繰り返しの世界で貴方に捧げる物語 ~サンテス王国の黒き番人~

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1章 白き貴公子と黒き皇帝との出会い

1-17 貴方に花を、絶望を

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 ディノから可愛らしい花束を渡された。
 なぜかボボからは大きめの花を髪の毛につけられたが。

「、、、クエド帝国の飛竜は花を人にあげる習慣でもあるんですか?」

 ルーシェが竜舎の世話担当に尋ねた。

「ディノがルーシェ殿の鞍を傷つけてしまった代わりの品物なのではないでしょうか。ボボは、、、対抗意識では?」

 そうなの?とルーシェが聞いても、ボボはふいーと竜舎の外に出ていってしまった。
 飛竜に関係する者たちはディノの顛末を説明されたが、ルーシェに対して今後の会話においても謝罪の言葉を一切言ってはならないと言及された。
 ディノが謝罪として花束を用意したというのもNG。

 言い回しが変になろうとも言ってはならない。

「でも、嬉しいな。花なんてもらったことなかったから」

「サンテス王国では贈り物に使わないのですか」

「サンテス王国では花を贈るのは恋人や婚約者、配偶者に、というのが多いようだけど」

「クエド帝国でもそうですが、友人や家族の誕生日やお祝いにも差し上げたりしますよ。ちょっとした、、、」

 ちょっとした謝罪にも使うと言おうとして、世話担当はとめる。

「ささやかな良いことがあったときにも家に飾ることがありますね」

 ボロがそれ以上でない内に、世話担当は掃除用具を持って違う場所にそそくさと移っていく。


 ルーシェは宰相トトからディノがボボの鞍を壊したという報告を受けた。
 宰相さんはスマートに謝罪の言葉を語らず、報告に徹する。
 ディノは償いとして、警備隊に容疑者として捕まってしまっていたジュー・ゼンを背に乗せるということになった。

 トトはクフィールが真犯人を摘発し、皇帝としてうまくまとめたという美談にしてルーシェに伝えたのだ。
 皇帝陛下すごいっ、とルーシェのクフィール株がさらに爆上がりしてしまったが、宰相さんにとっては計算のうちだろう。

 ただこれだけだと、鞍を傷つけられたルーシェに対しては何もされていない。
 だからこそ、宰相さんは新しい鞍を皇帝から贈るという約束をルーシェに取り付けた。
 今、ボボが使っている鞍はボボに合わせて作られたものではない。
 きちんと採寸されて作られた鞍は軽いだけでなく動きやすく、ボボのためになると言い含めて。




「頭に花をつけて、どうしたんだ?」

 訓練場にいたジュー・ゼンは驚いた顔だ。

「え、ああ、ボボがつけてくれて。ボボがこっちに来なかっただろうか?」

 ルーシェはボボの体を洗いに来たのに、ルーシェに花を挿して去っていってしまったボボ。
 竜舎のボボの一室を綺麗にしてから追いかけてきた。

 指摘されたのに花はつけたままなのかよ、というツッコミしてほしいのかな?

 ルーシェにとっては、ボボの体を洗うのだから、洗うまではつけておこうという考えである。
 うん、モテ思考である。
 モテ男は喜んでいることを身体で示すものである。
 プレゼントしたものを使ってもらえるのって嬉しいよね。
 それを自分の飛竜にも実践するルーシェ。

「えっと、あの、ルーシェ殿、、、」

 しどろもどろと切り出すジュー。
 つい大きな花に驚いて声をかけてしまったが、何を語ればいいのか。
 ディノがジューを乗せてくれるようになったのは皇帝陛下が命令したからであって、ルーシェの要望ではない。
 飛竜を従わさせる皇帝陛下すごいっというジューの評価は置いといて。

「俺は、ジュー・ゼンだ。鞍を壊したのが俺、、、私ではないかと疑いをかけられたが、皇帝が取りなしてくれて助かった。私は竜騎士見習で見習のままだと異動になるまでもう一年もなかった。事件での縁となったが、貴方を気に入っているディノに乗れることも何かの縁だと思う。このクエド帝国について俺も教えるから、もしよければ飛竜のことをいろいろと教えてくれないだろうか」

 結局、ジューは慌てているので俺と私が混じっているし、結局俺になった。
 顔は真っ赤でまるで告白しているかのよう。けれど、ジューにはそれぐらいの勇気が必要な行為だったのである。

 ルーシェはほんの少し驚いた表情になったが。

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 爽やかなキラキラな笑顔で返した。

「うっ、コレが白き貴公子の力かっ」

 浄化されるのかな、ジューは。
 ジューの目にはルーシェが眩しく映る。
 白き貴公子というあだ名?愛称?呼び名はすでに皇城でも広まっている。
 サンテス王国での白き貴公子は、クエド帝国でも健在だ。

 ジュー・ゼンが救われたのなら、この物語はいつもとは別の方向へと流れてくれるだろう。
 ルーシェの闇に飲まれそうな危うさはまだまだ内在しているが、皇帝さんが何とかしてくれるはずだ。

 だって、皇帝さんは私なしではいられないカラダになったのだから。

 ん?どこからか、誤解を招く発言はするなという声が聞こえてくるが、この世界で語り部さんの声が届くのは今のところ皇帝さんしかいないのだから心配しても意味ない気もする。

 宰相さんが闇の儀式に手を出しそうな勢いだが、語り部さんは闇属性じゃないのでコレもまた意味ないから、皇帝さんとめてあげてね。

「あ、ボボは訓練場の水場に行ったぞ」

「ありがとう、ジュー」

 ルーシェが去っていった後、ジューがその場に膝をついていた。
 周囲の目はちょっと冷ややかだぞ。
 お前のストーカー疑惑の方は晴れてないんだからな。

「な、なんだ、あの破壊力、、、」

 自分に向けられる輝く笑顔があんなにも尊く映るとは。

 ジュー、相手が悪い。
 親切な語り部さんが忠告してやる。
 自覚する前に諦めろ。友人でいろ。
 ルーシェが惚れている皇帝さんに対抗できるわけがない。
 今回のあの人、人間やめているんじゃないかって思えるし。

 、、、語り部さんのありがたい忠告も、ジューには聞こえてないけど。





 皇帝さん、大変だったみたいだね。
 まだ肩で息しているよ。

「何だ、あの闇の儀式ってヤツは。全力でとめたぞ」

 人をやめている疑惑がある皇帝さんが全力でとめないととまらない宰相さん。恐るべし。
 宰相さんには少々頭を冷やして来いと医務室に連れて行き、皇帝さんは一人で執務室にいる。

「お前は何がしたい?お前がしていることはルーシェ・シルコットをこのクエド帝国に引き止めるだけの行為だぞ」

 その通りだよ。
 皇帝さんは、今までの語り部さんの話ちゃんと聞いてた?
 ルーシェ・シルコットがサンテス王国に戻らない歴史はない。
 クエド帝国に居続けるだけでも、未来は変わる。

 あ、皇帝さん、冬季休暇が終わってもルーシェをサンテス王国に帰しちゃダメだよ。
 一度帰したらこっちに戻って来ないよ。
 向こうでもいろいろあるからねえ。ルーシェは巻き込まれるよ。

「ルーシェはあっちの貴族学校をまだ卒業してないだろ」

 クエド帝国では、ルーシェがあの貴族学校を卒業して何か意味あるの?

「何もないっ」

 断言したな。
 だが、その通り。
 なら、返さなくてもいいじゃん。二人の婚礼の準備で忙しいので、とか言って。

「ルーシェはどうなんだ。首席卒業というのは、普通なら誇りとするところだろ」

 サンテス王国に居続けるならね。
 あの貴族学校の卒業は金で買える。
 必要なことだから二度言おう、卒業は金で買えるんだ。
 命は金では買えないぞっ。

「、、、貴族学校だから、事情が事情なら卒業したとしてくれるのだろう。それはわかるが、試験を受けなければ首席卒業はない」

 首席にこだわってしまえば。
 ただ、もう一度言うけど、命は金では買えない。

「ルーシェが国に戻ったからといって、急に死ぬことはないのだろう?」

 皇帝さんは肉体が生存してさえいれば満足なのか。
 精神が死ねば、肉体は生きる屍だ。
 どうにもならない。


 ルーシェはシルコット公爵家に散々放置されてきたのだから、今度はルーシェが彼らを放置してもいいんじゃない?
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