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13.結婚指輪
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しおりを挟む夫婦として暮らし始め、あっと言う間にひと月が過ぎた。
俺たちはどこへ行くにも、何をするにも一緒だった。
一緒に寝て、起きて、一緒に食事をして、一緒に買い物に出る。近所のカフェに行ったり、公園を散歩するのも一緒。掃除をするのも食事を作るのも一緒だ。もちろん、風呂に入るのも。
普通の恋人なら、ウザいレベルだろう。
だが、俺も楽もそんな風には思わなかった。
愛し合っているから片時も離れたくない、と言えば美しいが、実際はそんなに綺麗なものじゃない。
とにかく、このひと月で、楽と別行動をしたのはこれが初めてだった。
『会長は血眼になって探しているようです』
唯一、連絡を取っている岡谷弁護士が言った。
『社長の退任が噂になっているようです。親子の確執だの派閥闘争だのと、面白おかしく。そのせいで、明堂貿易の株価が下がり続けているんです。早く後継者問題を解決して、株価を安定させたいのでしょうね』
「そうですか」
『征子さんは征子さんで、常務を社長に据えようと必死なようです。征子さんが一部の重役を集めて食事会を開いていることが、社員の間でも噂になっていますから』
親父は征子さんの動向を把握しているのだろうか。
知っていて、俺を探しているのだろうか。
要は社長の器じゃない。
が、可愛い我が子のはず。
愛人の子である俺なんかより、社長に据えたいと思って当然のはずだ。
『社長は体調不良による療養のために不在で、副社長が社長代理を務めている。ということになっていますが、いつまで隠し通せるか』
楽と離れていた二か月間。
俺は副社長の下で学んでいた。
その時点で、社内では明堂家内で後継者争いが起こっているのではと噂になった。
俺と副社長が、社長を引きずり降ろそうとしている、と。
そのさ中に俺が消え、社長も不在となった。
社内の混乱は当然だ。
俺には関係ないと開き直ってしまえば良いのだろうが、仕事自体は好きだっただけに、心苦しい。
『それはさておき、奥様のことですが』
「はい」
俺は周囲を見回す。
平日の昼間に通りを歩いているのは、ランチ帰りの主婦や、仕事中のサラリーマン。
ザクザクと雪を踏み潰しながら、確かな足取りで去って行く。
東京の人間は、滑らないように転ばないようにとゆっくり歩くのが精いっぱい。
『やはり、出生後でなければ父子関係否認手続きは出来ないようです』
「……そう、ですか」
吐いた息が、綿毛のようにゆらゆら揺れながら上ってゆく。
参考になりそうな書き込みを片っ端から読んだが、胎児のDNA鑑定をして父子関係がないことを確認はできるが、法的な手続きは、子供が生まれてからでなければ出来ないらしい。
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