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76話 諦観
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8月29日 1600 五色台 宿舎
宿舎前にたどり着いた
我々の前に
2人の自衛官が
歩哨として立っていた。
彼らは弾倉の入った
銃をこちらに向け
誰何した。
「誰か!?」
「15連隊1中隊紀伊3尉です」
奥からもう一人自衛官が
やってくる。
階級は曹長。
恐らくはここの指揮を
取っている人物だ。
「銃を下げろ、敵ではない
紀伊3尉ですね?
以前一緒に訓練をした事もある」
2人は銃を下げた。
「3中隊、箱根曹長です。」
「4日前から定時報告が
繋がらない。」
「本部からの通信が来ない上
補給もこない。
困り果てていた所です」
紀伊3尉は怪訝な顔をする。
「なにも聞いてはいないのですか?
いないのですか?
今の状況も?」
「停戦した事までは聞きましたが
それ以上はなにも、何せ携帯なども
敵に傍受される為使えませんでしたから」
「外で何が起こっているかは
分からないんですよ」
彼らは戸惑っていた。
おそらく本部は意図的に
情報を遮断したのだろう。
わざわざ現状を話して
混乱させる事はないからだ。
最終的には家族を救いだす予定だったが
その前に惨劇が起き本部が機能しなくなった。
結果、彼らに与えた命令だけが
取り残されたのだと言える。
紀伊3尉は現状を丁寧に伝えた。
西日本政府が建国され
自衛隊が解体になった事
駐屯地に残っていた
自衛官は皆殺しにされた事
そして、ここには自分達の家族を
迎えに来た事。
それを聞くと箱根曹長は
静かに目を閉じて
近くに置かれていた
石の上に座った。
箱根曹長は怒るでもなく
悲しむでもなく
諦観が滲み出る口調で
静かに口を開いた。
「何か良くない事が
起こっている事は薄々
感じていましたが…」
「そうですか…
駐屯地は壊滅ですか…」
その姿はどこか哀愁が漂い
同業者からすると
見ていられるような
なものではなかった。
「我々と共に
一緒に来られますか?」
紀伊3尉が優しく語りかける。
箱根曹長は静かに首を横に振った。
「私は今年で55になります。
デスクワークも長いですから
一緒に行けば足手まといになります」
箱根曹長はとても深い
ため息をついた。
「もう30年以上
それこそ貴方が生まれる前から
自衛官をやっている。」
「あと少しで定年だった。
このまま平和が続く事を願っていた」
「違う生き方をするには
長く勤めすぎたのかもしれません
なら、せめて最後の命令に殉じたいと
思います」
「おい、お前らはどうする?
聞いての通りだ。
一緒に行くならいけ。
オレも自衛隊ももう守ってやれんぞ」
「箱根曹長を置いて
一緒にはいけませんよ」
他の隊員達もここに残る
選択をしたようだった。
「……そうですか」
紀伊3尉はうつむいた。
これ以上説得は無意味にも思えた。
受け入れるに時間が必要だが
時間が経つほどに状況は悪化する。
そんな時間をかけている状況ではなかった。
「命懸けでここまで来られたでしょうから
ご家族を連れていく事は止めはしません」
それを聞き我々は宿舎に向かい
歩きだした。
その後ろ姿に箱根曹長が
声をかける。
「紀伊3尉、恐らく
家族を連れて東日本に行くと
いう貴方の考えは正しい」
「願わくは」
「俺たちが好きだった
日本を
自衛隊を
もう一度取り戻してくれ」
我々はその言葉に
静かにうなずいた。
宿舎前にたどり着いた
我々の前に
2人の自衛官が
歩哨として立っていた。
彼らは弾倉の入った
銃をこちらに向け
誰何した。
「誰か!?」
「15連隊1中隊紀伊3尉です」
奥からもう一人自衛官が
やってくる。
階級は曹長。
恐らくはここの指揮を
取っている人物だ。
「銃を下げろ、敵ではない
紀伊3尉ですね?
以前一緒に訓練をした事もある」
2人は銃を下げた。
「3中隊、箱根曹長です。」
「4日前から定時報告が
繋がらない。」
「本部からの通信が来ない上
補給もこない。
困り果てていた所です」
紀伊3尉は怪訝な顔をする。
「なにも聞いてはいないのですか?
いないのですか?
今の状況も?」
「停戦した事までは聞きましたが
それ以上はなにも、何せ携帯なども
敵に傍受される為使えませんでしたから」
「外で何が起こっているかは
分からないんですよ」
彼らは戸惑っていた。
おそらく本部は意図的に
情報を遮断したのだろう。
わざわざ現状を話して
混乱させる事はないからだ。
最終的には家族を救いだす予定だったが
その前に惨劇が起き本部が機能しなくなった。
結果、彼らに与えた命令だけが
取り残されたのだと言える。
紀伊3尉は現状を丁寧に伝えた。
西日本政府が建国され
自衛隊が解体になった事
駐屯地に残っていた
自衛官は皆殺しにされた事
そして、ここには自分達の家族を
迎えに来た事。
それを聞くと箱根曹長は
静かに目を閉じて
近くに置かれていた
石の上に座った。
箱根曹長は怒るでもなく
悲しむでもなく
諦観が滲み出る口調で
静かに口を開いた。
「何か良くない事が
起こっている事は薄々
感じていましたが…」
「そうですか…
駐屯地は壊滅ですか…」
その姿はどこか哀愁が漂い
同業者からすると
見ていられるような
なものではなかった。
「我々と共に
一緒に来られますか?」
紀伊3尉が優しく語りかける。
箱根曹長は静かに首を横に振った。
「私は今年で55になります。
デスクワークも長いですから
一緒に行けば足手まといになります」
箱根曹長はとても深い
ため息をついた。
「もう30年以上
それこそ貴方が生まれる前から
自衛官をやっている。」
「あと少しで定年だった。
このまま平和が続く事を願っていた」
「違う生き方をするには
長く勤めすぎたのかもしれません
なら、せめて最後の命令に殉じたいと
思います」
「おい、お前らはどうする?
聞いての通りだ。
一緒に行くならいけ。
オレも自衛隊ももう守ってやれんぞ」
「箱根曹長を置いて
一緒にはいけませんよ」
他の隊員達もここに残る
選択をしたようだった。
「……そうですか」
紀伊3尉はうつむいた。
これ以上説得は無意味にも思えた。
受け入れるに時間が必要だが
時間が経つほどに状況は悪化する。
そんな時間をかけている状況ではなかった。
「命懸けでここまで来られたでしょうから
ご家族を連れていく事は止めはしません」
それを聞き我々は宿舎に向かい
歩きだした。
その後ろ姿に箱根曹長が
声をかける。
「紀伊3尉、恐らく
家族を連れて東日本に行くと
いう貴方の考えは正しい」
「願わくは」
「俺たちが好きだった
日本を
自衛隊を
もう一度取り戻してくれ」
我々はその言葉に
静かにうなずいた。
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