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4.男としての価値
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「居場所を……くださって、感謝しています。私、悠久さんのお役に立てるの、嬉しいです。お金の為……もあるけど、それだけじゃなくて――」
「――感謝しているのは、俺の方だよ」
彼女があんまり必死になって言うから、照れてしまった。金が絡んでいるとはいえ、ここまで献身的に尽くしてくれる女性は初めてだ。
彼女に見つめられると、触れられると、勘違いしそうになる。
彼女が俺の世話をするのは、居場所がないからで、仕事でもあって、義理とは言え弟だからであって、それ以上の感情なんかない。
わかっているのに、勘違いしたくなる。
それだけじゃないんじゃないか、って。
それだけじゃなきゃいいのに、って。
一昨日読んだ小説のせいかもしれない。
天涯孤独の男が戦争に赴き、仲間を失って帰国する。自身も片腕を失い、死んだ仲間の姉の世話になることになる。男は献身的な女性を愛するようになるが、弟を守れなかった自分を恨んではいないのだろうかと怖くて告げられない。そうしているうちに、女性が病気になってしまう。女性は迷惑をかけられないと男の元を去ろうとするが、男は彼女を引き留め、今度は自分が面倒を見る。最後には想いが通じ合い、彼女がなくなるまでの数年間を夫婦として過ごすのだが、要するに、誰しも愛される資格があって、『無償の愛』ほど崇高なものはない、といった趣旨。
戦争ものだと思って読み始めたら、後半はとにかくじれったい恋愛もので、普段は恋愛ものを読まない俺だが、結末が気になって一気読みしてしまった。
作中で、女性が言う。「片腕でも私を抱き締められるでしょう? 足りなければ私が両手で抱き締めてあげる。だから、その片腕に、その命に感謝しましょう」と。
その言葉に、感動した。
そこまで愛されている男が、羨ましかった。
事故に遭う前の俺ならば、「いかにも女が好きそうな綺麗ごとだな」なんて鼻で笑っただろう。
けれど、今は、楽の俺への感謝が愛に変わったりしないかな、なんて思ったりする。
「ずっと、いてよ」
「え?」
手の中の彼女の温もりを握り返す。
「ずっと、一緒にいてよ」
「……」
返事に困って、彼女は唇を結んだまま。それでも、俺から視線を逸らすことはない。
「楽との生活、楽しいんだ」
彼女が逃げてしまわないように、力を込めて彼女の手を握る。
「あの家で、きみと、ずっと一緒に暮らしたい」
たった二週間一緒に暮らしただけなのに、あの家には楽の気配が染みついていて、その気配を感じるだけで安心できる。介護なんて名目でも彼女に触れられると、反応しないはずの俺の男の証が疼く気がする。
こんな感情に名前を付けるなら、それは一つしかない。
「きみが好きだ」
「――感謝しているのは、俺の方だよ」
彼女があんまり必死になって言うから、照れてしまった。金が絡んでいるとはいえ、ここまで献身的に尽くしてくれる女性は初めてだ。
彼女に見つめられると、触れられると、勘違いしそうになる。
彼女が俺の世話をするのは、居場所がないからで、仕事でもあって、義理とは言え弟だからであって、それ以上の感情なんかない。
わかっているのに、勘違いしたくなる。
それだけじゃないんじゃないか、って。
それだけじゃなきゃいいのに、って。
一昨日読んだ小説のせいかもしれない。
天涯孤独の男が戦争に赴き、仲間を失って帰国する。自身も片腕を失い、死んだ仲間の姉の世話になることになる。男は献身的な女性を愛するようになるが、弟を守れなかった自分を恨んではいないのだろうかと怖くて告げられない。そうしているうちに、女性が病気になってしまう。女性は迷惑をかけられないと男の元を去ろうとするが、男は彼女を引き留め、今度は自分が面倒を見る。最後には想いが通じ合い、彼女がなくなるまでの数年間を夫婦として過ごすのだが、要するに、誰しも愛される資格があって、『無償の愛』ほど崇高なものはない、といった趣旨。
戦争ものだと思って読み始めたら、後半はとにかくじれったい恋愛もので、普段は恋愛ものを読まない俺だが、結末が気になって一気読みしてしまった。
作中で、女性が言う。「片腕でも私を抱き締められるでしょう? 足りなければ私が両手で抱き締めてあげる。だから、その片腕に、その命に感謝しましょう」と。
その言葉に、感動した。
そこまで愛されている男が、羨ましかった。
事故に遭う前の俺ならば、「いかにも女が好きそうな綺麗ごとだな」なんて鼻で笑っただろう。
けれど、今は、楽の俺への感謝が愛に変わったりしないかな、なんて思ったりする。
「ずっと、いてよ」
「え?」
手の中の彼女の温もりを握り返す。
「ずっと、一緒にいてよ」
「……」
返事に困って、彼女は唇を結んだまま。それでも、俺から視線を逸らすことはない。
「楽との生活、楽しいんだ」
彼女が逃げてしまわないように、力を込めて彼女の手を握る。
「あの家で、きみと、ずっと一緒に暮らしたい」
たった二週間一緒に暮らしただけなのに、あの家には楽の気配が染みついていて、その気配を感じるだけで安心できる。介護なんて名目でも彼女に触れられると、反応しないはずの俺の男の証が疼く気がする。
こんな感情に名前を付けるなら、それは一つしかない。
「きみが好きだ」
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