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16.別れ、新しい出会い
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しおりを挟む『東京に戻って来ないかい?』
私はマウスを持つ手を止めた。
買って間もないノートパソコンの横に置かれたスマホに視線を向ける。
『修平さん』の文字と、赤いスピーカーのマーク。
『独りは寂しいだろう? 楽の両親も探すのをやめたようだし、大丈夫だよ』
修平さんは私を逃がした後、私の父親と会っていた。
離婚の非は自分にあると頭を下げてくれた。
そして、復縁については浩一くんの気持ちも考えながら、ゆっくりと話し合っていくとも言った。
もちろん、それは全て私が家に連れ戻されないために修平さんが考えたシナリオで、復縁の話なんてない。
それでも、しばらくは調査員を動かしていたようだった。
「ありがとうございます。だけど、札幌での暮らしにも慣れてきたので」
東京には帰りたくなかった。
どうしたって、悠久を探してしまう。
忘れたいわけじゃない。
ただ、大事にしたい想い。
『楽?』
「はい」
『……いや。来週末の三連休に浩一と遊びに行ってもいいかい? 浩一が、札幌の味噌ラーメンを食べたいと言ってね』
前に会った時の、お寿司を頬張る浩一くんを思い出し、口元が緩む。
あの時は根室にいて、新鮮な海の幸に大興奮だった。
「いいですね、ラーメン」
『飛行機の予約をしたら、また連絡するよ』
「はい」
『戸締りはしっかりするんだよ』
「はい」
『何かあったらいつでも電話するように』
「はい」
『寂しいとか暇だとか、そんな理由でもいいからね』
修平さんの口調がまるで子供に言い聞かせるようで、フフッと声が漏れた。
『お父さんみたい、とか思っているんだろう?』
修平さんの声もまた、ほんの少し笑みを含んでいる。
「心配してくれるお父さんを知らないけれど、きっとそんな感じでしょうね」
『そうかもしれないね。だけど、お父さんは嫌だな』
「そうですよね。ごめんなさい」
『うん。俺も男だからね』
男……?
修平さんらしくない台詞に、スマホをじっと見つめる。
『じゃあ、また』
「あ……、はい。おやすみなさい」
『おやすみ、楽』
彼から電話を切られ、スマホのディスプレイが勝手にホーム画面に戻る。
誕生日に悠久から貰ったバラの花束と指輪の写真。
指輪はケースにしまって今も持っているけれど、ピンクのバラはとうにドライフラワーになっている。
今の私みたい……。
鮮やかな色で咲き誇っていた頃は、悠久のそばで愛されて幸せだった。
色を失い、吹けば飛ぶような脆さでも、花であろうと必死にしがみつく姿は、滑稽だ。
この部屋を出るべきかもしれない。
悠久が追いかけてきてくれると期待して居座り続けては、何のために身を裂かれる思いで別れたかわからない。
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