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7.再会
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「間宮くんが事故に遭ったこと、定食屋さんのおじさんに聞いたの。私は帰った後で……」
楽の言う場所にある定食屋ならば、事故の騒ぎを聞きつけたろう。目撃者から、被害者が俺だと聞いたかもしれない。だから、それを楽が聞いても不思議はない。
が、問題はそこじゃない。
「楽、どうしてそんなところで働いていた?」
「……」
「俺が萌花から聞いた話じゃ、事故を知って楽から俺の世話を買って出たって。本当? 萌花は、楽が俺の世話の為に離婚までしたみたいに言ってたけど?」
「……それ……は……」
楽は気まずそうに視線を彷徨わせ、俯く。
色々と、食い違っている気がする。
萌花の話と、事実。
「本当のこと、知りたい」
そう言うと、楽がキュッと唇を噛んで、離して、顔を上げた。唇が、少し赤くなっている。
「ス、ストーカー……って思われたくなくて……」
ギクッとした。
萌花の話を聞いた後、そんなことを思ったから。
「本当は、一年前に離婚してたの。けど、誰にも言えなくて、一人暮らししながら定食屋さんで働いてたの」
「え――?」
「間宮くんの……会社だって、知ってた。ホントは、間宮くんのことを知ってから、時々……会社のそばのカフェに行ったりしてて……」
「なんで……」
「ほんの少しでも……顔を見れたらいいなって……思って……。離婚した後もそんな風にカフェに通ってたら、定食屋さんがアルバイトを募集してるって知って……。お店から……ちょうど、建物の隙間を縫って、間宮くんの会社の正面玄関が見えるの。だから……。ごめんなさい。気持ち悪いよね」
ストーカー、だと言う人もいるかもしれない。
俺だって、こんな風に再開する前ならそう思ったかもしれない。
だけど、俺に接触してきたわけじゃない。
ただ、見ていただけ。
俺は、楽のその気持ちが嬉しかった。
「どうして? 俺を想ってくれてたんでしょ? 嬉しいよ」
他の女にされたら、気持ち悪いと思ったかもしれない。が、他でもない、楽だ。
楽の行動より、そう行動するに至った気持ちを大事にしたい。
楽は目に涙を浮かべ、唇を震わせた。
「事故のことを知って……萌花に……電話した。……けど、よくわからなくて……。ニュースにもなっていなかったし、私……心配で……、何度も萌花に電話したの。生きてるってわかって、本当に――っ嬉しかっ――」
彼女のコーヒーに波紋が広がる。次々と。
俺はゆっくりと、出来るだけ素早く立ち上がり、テーブル伝いに楽に近づいた。
彼女の顔は涙でぐしょぐしょで、俺はスウェットの袖でそれを拭った。
「来て」
彼女の手を取り、俺はソファへと移動した。
悲しいことに、座っている楽を中腰で抱き締められるほど、足に力が入らない。
俺がソファに座り、足の間に楽を座らせる。彼女に足をソファに上げるように言って、横向きになった彼女を抱き締めた。
楽は戸惑っていたが、彼女の顔を見て話がしたかったし、俺を跨ぐように座る方が、楽は抵抗すると思った。
楽の言う場所にある定食屋ならば、事故の騒ぎを聞きつけたろう。目撃者から、被害者が俺だと聞いたかもしれない。だから、それを楽が聞いても不思議はない。
が、問題はそこじゃない。
「楽、どうしてそんなところで働いていた?」
「……」
「俺が萌花から聞いた話じゃ、事故を知って楽から俺の世話を買って出たって。本当? 萌花は、楽が俺の世話の為に離婚までしたみたいに言ってたけど?」
「……それ……は……」
楽は気まずそうに視線を彷徨わせ、俯く。
色々と、食い違っている気がする。
萌花の話と、事実。
「本当のこと、知りたい」
そう言うと、楽がキュッと唇を噛んで、離して、顔を上げた。唇が、少し赤くなっている。
「ス、ストーカー……って思われたくなくて……」
ギクッとした。
萌花の話を聞いた後、そんなことを思ったから。
「本当は、一年前に離婚してたの。けど、誰にも言えなくて、一人暮らししながら定食屋さんで働いてたの」
「え――?」
「間宮くんの……会社だって、知ってた。ホントは、間宮くんのことを知ってから、時々……会社のそばのカフェに行ったりしてて……」
「なんで……」
「ほんの少しでも……顔を見れたらいいなって……思って……。離婚した後もそんな風にカフェに通ってたら、定食屋さんがアルバイトを募集してるって知って……。お店から……ちょうど、建物の隙間を縫って、間宮くんの会社の正面玄関が見えるの。だから……。ごめんなさい。気持ち悪いよね」
ストーカー、だと言う人もいるかもしれない。
俺だって、こんな風に再開する前ならそう思ったかもしれない。
だけど、俺に接触してきたわけじゃない。
ただ、見ていただけ。
俺は、楽のその気持ちが嬉しかった。
「どうして? 俺を想ってくれてたんでしょ? 嬉しいよ」
他の女にされたら、気持ち悪いと思ったかもしれない。が、他でもない、楽だ。
楽の行動より、そう行動するに至った気持ちを大事にしたい。
楽は目に涙を浮かべ、唇を震わせた。
「事故のことを知って……萌花に……電話した。……けど、よくわからなくて……。ニュースにもなっていなかったし、私……心配で……、何度も萌花に電話したの。生きてるってわかって、本当に――っ嬉しかっ――」
彼女のコーヒーに波紋が広がる。次々と。
俺はゆっくりと、出来るだけ素早く立ち上がり、テーブル伝いに楽に近づいた。
彼女の顔は涙でぐしょぐしょで、俺はスウェットの袖でそれを拭った。
「来て」
彼女の手を取り、俺はソファへと移動した。
悲しいことに、座っている楽を中腰で抱き締められるほど、足に力が入らない。
俺がソファに座り、足の間に楽を座らせる。彼女に足をソファに上げるように言って、横向きになった彼女を抱き締めた。
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