男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

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2章 令嬢たちは嫉妬する

2-7 花びら舞う王子様2 ◆ソニア視点◆

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◆ソニア視点◆

「綺麗っ、美しいっ、尊いっ」

 オルレア様によるレオ様の剣の訓練が終わり、私たちも城内に戻って来た。
 ようやく言葉を発せられるっ、とばかりに他の貴族令嬢たちもピーチクパーチク騒いだ。

 桃色の花びらが三階の窓から舞うと、吸い寄せられるようにオルレア様の元へ。
 あまりにも優雅な動きに、誰も言葉を告げられなかった。
 ゆっくりと動いているのに、その剣は正確に花びらを切断する。
 花びらとともに、オルレア様も舞っているかのようだった。

 そして、すべての花びらが地面に舞い落ちたとき、長い銀髪もふわっと舞い降りオルレア様はまるで女神のような美しさだった。

「あーっ、アニエスかイザベルがいたらこの感動を分かち合えたのに」

 あーっ、悔しい。
 けど、あの二人に話したら、必ず羨ましがられること間違いなし。メモっておこう。

 私の名前はソニア・ガロン。
 伯爵家の一人娘として、この王城にいる。
 一応、第三王子クオ様の婚約者候補の一人ではあるが、三つ編み地味眼鏡の私が高位貴族令嬢の美しい方々を差し置いて選ばれるわけもない。
 ので、オルレア様を満喫する日々だ。

 私はオルレア様を慕う会の会計をしている。
 会の活動費として、お金が必要になることも少なくない。
 多額をポンっと出せる令嬢というのは貴族といえども少ない。
 特に子爵家、男爵家が多い、下級生が中心のオルレア様を慕う会ではそこまでの活動資金は集まらない。
 ただ、少額と言っても平民では多額の域に入りかねないが。

 地道にコツコツと、がモットーの会である。
 皆で集めた資金をオルレア様のためになることに使っている。

 会長のアニエスは男爵家令嬢なので、多少舐められることもあるが、彼女は持ち前の機転でのらりくらりと立ち回り相手を手玉に取る。幾人かの男子生徒なんて最初は彼女に突っかかっていたのに、骨抜きにされて今では協力的である。
 アニエスやイザベル、会の他の子たちとこうやってオルレア様を追いかけていられるのも、学校を卒業するまで。
 いや、オルレア様は一学年上だから、オルレア様が卒業したらこの会の活動はどうなるのだろうか。

「ガロン様、通路を足早に行くのはおやめください。ここは王城なのですから」

 二人の騎士が後ろにいた。
 王城内での私の護衛としてついた二人である。
 この二人の内、一人が慇懃無礼だ。
 他の騎士の担当が位の高い令嬢だからといって、コイツは伯爵家を舐めているのか?

 女子生徒一人の足の速さなど、騎士が追いつけないわけがないのに。
 残念ながら、この王城に侍女一人しか連れて来ていない伯爵家令嬢が王城へ直接苦情を言えるわけもなく。。。

「これは失礼しましたわ。騎士様が歩くのが遅いとは知らなくて」

「決して我々が遅いわけではございません。公共の場で急ぎますと通路では他の方々と接触する可能性もありますので」

「、、、ふふ、さすがにこの広い通路で人を見落とすなら、新しい眼鏡を購入しますわ」

 この広い通路でぶつかるのなら、絶対にワザとだ。故意だ。悪意だ。
 お前のようなイケ好かない奴がやる行為だよ。

 見渡せるこの通路で人が見えないわけがないだろうが。
 つまり、爵位が低い、いや、伯爵家は決して低くはないが、公爵家、侯爵家に比べると低く見られる、そういう令嬢が王妃やら王子妃にでもなったら苦労が絶えないことは他人のこういう態度でよくわかる。身に染みて理解する。
 あーっ、鬱陶しい。

 さっさと婚約者候補から外してくれないかな。
 誰かに内定するまでは無理だろうが。

 いや、このおかげで、王城で動くオルレア様が見ることができたのだ。
 少しは父にも感謝しよう。
 王子が無理でも他の男を見つけておけってことなんだろうけど、無理だよ。そもそも壁の花ですから、私。

 美しい銀色が視界に入った。

「さすがはソニア嬢、イケ好かない騎士たちに良い返しをしますね」

 横を通り過ぎたのは、あのオルレア様だった。
 おおっ、私の名前を呼んでくれた。私を知っていてくれたなんて。アニエスやイザベルの名ならともかくっ。
 女神かっ。
 じーん。感動を我が胸に。

 オルレア様の後ろに続く親衛隊隊長が怪訝そうな顔で私を見ているが気にしないっ。

「オルレア様っ、花びらの舞い、素敵でしたっ」

 王城で大声出すなと言われても、この感動を本人に伝えるっ。
 オルレア様がほんの少し振り返った。
 顔には微笑みがっ。

 ああ、この感動を忘れないうちに書きとめておきたい。
 絵を描くか?
 あの美しさを私に表現できるか?
 神々しさを何かに残しておきたいという気持ちがほとばしる。

 騎士二人が後ろで呆れた表情をしていようが気にしない。
 アンタら二人はモブなんじゃ。
 私もだけど。

 オルレア様こそが王子様にふさわしい人物っ。




 王城に拘束されている時間、何をしているのかというと、お勉強だったり、刺繍や楽器演奏など令嬢が嗜みとして身につけておくべき趣味だったり。
 食事も部屋でとっていると、あまり部屋から出歩かないということだ。
 それでも、オルレア様が歩き回るのなら、ついて行かないわけがないが。今の王城内は立入禁止区域以外は自由行動可能なのだからー。

 他の貴族令嬢は家庭教師を王城に招いたりしているようだが、伯爵家は自分の娘にそこまでお金を使わない。
 多少は学校から教師を招いて補講をしてくれるが、学校に行かないと勉強についていけなくなる。
 王城の図書室を自由に使っても良いと言われているが、、、あの騎士がついてくるのが嫌だ。

 それでも、情熱を込めた絵は出来上がってしまったし、二週間も授業に出ていない私は図書室に行くことにした。

「はわっ、オルレア様っ」

 美しいオルレア様が座って本を読む姿は芸術品。
 光と影のコントラストが素晴らしい。

 何たる偶然。いや、ホント、コレは偶然です。ストーカーじゃありません。信じてください。
 顔を上げてこちらを見るオルレア様。

「おや、子猫ちゃんも本を読みに?王城の図書室には珍しい書物も多いから、読むなら今のうちだよね」

「そうですね。オルレア様は何度か利用されているのですか」

「王城はいろいろな見どころがあるから迷うよね。こんな機会じゃなければ、王城内をこんな格好で散策できないから」

 こんな格好→男子の制服。

 そうですね。オルレア様の姿はこんなときでなければ王城内では許されない格好かもしれません。
 オルレア様のドレス姿も見てみたいと思ってしまいますが、できれば王子様風の衣装を着ていただくと我々は嬉し過ぎて卒倒してしまうでしょう。

「私はオルレア様が王子様風衣装を着ている姿を見てみたいです」

 あっ、本音が口から漏れてしまっていた。
 しかも、私の手は力強く拳を握って力説している風だったよ。
 オルレア様が苦笑いを浮かべてらっしゃる。

「確かに見てみたいですわね」

 後ろからにゅっと顔が出てきて驚いた。気配がなかった。

「お、王妹殿下っ」

「堅苦しいからマイアでいいわよ」

 うおおおおっ、位の高い人ほど気安くていらっしゃる。

「ありがとうございます、マイア様」

 私はお辞儀をしながら礼を言う。
 心の中で叫び声をあげているなんて気取られるわけにもいかず、冷静な風を装う。

「やはり、オルレアに似合う衣装は白かしら?」

「白馬に乗った王子様も良いのですが、実は私は黒も見てみたいのです」

 マイア様の動きが一瞬とまった。

「、、、それは良いかも」

 マイア様が目を輝かせた。

 なぜでしょう。
 マイア様とは話が合いそうです。
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