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16.別れ、新しい出会い
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しおりを挟む『悠久はきみと別れるくらいなら、愛人でも構わないそうだ』
きっと、すごくねじ曲がった解釈だと思う。
けれど、どんな言い方をしても同じだ。
私は悠久に愛されている。
愛人としてでもそばに置き続けたいと求められている。
わかっている。
わかっているけれど、明堂さんの言葉に胸の奥の初恋の記憶が黒く塗り潰されていくようだった。
悠久が私を探すために修平さんを頼るだろうことは予想できた。だから、修平さんに頼んでおいた。
心の準備が整うまで時間を稼いで欲しい、と。
明堂さんからの電話の後すぐに、修平さんが会いに来てくれた。
私が思い詰めていないかと心配し、東京に戻っておばあちゃんの家に来るように言ってくれたけれど、悠久との関係が曖昧なまま、それは出来ないと思った。
私は札幌の、悠久と暮らしたウィークリーマンションに戻った。
部屋は、悠久と手を繋いで出た時のまま。
夜には帰るつもりで出たまま。
部屋を喚起して、掃除をして、冷蔵庫の中の物を処分して、買い物に出た。
悠久と歩いた道。
悠久と買い物をしたスーパー。
悠久と寄り道したカフェ。
幸せな時間をなぞるように、過ごした。
悠久が私を待っている。
修平さんから聞かされても、会いに行く気になれずにいたのに、一か月後、何かにとり憑かれたように、東京に向かった。
留守だった悠久の帰りを待ち続け、ようやく帰った悠久は屈強な男性に守られていた。
それでも、私を見るなり抱き締めてくれた。
冷え切った身体を、心を暖めてくれた。
彼に抱かれて目覚めた朝。
私の心は決まった。
理由なんてない。
ただ、決まったのだ。
「――嫌いになりたくないから、別れよう」
独りで間宮家を出た時、涙は止まっていた。
青空が眩しくて、目を細めた。
これで、悠久を愛し続けられる。
私のしたことは、悠久には裏切りだろう。
ずっと一緒にいると約束したのに、逃げたのだから。
一緒にいたかった。
けれど、一緒にいたら、いつか、萌花の元へゆく悠久を恨む時がくる。
行かないでと、縋ってしまう時がくる。
愛せなくなる時が、くる。
それだけは嫌だった。
駅までの道を歩く。
顔を上げて。
初めて悠久の家に行った帰り道を思い出す。
お母様とお祖母様に紹介してもらえて、嬉しかった。
初めてのキスが、嬉しかった。
繋いだ手が、嬉しかった。
「間宮くん……」
幸せな思い出を忘れまいと、私は呟いた。
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