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87話 安堵と油断
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9月1日 2300 山中
雨はますます勢いを
増していく。
風は強くなり
紀伊三尉はしきりに
後ろの私達の家族を
確認していた。
心配してくれて
いるのだろう
紀伊3尉の配慮に感謝
していた。
山中に対しても敵は先ほどから
頻繁にドローンを
飛ばそうとしている。
しかし、強風のせいか
上手く機能していない
ようだった。
「このタイミングでの国境越えは
最適だったかもしれませんね」
紀伊3尉が静かに言った。
「いずれ、巡回の兵士達の死体は
バレていた事です。」
「もし延期していたなら、
状況はもっと悪化していたでしょう」
「それにこの台風でドローンなどの
偵察の目は機能しません」
「雨で中国兵の視界も
遮られ音もかき消してくれる。
つまりは後は我々が頑張るだけです」
紀伊3尉が皆を励ますように
笑って言った。
その言葉に我々は
力強くうなずいた。
状況に対して常に諦めず
冷静にその場を分析し
皆を励ます紀伊3尉のその
言葉には我々をまた立ち上がらせる
力をもらっていた。
「紀伊さん、いつも
ああなのか?」
佐藤がポツリとこぼした。
「ええ、ああやっていつも
励ましてくれます」
私が誇らしげに答えた。
「なるほどねぇ。
道理で絶望的な状況だったにも
拘わらず生き残る訳だ」
佐藤は頭を掻きながら
そう告げるとまた
歩き始めた。
敵兵。
滑落の危険のある
岩盤地帯。
急斜面。
慣れ親しんだ
山岳での訓練で
たとえ雨天であろうとも
なんなく進む事が出来た。
家族達もいる為
適度に休憩を
とりながら進んでいく。
進み続ける上の方から
ズズズという異音が聞こえた。
僅かに地面が揺れているのを
感じて直感する。
以前の土砂災害で災害派遣に
向かった時の経験が瞬時に
頭をよぎった。
「土砂崩れだ!!!
全員ここから離れろ」
私はそう叫ぶと
娘の美樹を抱え上げ
すぐにその場から離れる。
その声を受けて
全員がその場から
退避していた。
そのすぐ後に
寸前まで私達がいた場所に
土砂が流れ込んでいた。
間一髪の所だった事を知り
私は思わず冷や汗をかいた。
幸い規模は小さいものだ。
「おー、よく気が付いたな」
佐藤が感心したように言った。
「災害派遣で以前似たような
場面に出くわしましたから」
私は笑いながら答えた。
困難自体にも拘わらず
私達自衛官の経験は確かに
生きていた。
「土砂崩れが起きるという事は
ここら辺は地盤が弱いと思います。
迂回した方がいいかもしれません」
紀伊3尉が佐藤に伝える。
「そうだな…そうするか」
佐藤もそれに答えた。
思えば我々は眼前の土砂崩れという
危機を乗り越え油断していたのかも
しれない。
それは唐突に訪れた。
私に抱きかかえられたままの
美樹が突然指を指した。
「あっ……わんわん」
わんわん、野犬か?
美樹は笑っていた。
それが生き物ではないと
理解していなかった。
私は娘の指さす先を見て
思わず思考が停止した。
そこには土砂崩れの場所を
確かめる様に一体の犬型の機体がいた。
戦場で何度も見た銀色のその肢体。
ロボットウルフだった。
赤外線センサーの赤い光が
雨粒に反射していた。
首部のセンサーが不自然な角度でカクンと傾いた。
撃鉄を落とす無機質な音が雨の中に
滲み込んでいった。
それは生き物が引き金を引く音ではなく、
装置が作動するだけの音だった。
雨はますます勢いを
増していく。
風は強くなり
紀伊三尉はしきりに
後ろの私達の家族を
確認していた。
心配してくれて
いるのだろう
紀伊3尉の配慮に感謝
していた。
山中に対しても敵は先ほどから
頻繁にドローンを
飛ばそうとしている。
しかし、強風のせいか
上手く機能していない
ようだった。
「このタイミングでの国境越えは
最適だったかもしれませんね」
紀伊3尉が静かに言った。
「いずれ、巡回の兵士達の死体は
バレていた事です。」
「もし延期していたなら、
状況はもっと悪化していたでしょう」
「それにこの台風でドローンなどの
偵察の目は機能しません」
「雨で中国兵の視界も
遮られ音もかき消してくれる。
つまりは後は我々が頑張るだけです」
紀伊3尉が皆を励ますように
笑って言った。
その言葉に我々は
力強くうなずいた。
状況に対して常に諦めず
冷静にその場を分析し
皆を励ます紀伊3尉のその
言葉には我々をまた立ち上がらせる
力をもらっていた。
「紀伊さん、いつも
ああなのか?」
佐藤がポツリとこぼした。
「ええ、ああやっていつも
励ましてくれます」
私が誇らしげに答えた。
「なるほどねぇ。
道理で絶望的な状況だったにも
拘わらず生き残る訳だ」
佐藤は頭を掻きながら
そう告げるとまた
歩き始めた。
敵兵。
滑落の危険のある
岩盤地帯。
急斜面。
慣れ親しんだ
山岳での訓練で
たとえ雨天であろうとも
なんなく進む事が出来た。
家族達もいる為
適度に休憩を
とりながら進んでいく。
進み続ける上の方から
ズズズという異音が聞こえた。
僅かに地面が揺れているのを
感じて直感する。
以前の土砂災害で災害派遣に
向かった時の経験が瞬時に
頭をよぎった。
「土砂崩れだ!!!
全員ここから離れろ」
私はそう叫ぶと
娘の美樹を抱え上げ
すぐにその場から離れる。
その声を受けて
全員がその場から
退避していた。
そのすぐ後に
寸前まで私達がいた場所に
土砂が流れ込んでいた。
間一髪の所だった事を知り
私は思わず冷や汗をかいた。
幸い規模は小さいものだ。
「おー、よく気が付いたな」
佐藤が感心したように言った。
「災害派遣で以前似たような
場面に出くわしましたから」
私は笑いながら答えた。
困難自体にも拘わらず
私達自衛官の経験は確かに
生きていた。
「土砂崩れが起きるという事は
ここら辺は地盤が弱いと思います。
迂回した方がいいかもしれません」
紀伊3尉が佐藤に伝える。
「そうだな…そうするか」
佐藤もそれに答えた。
思えば我々は眼前の土砂崩れという
危機を乗り越え油断していたのかも
しれない。
それは唐突に訪れた。
私に抱きかかえられたままの
美樹が突然指を指した。
「あっ……わんわん」
わんわん、野犬か?
美樹は笑っていた。
それが生き物ではないと
理解していなかった。
私は娘の指さす先を見て
思わず思考が停止した。
そこには土砂崩れの場所を
確かめる様に一体の犬型の機体がいた。
戦場で何度も見た銀色のその肢体。
ロボットウルフだった。
赤外線センサーの赤い光が
雨粒に反射していた。
首部のセンサーが不自然な角度でカクンと傾いた。
撃鉄を落とす無機質な音が雨の中に
滲み込んでいった。
それは生き物が引き金を引く音ではなく、
装置が作動するだけの音だった。
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