す。

「……そうだ」

「本当にそれだけか?」

「どういう――」

「――俺にバレても平然としてた」

「……」

「すまなそうにするわけでもない、口止めするでもない。まるで――」

 店員がコーヒーを運んできて、三人の前に置いた。

 騒がしい店内の中で、俺たち三人の空間が切り取られたように静かで、カップがソーサとぶつかるカチャという小さな音も良く聞こえた。

「ごゆっくりどうぞ」と言って店員が立ち去ると、大貴が口を開いた。

「俺がバラすのを待ってたんじゃないのか?」

「どうしてそんなことを――」

「――自分が悪者になりたくなかったんだろう!? あんたは最後まで、俺にも夏依にも謝らなかった!」

「……」

 父親は表情を変えず、コーヒーに手を伸ばす。

 一口飲んで、ふぅと息を吐き、カップを置いた。

「今更聞いてどうする」

「――っ! 俺は――」

「――少し前、夏依と会ったことを知っていますか?」

 感情的になっている大貴を制止して、俺は言った。

「あなたは小学生くらいの女の子と一緒にいたそうです」

「娘と出かけることはよく――」

「――夏依とは出かけたことがなかったのに?」

 父親が椅子に背を預け、腕を組む。

「なにが言いたい」
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