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もう一生、この塔の外に出ることはできないと思っていた。なのに、今私はビビに背負われて、黄土色の砂漠の上にいる。
「これからどうするの?」
「まずは、東の森の国に行きます。宝石や装飾品など売れるものはそこで売って、当面の生活費を作りましょう」
と言って、懐から青い宝石を取り出した。彼と初めて会った日に、元大臣が持っていたものだ。
「あ! いつの間に。意外とちゃっかりしてるのね」
「お金は、何かと入用ですからね」
「ここまでくれば、追っ手ももう来ないでしょうから、少し休みましょう」
ビビは立ち止まり、私を地面に降ろした。そして、隣に座る。
前も後ろも右も左も、見渡す限りどこまででも広がる砂漠があった。上を見上げると、目の前に満天の星空が広がっていた。
「綺麗。星が歌っているみたい」
「そうですね」
汗で張り付いた前髪をかきあげたビビの腕から、手枷がパキンと音を立ててはずれた。彼は驚いた顔をして、それから手首を撫でた。私は何かを言おうとして、でも何も言えなくて泣きそうになる。
抑圧、開放、憎悪、追思。いろいろな感情が、溢れて混ざって消えた。私は地面に落ちたそれを、無言で拾い上げた。振りかぶって
「姫様」
腕をビビに捕まれた。
「これは取っておきましょう。金属ですからね。路銀の足しになります」
「お前がそう言うなら……」
用無しになった手枷は、バッグの中にしまわれた。
「これからどうするの?」
「まずは、東の森の国に行きます。宝石や装飾品など売れるものはそこで売って、当面の生活費を作りましょう」
と言って、懐から青い宝石を取り出した。彼と初めて会った日に、元大臣が持っていたものだ。
「あ! いつの間に。意外とちゃっかりしてるのね」
「お金は、何かと入用ですからね」
「ここまでくれば、追っ手ももう来ないでしょうから、少し休みましょう」
ビビは立ち止まり、私を地面に降ろした。そして、隣に座る。
前も後ろも右も左も、見渡す限りどこまででも広がる砂漠があった。上を見上げると、目の前に満天の星空が広がっていた。
「綺麗。星が歌っているみたい」
「そうですね」
汗で張り付いた前髪をかきあげたビビの腕から、手枷がパキンと音を立ててはずれた。彼は驚いた顔をして、それから手首を撫でた。私は何かを言おうとして、でも何も言えなくて泣きそうになる。
抑圧、開放、憎悪、追思。いろいろな感情が、溢れて混ざって消えた。私は地面に落ちたそれを、無言で拾い上げた。振りかぶって
「姫様」
腕をビビに捕まれた。
「これは取っておきましょう。金属ですからね。路銀の足しになります」
「お前がそう言うなら……」
用無しになった手枷は、バッグの中にしまわれた。
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