最後の男

深冬 芽以

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13 感情のままに

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「すみません。変なことを聞いて。食事、ご一緒します」

 困った俺を見かねてか、彼女が言った。いや、呆れたのかもしれない。食事に誘うことすらスマートに出来ないのか、と。

 いやいや、彩さんがそんな風に試すようなことを言うとは思えない。

 もっと、シンプルに考えろ。



 シンプルに……?



 会議室で以降、初めて二人きりになったのにいつもと変わらない落ち着いた雰囲気の彼女に対し、彼女の問い一つに、動揺しまくっている自分が、情けなくなった。

 が、それでも、ちゃんと答えなければ。

「一緒に……いたいからじゃ、ダメですか?」

 触らなくても、耳が熱くなっていることは、わかった。 

「好きだから一緒にいたいだけです……」

 俺の言葉に、彩さんも薄っすらと頬が赤くなった。

 いい年をして、思春期の学生でも言わないような告白をした自分が、恥ずかしくなる。

「すいません。あんなことまでしておいて、今更……」

 そう言った瞬間、彼女と顔を見合わせ、同時に顔を背けた。

『あんなこと』が生々しく脳裏に浮かぶ。



 これは、マズい。 



「これ以上は……仕事にならなくなりそうなので、とりあえず車出します!」

 俺は手早くシートベルトを締め、ハンドルに手を掛けた。

 西野ストアまでの三十分。

 無言の車内の温度はなかなか下がらなかった。

 何とか無事に納品を終え、帰りの車内で何が食べたいかを聞くと、今度は彼女が困った。

「そんなに悩みます?」

「すみません。優柔不断で……」

「すごい、決断力ありそうですけど」

「自分のこととなるとダメなんです」と、彩さんが恥ずかしそうに笑って誤魔化した。

 可愛いな、と思った。

「因みに、何で迷ってます?」

 信号が黄色に変わるのを見越して、減速した。一人なら加速して突っ込むタイミングだが、彼女を乗せているだけで安全運転になる。

「中華料理か韓国料理で……」

「その違いは?」

「子供たちが一緒だと食べられないもの、です」と、彩さんは力強く言った。

「うちの子たち、中華料理と言えば私が作る餃子かコンビニのあんかけ焼きそばくらいしか食べないんですよ。だから、外食ではまず行かないんですよね。韓国料理は辛いので、当然却下で。だから、子供たちがいないとなると、どちらかが食べたくなるんですよね」

 そう、力説する彩さんは、子供みたい。

「なるほど」

「あ、課長は何が食べたいですか?」

「んーーー。韓国料理って食べたことがないので、興味がありますね。けど、美味い店を知らないんですよね」

 信号が青に変わり、俺は車を発進させた。が、すぐに左車線に寄り、コンビニの駐車場に入った。

 シートベルトを外し、ジャケットのポケットからスマホを取り出す。
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