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58話 無情
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8月20日0500 東かがわ防衛陣地 第2線
我々は敵の猛攻から
防衛線を下げざるを得なかったものの
前進する敵に対しての側面から
迫撃砲などが撤退支援射撃をした事で
敵の追撃は止まった。
第2防衛線にまで到達している
敵はいない事からどうやら
こちらの方面の敵に関しては
攻勢限界が来たかと思われる。
我々はなんとか
予備陣地にたどり着く事が出来た。
夏の朝で涼しい風が
頬を撫でる。
ヒグラシの鳴き声が
人間の事情など考えないかのように
つんざいた。
辛うじて感じる
日常生活の残り香に
私は生を実感していた。
「どうにか…
生き残ったな…」
車両内で
霞2曹がつぶやいた。
戦っても
戦っても
決め手に欠ける
この状況に
精神を摩耗していくのを
感じていた。
「司令部に行って
状況を確認しなければ
どうしようもないですね」
「今のままでは
先ほどの夜襲が
主攻なのか助攻なのかも
わかりませんからね」
「我々の部隊が
この防衛陣地で
どう展開するかも
踏まえて確認をとらなければ
なりません」
「第2線ではすでに
部隊が展開しているはずなので
警備はそちらに任せて
車両で待機しておいてください」
紀伊3尉と霞2曹は
司令部へと向かった。
周辺の駐車場には
他に撤退したであろう
高機動車が多数あった。
普通科の赴く場所は
常に前線だ。
傷だらけの車体を
名誉に感じる人間も
いるだろう。
同時に必須の犠牲でもある。
後方支援部隊の面々を
目の当たりにすると
まだ日常の残り香の漂う
余裕のある表情を
している。
あまりにもつらい現実から
怒鳴り散らしたい
嫉妬にも似た感情が自分の中に
いるのも確かに感じていた。
この傷だらけの車体を
名誉に感じるか
それともただの理不尽だと
感じるか
私はどちらの人間だろうかと
と考え
私はそっとなにも
見ない様に固く目を閉じ
現実から目を背けた。
8月20日0500 東かがわ防衛陣地 第2線
紀伊3尉達が
司令部から戻ってきた。
表情は芳しくない。
なるべく平静を
装っているようにみえた。
霞2曹も同じだ。
こういう時は大抵良くない
報告だ。
紀伊3尉が重い口を開いた。
「本日未明から北海道に対しての
ロシア側からの攻撃が続いている
そうです」
どうやら我々の防衛陣地だけではなく
かなり広い規模での攻撃らしい。
私は背中に冷たい汗が流れるのを
感じていた。
「また昨日我々への攻撃に関しては
助攻かと思われます」
「本日の夜襲と合わせて
中国軍は大阪湾に向けて
部隊を動かしています」
「恐らくはこちらが本命です。
数はおよそ1万5千」
「それと同時に
大阪に住む一部中国工作員が
武装蜂起し司令部は大混乱
しています」
それは
言葉が出ない程
最悪の事態だった
我々は敵の猛攻から
防衛線を下げざるを得なかったものの
前進する敵に対しての側面から
迫撃砲などが撤退支援射撃をした事で
敵の追撃は止まった。
第2防衛線にまで到達している
敵はいない事からどうやら
こちらの方面の敵に関しては
攻勢限界が来たかと思われる。
我々はなんとか
予備陣地にたどり着く事が出来た。
夏の朝で涼しい風が
頬を撫でる。
ヒグラシの鳴き声が
人間の事情など考えないかのように
つんざいた。
辛うじて感じる
日常生活の残り香に
私は生を実感していた。
「どうにか…
生き残ったな…」
車両内で
霞2曹がつぶやいた。
戦っても
戦っても
決め手に欠ける
この状況に
精神を摩耗していくのを
感じていた。
「司令部に行って
状況を確認しなければ
どうしようもないですね」
「今のままでは
先ほどの夜襲が
主攻なのか助攻なのかも
わかりませんからね」
「我々の部隊が
この防衛陣地で
どう展開するかも
踏まえて確認をとらなければ
なりません」
「第2線ではすでに
部隊が展開しているはずなので
警備はそちらに任せて
車両で待機しておいてください」
紀伊3尉と霞2曹は
司令部へと向かった。
周辺の駐車場には
他に撤退したであろう
高機動車が多数あった。
普通科の赴く場所は
常に前線だ。
傷だらけの車体を
名誉に感じる人間も
いるだろう。
同時に必須の犠牲でもある。
後方支援部隊の面々を
目の当たりにすると
まだ日常の残り香の漂う
余裕のある表情を
している。
あまりにもつらい現実から
怒鳴り散らしたい
嫉妬にも似た感情が自分の中に
いるのも確かに感じていた。
この傷だらけの車体を
名誉に感じるか
それともただの理不尽だと
感じるか
私はどちらの人間だろうかと
と考え
私はそっとなにも
見ない様に固く目を閉じ
現実から目を背けた。
8月20日0500 東かがわ防衛陣地 第2線
紀伊3尉達が
司令部から戻ってきた。
表情は芳しくない。
なるべく平静を
装っているようにみえた。
霞2曹も同じだ。
こういう時は大抵良くない
報告だ。
紀伊3尉が重い口を開いた。
「本日未明から北海道に対しての
ロシア側からの攻撃が続いている
そうです」
どうやら我々の防衛陣地だけではなく
かなり広い規模での攻撃らしい。
私は背中に冷たい汗が流れるのを
感じていた。
「また昨日我々への攻撃に関しては
助攻かと思われます」
「本日の夜襲と合わせて
中国軍は大阪湾に向けて
部隊を動かしています」
「恐らくはこちらが本命です。
数はおよそ1万5千」
「それと同時に
大阪に住む一部中国工作員が
武装蜂起し司令部は大混乱
しています」
それは
言葉が出ない程
最悪の事態だった
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