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13 感情のままに
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しおりを挟むセックスをするために呼び出したわけじゃなかった。
断じて、違う。
謝りたかったのか?
それも違う。
ただ、確かめたかった。
昨夜のぬくもりは夢じゃなかった、と――。
冷静に話すつもりだった。
決して軽い気持ちで抱いたわけじゃない、と。
彼女の反応が怖くないわけじゃない。
だからこそ、デスクで目を逸らされる前に、ちゃんと話がしたかった。
それに、このままじゃ、仕事にならない。彼女の顔を見ては昨夜の熱を思い出し、目を逸らされては落ち込んでいては。
それなのに、彼女の顔を見た途端、欲望を閉じ込めた頑丈な箱のネジが、全部、いっぺんに、吹っ飛んだ。びっくり箱のようにバネの上に座っていたのか、欲望はねずみ花火のごとく全身を駆け巡り、火種をまき散らし、あっという間に大炎上した。
主に、下半身が。
自分は、淡泊な方だと思っていた。
昨夜のように、強引に女性を押し倒すことも、続けざまに二度もしたことなんてなかった。
だから、自分でも、こんな欲望があったのかと驚かされた。
さすがに、反省した。
朝っぱらから、職場でなんて、ドラマじゃあるまいし、許されることではない。
唯一の救いは、彼女も俺と同様に、ドラマのようなシチュエーションに興奮していたということ。
少なくとも、セクハラで訴えるほど、嫌がってはいなかった。はず。
年度末の業務に忙殺され、彼女を意識する間もなく、ひと月が過ぎた。このひと月で、俺が出来たことと言えば、彼女にひとだまを送ることくらい。
相変わらず仕事は忙しいけれど、このままでは何の進展もないままゴールデンウイークに突入してしまう。
さすがに焦った。
だから、西野ストアへの納品に行くはずの風間が行けなくなって、チャンスだと思った。職権乱用ではない。確かに仕事の一環で、偶然にも直帰できる状況だっただけ。
そこにつけいったのは、確かだけれど。
「どうして、誘ってくださるんですか?」
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俺が彼女を好きなことは、再三伝えた。それでも、食事に誘う理由を聞かれるということは、返事如何では断られるということだろうか。
いや、そうとも限らない。
案外、単純な話かもしれない。
「それは……、立派な理由が……求められてます?」
一応、聞いてみた。
「いえ。単純な疑問です」
なら、答えは一つだ。
だが、女性の言葉にしばしば裏があることくらい、知っている。
単純に見せかけて、何か明確な返答を求めているのではないか?
俺は即座に答えを考えた。
が、気の利いた答えは浮かばなかった。
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