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第二章 Go down over the sky

勉強と諦め

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「将来いい仕事に就くために仕事をするべきだ。」
親はこういった。しかし自分にはもう正直どうでもよかった。
ユイの保護者は見つかったし、自分には明確に生きる理由がなくなった。
心の黒い闇が広がっていく。すでに黒い心を、さらに黒くした。
その最後の夜に、自分の元にユイが来た。自分は顔をむけることすらできなかった。そして自分は彼女に言った。自分の話せる最後の二つの話題を。
「今までどうだった?こんなやつといるのが嫌だった?」
ユイは無邪気な笑顔で
「今までで一番楽しかった!ずっと忘れない!」
と答えた。自分は今までのことが懐かしくなった。次の話題にした。
「好きな人はいるの?いたら別れる前にちゃんと告白しないとね。」
彼女は自分とは反対側を向いた。そして数分後に答えた。
「実はカイのことが一番好きだった...だめ?」
彼女はこちらを向かない。自分は想像していたことを口に出した。
「それは好みの方の好きであって恋情ではないね。」
彼女は自分の布団の中に移動して言った。
「もし付き合えるなら付き合ってほしい。」
自分は大きな勘違いをしていた。彼女は恋情を持ってる。しかし相手が自分なのは絶対に許されない。自分と彼女が歩いていたら警察に職質されるに決まってる。自分は彼女に何もできないことはここの時点でわかっていたし、そろそろ終わりも近い。
「付き合えたらいいけど、君は同年代の子を見つけないとね。自分よりもっといい人がきっとどこかにいるから、頑張って探さないとね。」
彼女はダメか...と言って布団に包まった。これが最後の雑談だった。
翌日、自分は彼女に別れを告げて、学校に行く支度をした。その後親が買い物に行っている間にマフラーとロープをクローゼットの中に用意した。学校に行く気はなかったから、カバンの中身はほぼ空っぽだった。
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