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10章 秋休みは稼ぎ時
10-3 社畜ですね
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冒険者ギルド総本部の広い玄関には受付カウンターがあり、二人の職員が座っていた。
それだけと言えばそれだけだ。
通常の冒険者でたむろする冒険者ギルドとは違う雰囲気がある。
前世で知る大きい企業の受付みたいな感じ。
カウンターの後ろには大きい絵画も飾られている。
さすが冒険者ギルドの頂点。重厚な受付だ。
しかも、玄関の扉には開閉するドアマンもいる、、、ドアマンって認識で良いのか?警備員なのかもしれない。服装は冒険者のようではなく、職員の制服をより上等にしたようなものだ。
ここは総本部、要人を迎えることもあるのかもしれない。
ズィーさんとゴウさんは当たり前のように玄関を通り過ぎる。
俺たちはここで働く人に誰にも紹介されていないが、明日、ここに入ろうとして警備の人にとめられるってことはないかなー?
ありそうで怖い。
宿泊施設もこの建物にあると言っていたが、深夜に冒険者ギルドの深部をうろつかれても困るだろうし、泥棒と間違われて拘束されるのも嫌だ。夜ぐらいは外の宿屋でのんびりしていた方が良い。
俺たちも外に出る。
光が眩しく目を細める。
「コレが大都市か、、、」
素直な感想が俺の口から漏れた。
この世界の大都市。
前世での近代的な大都市とはまた違った趣。
、、、チラホラ見える前衛的な建物の趣向は似ている気がするけど、こちらは魔法の力でなんとかしているに違いない。
それでも、ああいう建物に住みたいとは思わないけど。
いや、住居ではないか。さすがに客寄せのための商業施設とかだろう。こんな大通りに面している建物ならば。
冒険者ギルドの玄関扉の外側の両脇にも中にいたドアマンと同じ服装をした者が立っていた。
ズィーとゴウの二人にお辞儀をして扉を閉めている。
玄関アプローチに広い階段があるので、周囲を眺める。
前に広がる大通りも、かなり広い。
前には馬車をとめるスペースもあるが、屋台も多く並んでいる。
庭園とか敷地を示す柵とかないのは、この大通りにある建物は個人の住居ではないのだろう。
マンションとかはあるかもしれないが、多くは商業施設や商会、役所や銀行等の建物と思われる。
全体的にこの大通りに並ぶのは豪華な建物である。
それでも、庶民的な服装の者たちも多く歩いている。
屋台で買っていたり、小さな露天商で物色もしているが、建物内を行き来している者もいる。格安な物を販売している店もあるのだろうか。
大通りの中央の方は馬車が何列にも並んで走っているので、向こう側に渡るのは至難の業だ。
信号や横断歩道はないのか?
「うんうん、感動してくれて嬉しいよ。いつもの死んだ目でさっさと隣の宿屋に行かれたら少し悲しかったよ」
ズィーさんが感慨深げに頷く。
感動していたように見えたのか。
死んだ目、というのは深く突っ込まない。
隣の宿屋と言われたが、左右どちらの建物か聞いてないので、さっさとは行けないなあ。
階段を降りて振り返る。
冒険者ギルド総本部の建物はかなりデカい。
威圧感はバッチリだ。
どれだけの人間がこの建物内にいるのか想像もできない。
隣の建物の玄関までも遠いと言えば遠いが、隣の建物としては遠いというだけで、砦や校舎を移動していると思えば、そこまでと思えるほどの距離でもない。
「こちらが予約している宿だよ」
ズィーさんが指し示す建物には扉までの階段はなく、ドアマンらしいドアマンが大きい扉を開ける。
こちらの宿屋の建物も相当大きい。
コンドミニアムと言われた時点で気づくべきだったが、四部屋も寝室がある時点で大きい宿屋、、、豪華ホテルだと。
ホテルの玄関から豪華だ。絨毯から調度品まで良い品物を揃えている。
こんなところに置いてあって盗まれないのかな、と心配するレベルだ。
「ズィー様、いらっしゃいませ。お部屋の準備はできております」
ズィーさんはフロントにスッとカードキーを数枚渡されている。
この世界にもカードキーがあるんだな。
フロントが顔を覚えている時点で、冒険者ギルド総本部はこのホテルを良く使うと推測できる。
隣だし、使い勝手は良いだろう。
「ズィーさんやゴウさんはこの近くに住んでいるんですか?」
「実は冒険者ギルド総本部の裏の建物は職員用の宿舎だ。この街の中心部の家賃はかなり高いから、多くの職員はそこを利用しているし、時間外の突発的な出来事も仕事柄多いから呼びやすい」
「ああ、近い方がトラブルに対処するのも早いと。。。」
社畜だな。
完全に社畜だな。
「総本部の建物内にも宿泊施設があるとは言っても、同じ建物内でバタバタすることがあるからね。夜に落ち着かないのも嫌だろ?しかも、守秘義務があるのは説明するわけにもいかないから、文句を言ったところで、ということになる」
ズィーさんが通路の脇にある壁のボタンを押した。
「へえ、このホテルにはエレベーターがあるんですね」
魔法があれば電気がなくともエレベーターを作るのも無理はない。
けれど、クジョー王国では見ることはなかった。
魔法で作る技術がないか、魔石がもったいないかどちらかか?
けれど、さすが大国の首都。豪華ホテルならお値段の問題なく備え付けられる。
というか、このホテルはかなりの階数だ。外から見たとき冒険者ギルドの建物を軽ーく超えていた。
毎日、階段で昇り降りするのはきつい。
各国の要人なら余計に辛いんじゃないかな。
五階くらいなら許容範囲かなーと思うけど、この大都市の建物は恐ろしいぐらいの高さがあった。
観光地で一度行くくらいならともかく、生活の場にはしたくない。
「、、、リアムはエレベーターを知っているの?」
「はい」
うん?
「コレ、部屋の鍵だからなくさないようにね。部屋番号は三〇二だよ」
「ありがとうございます」
エレベーターを待っている間に、ズィーさんから俺たちは各自カードキーを渡される。
全員に部屋の鍵があるのって楽だよね。
カードキーだから外出のたびにフロントに預けなくてもいいはずだ。
ズィーさんは外のボタンを押して、全員がエレベーター内に入るのを待っている。
荷物もあるのを見越してか、このエレベーターの内部はエレベーターとして広い。
俺はボタンを見る。
エレベーターに乗るのも久々だな。そりゃそうだ、前世以来だ。
三〇二だから三階のボタンをポチリ。
あ、明かりが点かない。
ふと気づく。カードキーを差し込む隙間のようなものがある。
海外ホテルのエレベーターのようなものか。
カードキーを差し込んで、三階のボタンを押すと明かりが点いた。
うん?
ズィーさんにじっと見られている気がするんですけど。
エレベーターから降りると、三〇二の部屋はすぐに見つかる。
コンドミニアムで部屋数が多いから、隣の部屋までかなり遠い。向かいの部屋もあることにはあるが、扉はそれぞれ離れている。
コレもカードキーを差し込む型だ。
開閉の明かりはついていないが、ガチャリと鍵が外れる音がした。
扉を開けると。
「おお?」
玄関があり、通路の先の扉を開けると居間か?ソファやテーブル等の寛ぐための家具が備わっている。
扉を開けていくと、カウンターキッチンのようなものがあるわけではなく、きちんとしたキッチンが独立して存在している。そして、食事を食べる部屋、食堂もある。。。
トイレや浴室等の水やお湯が流れるかを確認して、タオルやアメニティセットをチェックする。
寝室が四部屋あるが、それ以外に執務室のような机が存在する部屋もある。
流れるように、お部屋チェック終了。
カメラがあれば、旅の記録として部屋の写真を撮ってから荷物整理になるところなんだけど。
どれだけお高いんでしょうね、この部屋。
とりあえず、寝室はどう決めるー?荷物を置いちゃいたいよねー。
「リアム、慣れてるね」
「何がですか?」
「部屋の確認とかいろいろと」
ズィーさんの指摘に自分の行動を振り返る。
何か、おかしかった?
彼の細い目がおかしいと言っている。
そう、前世の行動としてはおかしくないことに気づいた。
前世で見慣れたものだから、普通に確認してた。
ここのトイレは洋式で水洗だ。普通にレバーを引いていた。
浴室は浴槽とシャワーがついているタイプである。クジョー王国ではシャワー自体存在しない。
すでに温水が出るかどうか確認済みである。
うん、クジョー王国から出たことのない人間がやるには、不思議なほど手慣れている行動だった気がする。
それだけと言えばそれだけだ。
通常の冒険者でたむろする冒険者ギルドとは違う雰囲気がある。
前世で知る大きい企業の受付みたいな感じ。
カウンターの後ろには大きい絵画も飾られている。
さすが冒険者ギルドの頂点。重厚な受付だ。
しかも、玄関の扉には開閉するドアマンもいる、、、ドアマンって認識で良いのか?警備員なのかもしれない。服装は冒険者のようではなく、職員の制服をより上等にしたようなものだ。
ここは総本部、要人を迎えることもあるのかもしれない。
ズィーさんとゴウさんは当たり前のように玄関を通り過ぎる。
俺たちはここで働く人に誰にも紹介されていないが、明日、ここに入ろうとして警備の人にとめられるってことはないかなー?
ありそうで怖い。
宿泊施設もこの建物にあると言っていたが、深夜に冒険者ギルドの深部をうろつかれても困るだろうし、泥棒と間違われて拘束されるのも嫌だ。夜ぐらいは外の宿屋でのんびりしていた方が良い。
俺たちも外に出る。
光が眩しく目を細める。
「コレが大都市か、、、」
素直な感想が俺の口から漏れた。
この世界の大都市。
前世での近代的な大都市とはまた違った趣。
、、、チラホラ見える前衛的な建物の趣向は似ている気がするけど、こちらは魔法の力でなんとかしているに違いない。
それでも、ああいう建物に住みたいとは思わないけど。
いや、住居ではないか。さすがに客寄せのための商業施設とかだろう。こんな大通りに面している建物ならば。
冒険者ギルドの玄関扉の外側の両脇にも中にいたドアマンと同じ服装をした者が立っていた。
ズィーとゴウの二人にお辞儀をして扉を閉めている。
玄関アプローチに広い階段があるので、周囲を眺める。
前に広がる大通りも、かなり広い。
前には馬車をとめるスペースもあるが、屋台も多く並んでいる。
庭園とか敷地を示す柵とかないのは、この大通りにある建物は個人の住居ではないのだろう。
マンションとかはあるかもしれないが、多くは商業施設や商会、役所や銀行等の建物と思われる。
全体的にこの大通りに並ぶのは豪華な建物である。
それでも、庶民的な服装の者たちも多く歩いている。
屋台で買っていたり、小さな露天商で物色もしているが、建物内を行き来している者もいる。格安な物を販売している店もあるのだろうか。
大通りの中央の方は馬車が何列にも並んで走っているので、向こう側に渡るのは至難の業だ。
信号や横断歩道はないのか?
「うんうん、感動してくれて嬉しいよ。いつもの死んだ目でさっさと隣の宿屋に行かれたら少し悲しかったよ」
ズィーさんが感慨深げに頷く。
感動していたように見えたのか。
死んだ目、というのは深く突っ込まない。
隣の宿屋と言われたが、左右どちらの建物か聞いてないので、さっさとは行けないなあ。
階段を降りて振り返る。
冒険者ギルド総本部の建物はかなりデカい。
威圧感はバッチリだ。
どれだけの人間がこの建物内にいるのか想像もできない。
隣の建物の玄関までも遠いと言えば遠いが、隣の建物としては遠いというだけで、砦や校舎を移動していると思えば、そこまでと思えるほどの距離でもない。
「こちらが予約している宿だよ」
ズィーさんが指し示す建物には扉までの階段はなく、ドアマンらしいドアマンが大きい扉を開ける。
こちらの宿屋の建物も相当大きい。
コンドミニアムと言われた時点で気づくべきだったが、四部屋も寝室がある時点で大きい宿屋、、、豪華ホテルだと。
ホテルの玄関から豪華だ。絨毯から調度品まで良い品物を揃えている。
こんなところに置いてあって盗まれないのかな、と心配するレベルだ。
「ズィー様、いらっしゃいませ。お部屋の準備はできております」
ズィーさんはフロントにスッとカードキーを数枚渡されている。
この世界にもカードキーがあるんだな。
フロントが顔を覚えている時点で、冒険者ギルド総本部はこのホテルを良く使うと推測できる。
隣だし、使い勝手は良いだろう。
「ズィーさんやゴウさんはこの近くに住んでいるんですか?」
「実は冒険者ギルド総本部の裏の建物は職員用の宿舎だ。この街の中心部の家賃はかなり高いから、多くの職員はそこを利用しているし、時間外の突発的な出来事も仕事柄多いから呼びやすい」
「ああ、近い方がトラブルに対処するのも早いと。。。」
社畜だな。
完全に社畜だな。
「総本部の建物内にも宿泊施設があるとは言っても、同じ建物内でバタバタすることがあるからね。夜に落ち着かないのも嫌だろ?しかも、守秘義務があるのは説明するわけにもいかないから、文句を言ったところで、ということになる」
ズィーさんが通路の脇にある壁のボタンを押した。
「へえ、このホテルにはエレベーターがあるんですね」
魔法があれば電気がなくともエレベーターを作るのも無理はない。
けれど、クジョー王国では見ることはなかった。
魔法で作る技術がないか、魔石がもったいないかどちらかか?
けれど、さすが大国の首都。豪華ホテルならお値段の問題なく備え付けられる。
というか、このホテルはかなりの階数だ。外から見たとき冒険者ギルドの建物を軽ーく超えていた。
毎日、階段で昇り降りするのはきつい。
各国の要人なら余計に辛いんじゃないかな。
五階くらいなら許容範囲かなーと思うけど、この大都市の建物は恐ろしいぐらいの高さがあった。
観光地で一度行くくらいならともかく、生活の場にはしたくない。
「、、、リアムはエレベーターを知っているの?」
「はい」
うん?
「コレ、部屋の鍵だからなくさないようにね。部屋番号は三〇二だよ」
「ありがとうございます」
エレベーターを待っている間に、ズィーさんから俺たちは各自カードキーを渡される。
全員に部屋の鍵があるのって楽だよね。
カードキーだから外出のたびにフロントに預けなくてもいいはずだ。
ズィーさんは外のボタンを押して、全員がエレベーター内に入るのを待っている。
荷物もあるのを見越してか、このエレベーターの内部はエレベーターとして広い。
俺はボタンを見る。
エレベーターに乗るのも久々だな。そりゃそうだ、前世以来だ。
三〇二だから三階のボタンをポチリ。
あ、明かりが点かない。
ふと気づく。カードキーを差し込む隙間のようなものがある。
海外ホテルのエレベーターのようなものか。
カードキーを差し込んで、三階のボタンを押すと明かりが点いた。
うん?
ズィーさんにじっと見られている気がするんですけど。
エレベーターから降りると、三〇二の部屋はすぐに見つかる。
コンドミニアムで部屋数が多いから、隣の部屋までかなり遠い。向かいの部屋もあることにはあるが、扉はそれぞれ離れている。
コレもカードキーを差し込む型だ。
開閉の明かりはついていないが、ガチャリと鍵が外れる音がした。
扉を開けると。
「おお?」
玄関があり、通路の先の扉を開けると居間か?ソファやテーブル等の寛ぐための家具が備わっている。
扉を開けていくと、カウンターキッチンのようなものがあるわけではなく、きちんとしたキッチンが独立して存在している。そして、食事を食べる部屋、食堂もある。。。
トイレや浴室等の水やお湯が流れるかを確認して、タオルやアメニティセットをチェックする。
寝室が四部屋あるが、それ以外に執務室のような机が存在する部屋もある。
流れるように、お部屋チェック終了。
カメラがあれば、旅の記録として部屋の写真を撮ってから荷物整理になるところなんだけど。
どれだけお高いんでしょうね、この部屋。
とりあえず、寝室はどう決めるー?荷物を置いちゃいたいよねー。
「リアム、慣れてるね」
「何がですか?」
「部屋の確認とかいろいろと」
ズィーさんの指摘に自分の行動を振り返る。
何か、おかしかった?
彼の細い目がおかしいと言っている。
そう、前世の行動としてはおかしくないことに気づいた。
前世で見慣れたものだから、普通に確認してた。
ここのトイレは洋式で水洗だ。普通にレバーを引いていた。
浴室は浴槽とシャワーがついているタイプである。クジョー王国ではシャワー自体存在しない。
すでに温水が出るかどうか確認済みである。
うん、クジョー王国から出たことのない人間がやるには、不思議なほど手慣れている行動だった気がする。
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