サレたふたりの恋愛事情

深冬 芽以

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12.真実は残酷で……

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「いい子ね、夏依ちゃん」

 カフェを出る前、夏依がトイレに立つと母さんが言った。

 褒められたのは俺なわけではないのだが、鼻が高い。

「うちの子にしましょうか」

「母さん、だから――」

「――嫁に、って言ってるわけじゃないわよ」

「は?」

「プロポーズ予告なんてムードも何もない男の肩を持つ気はないの。そんな、ホームラン予告みたいに、できたらカッコいいもんじゃないわよ。まったく」

「……」

 返す言葉もない。

「あんたが夏依ちゃんに捨てられたら、養子にしましょう。で、あんたは魔女二号に婿に行ったらいいわ」

「それが一人息子に言う言葉か」

 奥のトイレを隠す壁から夏依の姿が見えて、俺はケーキの箱を持った。

「あんたがあの子の結婚への恐怖を失くしてあげられないなら、そういうカタチで家族になる方法もあるってことよ。内縁の妻なんて不確かな関係じゃ、何かあってもあの子を守ってあげられないのよ?」

「言われなくてもわかってる」

「なら、いいわ」

「じゃ、行くわ。俺らが帰んねーと父さんがいつまでも来られないから」

 父さんと会っていた店を出る時、言われた。

『次は』会わせてくれよ、と。

 昨日の今日で、父親まで登場したんじゃ夏依が気負うだろうからという配慮だろう。

 きっと、どこかで俺たちが店を出るのを待っている。

「光希」

「ん?」

「子供は親にとっての全てであるべきだと思うけど、子供にとっての親はそうじゃなくてもいいと思うの」

「は?」

「親に縛られずに、親より大切な人を見つけて幸せになっていいのよ」


 俺は、夏依にとって親の呪縛以上の存在になれるだろうか……。


 なりたい、とは思う。

 それは、間違いない。

 家に帰り、夏依を強く抱きしめた。

 そして、決めた。
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