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第二章 Go down over the sky

水晶と命

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自分は目を覚ました。そこは自分の部屋だった。時計を見ると飛び込んだ日から一日経っていた。何かないかと思って立ち上がると隣にはさっきの女の子が寝ていた。すぐに布団から出て周りを見回す。幸い他の人はいないようだ。もしいたら自分の人生が詰む可能性があったのでそこについては安心したが、その瞬間に全身に一瞬だけ激痛が走ってそのまましゃがみこんだ。その物音に気づいたのか、彼女が起きた。
「大丈夫!?ねぇ!」そういうと彼女は自分を布団まで連れ戻した。力は自分より強いみたいだ。彼女は連れ戻した後にちょっと怒ったような顔で自分に説教をし始めたが徐々に表情が変わっていった。
「だから布団で寝ててって言ったのに!えーと...一緒に寝るから布団に入ってて...」
まず布団に入れと言われた記憶はない。そして彼女が布団に入ってくるから布団から出ないとまずいのだ。しかし彼女はそんな汚れたことは知らないようで、布団に忍び込んできた。目線が一瞬合ったがすぐに逸らしてきた。この時一瞬でも少し生き延びようかなと思った自分は多分もうダメだ。そんなことを話している二人の周りには、暖かなそよ風が吹いていた
それ以降数十日一緒の家に暮らした。彼女のために妹の部屋を貸し出したが、彼女は夜になるたびに自分の部屋に来ては、「カイには私がいないとダメだもんね!」とすごい怖がったような表情をしながら布団に潜っていく。暗いところで一人でいるのが怖いだけなのではないかと思っていたがこれが違うっていう当事者がいるならぜひ教えて欲しい。でも一緒に寝ると犯罪になりかねないと思い、一応布団には入らないようにしていた。すごく眠かった。法的には児童ポルノ禁法に引っかかる可能性が高い。しかしまず親権がない上に保護者とも認められないまま子どもを保護している時点で誘拐してると言われたら反論もできないし、かといって別れると虐待を受ける可能性があるし...一応本人の意思も聞いたが親には会いたくないと言うため、どうにもならないのだ。そして問題は自分の親が帰ってきた場合だ。妹も両親と別のところに行っているため全く問題なかったのだが近いうちに戻ってくるのだ。寮に連れていくわけにもいかないし、かといって親に見つかったら終わるし...と言うわけでしばらくビジホ生活になる結末となった。彼女もOKしてくれたのでしばらくやっていたが、食費含めて一日8000円以上となるとバイトだけでは持たないことになっていて、そこは親から借り入れていた。そんなある日、部屋がノックされた。開けると大柄な警官が3人立っていた。警察手帳を見せた後、見覚えのある少女について聞かれた。
「この少女知らない?学校に行ってはよくここのホテルにくるらしいけど。」
自分は「その子の名前はなんですか?」と聞くとあっさり答えた。
「この子はユイっていう名前で、親が探している。」
ちなみにここで初めて名前を知った。彼女に電話をかけるため、一旦扉を閉めた。
「今警察が来てて、君を親元に戻す気だから一旦合流しよう。」
そう話をつけて、警察には急用だと言って部屋を出た。
荷物は全てカバンにしまった。
彼女と合流した後に、すぐに友人宅に向かった。友人にチェックアウトを済ませるように言って、自分は彼女と一緒に空港に向かった。しかし空港にはかなりの数の警官がいて引き返した。駅にももちろんいた。そこで彼女は急に言った。「髪の色金色にしたい!」自分はそれがいい案だと気づき、髪の色を変えてもらった。金髪になった彼女はどこかゲームのキャラに似ていた。その後、彼女は自宅にもう一度居候して自分は毎日バイト先に行くのにマスクとメガネをつけていくことを余儀なくされた。
それから1ヶ月後、彼女に「どうしてあの時死のうとしたの?」と聞かれた。
そしたら自分は「生きる意味がなかったから。」と答えた。
彼女は「カイがいなくなったら私はどうなる?」と言った。
当分は死ねないようだ。

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