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13 感情のままに
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同時に、今までの彼女の血液型を知っていたか、と考えた。
一人だけ、俺と同じだと言っていた彼女がいた。が、誰だったかわからない。確か、大学の頃のことだ。
「課長はB型っぽいですけど、違います?」
「あたりです」
彩さんは嬉しそうに笑った。
「そんなに、っぽいですか?」
「はい。羨ましいです」
「羨ましい?」
「B型の人って、人当たりが良くて、人付き合いも上手だっていうじゃないですか」
「……まぁ」
「私は……そういうの下手なので」と、言った彼女は、少し寂しそうに見えた。
確かに、会社での彼女は、自分から誰かと親しくしようとはしていない。話しかけられたら愛想よく答えるけれど、それだけ。
だから、映画館で子供たちと一緒にいる時の彩さんとギャップを感じたし、惹かれた。
俺はスマホを手に取り、手早く検索した。
「B型の男とAB型の女の相性。お互いの欠点を補う良い組み合わせです。B型の男はAB型の女の普段の冷静さと内に秘めた強い感情の二面性に惹かれ、AB型の女も行動的で純粋なB型の男を支えたいと思うでしょう。問題があるとしたら、AB型の女の考え方にあり、時にB型の男を拒絶してしまうかもしれません。B型の男から出来るだけ率直な考えをAB型の女に伝えるようにすると分かり合えます」
読みながら、驚いた。
「占いなんて信じてなかったけど、すごい当たってる気がすんだけど」
顔を上げると、彩さんがキョトンと俺を見ていた。
「やっぱ、俺にしときましょうよ」
「…………」
何言ってんの、と言いたげに不思議そうな表情をしてから、彩さんが手の甲で口を押えた。
「ふっ……、ふふっ……」
「彩さん?」
どこら辺がツボにはまったのか、彩さんの笑いが止まらない。
「そんな、可笑しいですか?」
「ごめんなさい……。だって……、占いって……。はははははっ――」
バカにされたようで、本当なら恥ずかしくなるかムッとするところなんだろうが、彩さんが声を殺して笑っている姿を見たら、どうでもよくなった。
彼女が、心から笑っているのを、初めて見た。
それが、すごく嬉しかった。
セックスした時より、嬉しいかもしれない。
いや、同じくらいか。
「けど、当たってると思いません?」
「そうですね」と言って、彼女はおしぼりで涙を拭った。
涙が出るほど可笑しかったらしい。
「確かに、当たってます」
「いや、冗談抜きで。俺、会社での彩さんと子供たちといる時の彩さんのギャップ、めっちゃ好きなんですけど! 京本さんにガツンッて言ってやった時の彩さんに、かなり興奮したし――」
彩さんが顔を背け、ハッとして口を閉じた。
必死になりすぎて、店員がすぐそばに立っていることに気が付かなかった。
テーブルに料理が並ぶ。
彩さんが取り分けてくれた。
一人だけ、俺と同じだと言っていた彼女がいた。が、誰だったかわからない。確か、大学の頃のことだ。
「課長はB型っぽいですけど、違います?」
「あたりです」
彩さんは嬉しそうに笑った。
「そんなに、っぽいですか?」
「はい。羨ましいです」
「羨ましい?」
「B型の人って、人当たりが良くて、人付き合いも上手だっていうじゃないですか」
「……まぁ」
「私は……そういうの下手なので」と、言った彼女は、少し寂しそうに見えた。
確かに、会社での彼女は、自分から誰かと親しくしようとはしていない。話しかけられたら愛想よく答えるけれど、それだけ。
だから、映画館で子供たちと一緒にいる時の彩さんとギャップを感じたし、惹かれた。
俺はスマホを手に取り、手早く検索した。
「B型の男とAB型の女の相性。お互いの欠点を補う良い組み合わせです。B型の男はAB型の女の普段の冷静さと内に秘めた強い感情の二面性に惹かれ、AB型の女も行動的で純粋なB型の男を支えたいと思うでしょう。問題があるとしたら、AB型の女の考え方にあり、時にB型の男を拒絶してしまうかもしれません。B型の男から出来るだけ率直な考えをAB型の女に伝えるようにすると分かり合えます」
読みながら、驚いた。
「占いなんて信じてなかったけど、すごい当たってる気がすんだけど」
顔を上げると、彩さんがキョトンと俺を見ていた。
「やっぱ、俺にしときましょうよ」
「…………」
何言ってんの、と言いたげに不思議そうな表情をしてから、彩さんが手の甲で口を押えた。
「ふっ……、ふふっ……」
「彩さん?」
どこら辺がツボにはまったのか、彩さんの笑いが止まらない。
「そんな、可笑しいですか?」
「ごめんなさい……。だって……、占いって……。はははははっ――」
バカにされたようで、本当なら恥ずかしくなるかムッとするところなんだろうが、彩さんが声を殺して笑っている姿を見たら、どうでもよくなった。
彼女が、心から笑っているのを、初めて見た。
それが、すごく嬉しかった。
セックスした時より、嬉しいかもしれない。
いや、同じくらいか。
「けど、当たってると思いません?」
「そうですね」と言って、彼女はおしぼりで涙を拭った。
涙が出るほど可笑しかったらしい。
「確かに、当たってます」
「いや、冗談抜きで。俺、会社での彩さんと子供たちといる時の彩さんのギャップ、めっちゃ好きなんですけど! 京本さんにガツンッて言ってやった時の彩さんに、かなり興奮したし――」
彩さんが顔を背け、ハッとして口を閉じた。
必死になりすぎて、店員がすぐそばに立っていることに気が付かなかった。
テーブルに料理が並ぶ。
彩さんが取り分けてくれた。
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