【完結】擦れた桜章~自衛官だった私は、牢獄から日本の終わりを記録する~

@ヤマト

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61話 窮地

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8月20日0720 東かがわ市内

煙と火薬の匂い、
そして瓦礫しか残っていない街の中を、
我々は瓦礫で射線を切りながら、少しずつ敵を殺していく。

前進する。
前進する。
前進する。

我々は、前進する。

空になった弾倉を弾納に納め、
新たな弾倉を取り出す。

私は、自分が撃った敵兵の死体を見る。
これで十人目だ。

ろくに反撃がない理由が、ようやく分かった。

さきほど撃った敵兵は、
倒れた味方兵の死体から弾倉を漁っていた。

――つまり、弾がないのだ。

敵は攻勢をかけた直後に、
すぐさま大規模な反撃を受けた。
補給を受ける時間が、なかったのだ。

そして敵は、明らかに疲弊している。
動きが鈍い。

上陸直後の無茶な攻勢のツケが、
今になって現場の兵士たちに降りかかっているのが分かった。

前進を続けると、敵の ZTQ-15G が見えた。

だが、動ける範囲は限られている。
砲撃で道路が破壊され、舗装路が消えていた。

それでも主砲を備えている以上、
我々普通科にとっては致命的な脅威だった。

危険である以上、身を曝すわけにはいかない。

私は紀伊3尉に手信号を送る。
紀伊3尉もそれを受け、LAM手に合図を送った。

陸士である彼は小さくうなずくと、
敵のZTQ-15Gに向けてLAMを発射する。

LAMは個人携行用の対戦車兵器だ。

凄まじい轟音を撒き散らしながら、
弾体はZTQ-15Gの車体に突き刺さる。

直後、爆発。

その瞬間――
小隊のほとんどが「撃破した」と確信した。

「伏せて!」

紀伊3尉の叫び。

次の瞬間、
ZTQ-15Gの主砲がこちらを向き、
瓦礫ごと砲弾を叩き込んできた。

轟音。
瓦礫が弾け飛び、地面が揺れる。

「くそ、爆発反応装甲か!!」

ERA(爆発反応装甲)。
対戦車弾の着弾に反応し、誘爆することで
貫通を防ぐ戦車用装甲だ。

――撃破したように“見えただけ”だった。

「小隊長!!
この場を離れましょう!!
こちらにはもうLAMがありません!!」

小隊に配備されているLAMは、一基だけだ。

他部隊の対戦車兵器による援護を期待し、
周囲を見渡す。

だが、瓦礫と建物の遮蔽物に遮られ、
他の部隊の様子はまったく見えない。
連携を取ることが出来なかった。

前進しすぎたのかもしれない。

いつの間にか、
自分たちが孤立していることに気づいていなかった。

――今さらになって、その事実が突き刺さる。

対戦車兵器のない状態で、
敵の装輪装甲車に立ち向かう。

それは、
あまりにも無謀だった。
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