【完結】擦れた桜章~自衛官だった私は、牢獄から日本の終わりを記録する~

@ヤマト

文字の大きさ
98 / 101

96話 再会

しおりを挟む
9月?日 ???? 

ルー・ホ―ピンはしばらく俯いていたが
やがて席を立った。

会談は終わった。
そう感じた。

ルーは部屋を去る際に
「ワシが日本にいる限りは
君を丁重に扱おう。」

そう言い残して
部屋を去った。

暫くは一室が与えられ
自由こそないものの
食事や治療が行われていた。

やがて、秋が来て
私は他の施設に移送され
囚人同然の扱いを
受ける様になった。

私は自身の扱いから
ルー・ホ―ピンが
完全に失脚した事を 
感じていた。

その施設には
多くの元自衛官が
投獄されていた。

看守役の中国兵の
元自衛官達への
扱いは全く持って
ヒドイものだった。

私も多くの
理不尽な暴行を受けた。

やがて

秋が過ぎ

冬が過ぎ

また、夏が来て
それも過ぎようとしている。

左腕は完治できず
ロクな食べ物を与えられない状況で
身体は衰弱しきり

私の左腕はやがて
腐り果てていく。

私は今、自分の近くに
死の足音がひしひしと
近づいてきているのを
肌で感じていた。

あの時ルー・ホ―ピンの
誘いを受けていれば
こんな事にはならなかったのかも
しれない。

だが、あの決断に後悔はない。

ルー・ホ―ピンの誘いを断る事で
日本の未来を私の仲間とそして
次の者達へ確かに渡したからだ。

私自身の人生の使命は終えたのだ。

この手記を読んだ者達へ

君達が笑顔で生活できる国を
どうか大切にしてくれ。

もしそれが失われそうになったら
すがりついてでも守ってくれ。

自分一人がちっぽけな存在でも
諦めなければそれは形になる。

私は…それを証明できたと思う。

私は君達の幸せに暮らせる事を
願っている。

この思いを次につなげてほしい。

私は手記を書き終え筆記具を置いた。

そして身体を引きずるようにして
部屋の片隅に手記を隠した。

私の思う自分の役割はすべて終わり
後は死を待つだけとなった。

暗闇が迫ってくる。

ふと気がつくと
目の前に紀伊三尉がいた。

周りには死んだ小隊の皆がいた。
私は懐かしい顔に涙が出ていた。

「今…会いに行きます」と私は答えようとしたが
もう声を出す気力もなかった。


紀伊三尉は何かを必死に
叫んでいるが私には聞きとる事が
出来なかった。

やがて、紀伊三尉は部屋の扉の方を
黙って指し示した。

何か…あるのか…?

音……

振動……

それは慣れ親しんだものだった。

私の感覚が戻ってくる。

銃声が聞こえる。

迫撃砲だろうか?

その様な音が聞こえた。

戦闘だ……!!!
戦闘が起こっている……!!

やがて突然部屋の扉が
バンと開かれた。

そこには自衛隊の戦闘装備をした
霞2曹が立っていた。

霞2曹はよほど焦っていたのだろう。
その息は上がっていた。

私の姿を見ると

怒りと
憎しみと
悲しみと
喜びとを交えた複雑な表情をして
黙って私を抱きしめた。

「いいか、死ぬな!
たとえ捕まっても生きていれば
俺が必ず助けに行く!
必ずまた、生きて合おう」」

私は最後に交わした霞2曹との
約束を思い出していた。

霞2曹はその約束を今、果たしたのだ。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...