【完結】擦れた桜章~自衛官だった私は、牢獄から日本の終わりを記録する~

@ヤマト

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51話 支柱

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8月19日1400 国道32号線沿い

私と霞2曹は
紀伊3尉を抱えて衛生車両まで
辿り着く。

しかし、負傷者も多く
衛生隊員はまったくもって
手が回っていない状況だった。

仕方なく我々は
紀伊3尉を連れて帰り

自分達の
高機動車の中で
寝かせる事にした。

馬鹿らしい現実だった。

自分達の為に身を粉に
して動いてくれていた人間が
苦しんでいる時に何も出来ない。

紀伊3尉の離脱は
我々小隊にとって
死活問題であった。

階級的には
次の小隊長は
霞2曹という事になる。


「しょうがねぇなぁ。
ちょっと司令部に行ってくるわ
現状の報告と指示受けにな」

霞2曹は渋々
司令部へと向かっていった。

一人いなくなるだけで
こうも雰囲気が変わる
ものだろうか…

考えてみれば
いつも小隊は
紀伊3尉に支えてもらっていた。

我々は一歩兵に過ぎない
戦場を渡り歩いていて
感じている事は

敵を倒す事よりも
自分達が生き延びる
方が重要だと
感じ始めていた。

残念だが我々小銃部隊は
敵を倒す時の決定打には
なり得ない。

強い打撃力のある
部隊には敵わないからだ。

だが、制圧力はある。

配置されているだけで
敵に対しての圧力になる。


だから生き延びて
さえいれば
なんとかなる。

我々を支えていたのは
紀伊3尉が戦場で的確な
冷静な指示を出し続けてきたからだ。

小さい目標や
大きい目標で我々に
目的意識を持たせて
モチベーションを維持させ

小隊の信頼関係を
繋ぎとめてきた。

だから生き延びてきた。

事実として今にも
崩れそうな自分がいた。

熱を出し痙攣するまで
疲弊した姿を見れば

ずっと無理をさせて
きたのが痛い程
伝わってきた。

感情のままに
反論した事もあった。

自分の浅はかさを
悔いていた。


程なくして霞2曹が
帰ってきた。

げっそりした顔して
ため息をついた。

「紀伊3尉すげーな。
指示受けに行ったけど
専門用語が多くて全く
ついていけなかった」

霞2曹は頭が悪い訳ではない。

むしろ頭が切れる方だ。
それでも分からない程
難解らしい。

「引継ぎもなしに行けば
そうなっても仕方ない
ですよ……」

「彼らは前提を分かっている体で
話しますからね…」

紀伊3尉が目を覚ます。

皆が駆け寄った。

「おい、馬鹿共やめろやめろ
あんまり負担かけるんじゃない。
紀伊3尉も寝ててください」

霞2曹が慌てて制止する。

「いやー紀伊3尉
普段から噛み砕いて説明して
くれてるんですね。
今回よーくわかりました」

「紀伊3尉は休んでいてください
あなたがいないと小隊が
まわらない」

霞2曹がおどけて見せる。

小隊が少しだけ
明るい雰囲気になった。

紀伊3尉の寝息を聞けただけで、
胸の奥が少しだけ軽くなった
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