サレたふたりの恋愛事情

深冬 芽以

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14.サレたふたりは……

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「私を飽きさせるな、って?」

「違います。お互いに切磋琢磨し向上心を――」

「――社訓みたいだなぁ? つーか、どっかで聞いた台詞だな」

「ですね」

 夏依がニコリともせず、というか、戦いを挑むかのような勇ましい表情で俺を見下ろし、Tシャツの裾を掴むと勢いよくめくり上げた。

 タイミング悪く俺は夏依の肩を掴んでいて腕が上がっていたから、Tシャツは脇までめくれてしまう。

「私、あの時はそんなんだから鬼篠はフラれたんだって思いましたけど、今は激しく同感です! 恋愛感情を認識、共有、維持するには、努力と時間が必要だと――」

「――今更だが、恋愛ってそんなんだったか? それに、何気に辛辣なこと言ってるぞ」


『そんなんだから』とは?


「すみません。でも、鬼篠が言ったん――」

「――鬼篠言うな! 俺が鬼篠なら、お前は鬼篠嫁だぞ」

 夏依の手が俺の腹を撫で、そのまま脇をくすぐる。

「おいっ――」

「――なんかホラー映画にありそうなタイトルか、地名ですね」

 俺は彼女の手首を掴み、イタズラをやめさせる。

「俺もそう思う。だから、自分の旦那を鬼篠言うのはやめなさい」

「……」

「夏依?」

 急に無言で、なのに口をもごもごさせている夏依の顔を覗き込む。

「どうし――」

「――旦那……様?」

 瞳を潤ませる彼女の言葉に、秒で体温が十度は上がった気がする。

 つられて息子は、高熱による興奮状態に陥った。

 これでは、夏依にやめろと言っても説得力がない。

「なんだか恥ずかしいけど、嬉しいですね」

 夏依が頬を赤らめて微笑む。


 もう……無理……。


 俺は彼女の腰を掴むと、上体を起こした。

 ソファに座る格好に戻り、夏依を抱きしめる。

「恋愛を面倒だとか必要性を感じないとか言ったこと、撤回する」

「言ってましたね」

 ふふっと笑いながら、夏依がまた腹の下まで下がったTシャツに手をかける。

 今度は背中から捲り上げられ、俺は頭を丸めて脱がされやすくした。

「人生ゲーム、やりますか?」

 俺も夏依の服を脱がしていく。

「俺に、お前が金持ちと結婚して、金持ちの子供を産むのを祝えと?」

「逆かもしれないじゃないですか」

「お前は祝えるのか?」

「ゲームですから」

 俺がブラジャーのホックに手をかけると、夏依は少し首を傾けてキスをせがんだ。

 せがんでいるように感じたのは、俺の願望かもしれないが、この際どちらでもいいだろう。

 舌を絡ませながら彼女の肩からブラジャーの紐を落とす。

「ドライなのは夏依の方だな」

 夏依の弾む吐息が、唇の端をくすぐる。

「プレイヤー同士で結婚できる人生ゲームを探しますか」

「大貴に言ったら作るんじゃないか?」

 夏依の頬や耳たぶにキスをしながら、胸の尖りを指で捏ねる。

「売れますか?」

「なに言ってんだよ。俺たちの結婚祝いだ、プレイヤーは俺と夏依だけだろ」

「贅沢すぎません? って言うか、お兄ちゃんに作らせたらリアルすぎて面白くないかも」

「あぁ……かもな」

 目を細めてわずかに身を捩る彼女の胸を、すくい上げるように撫で、揉む。

「光希」

「ん?」

「私が――」

 夏依の手が、スウェットを歪に押し上げる息子に伸びる。

「――また、な」

 腰を引き、彼女の手を遠ざける。

「なん……っで――」

「――最速記録を更新したくはないからな」

「なんのレースですか!」

 茶化し方が悪かったらしい。

 ムキになった夏依に勢いよく突き飛ばされ、またもソファで仰向けに転がされてしまう。
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