シューゼと水蒸気の姫君 【完結済み】

誰時 邪無 - タレドキ ジャム -

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「――――ものすごい勢いで中身が飛び出すから、絶対人に向けて使うなよ」

 ポッポの忠告が聞こえた次の瞬間――――ステッキから飛び出した何かが、エリオの帽子を真上に弾く。

 と、帽子はそのまま、ポッポの顔に落下した。 

「……おい。最後まで話を聞け」

 怒りの滲んだポッポの声が、静かになった部屋に響く。

 その勢いに驚いて固まっているシューゼとエリオの頭上には、ステッキから飛び出した何かが天井に突き刺さっており、その何かからはチェーンがプラプラとぶら下がっていた。

「こ、これは……?」

 困惑の声を漏らしたのは、シューゼだった。

「一応、発射式のマジックハンドのつもりだったんだけどな」

 ポッポは自分の顔に乗っていた帽子をどかす。そして、

「けど、勢いが強すぎて、チェーンが千切れるか、手からステッキが滑り落ちるか。結局、使い物にならねえ」

 と言って、ポッポは飛んで天井からぶら下がったチェーンを掴んだ。

 チェーンにかかるポッポの重みで、その先端が天井から抜け落ちる。と、それをポッポが受けとめる。それを見てシューゼが、

「拳、の形……?」

 と、口にした。

「そ、本来は飛んでいった先にある鉄骨とかロープを掴んで、ステッキを引き上げるためのもんだったんだけど……」

 ポッポはそう言いながら、手の甲に作られたスイッチを押して、拳を開いたり閉じたりしてみせる。
 しかし、それからポッポはシューゼに拳を預けると、顔に飛んできたエリオの帽子を手に持って一転。――――怒ったように「っていうかなぁ……」と語気を強めると、

「何でもかんでも、すぐにスイッチ押すんじゃねえよ! ガキかてめえは!!」

 と、エリオの顔に向かって帽子を投げつけた。

「――――ぶっ! な、何すんの!?」

 エリオが、ポッポに食ってかかる。と、ポッポは、

「帽子を返してやったんだよ!」

 と、エリオからステッキを奪い返した。

「だいたい、作ってるのが全部不良品なのがいけない!」

 エリオが、言い返す。

「不良品じゃねえよ! 出来たのがたまたま・・・・本来の用途と違っただけだ!」

「じゃあ、ダメじゃん! ポンコツ発明家!!」

「うるせぇ! ガキ金髪!!」

「チビ!」

「アホ!!」

 エリオとポッポ、2人のおでこがぶつかりそうになる。――――が、2人を止めたのは、シューゼの手だった。――――いや、止めたというよりは、チョップして無理やり黙らせたというのが正確な内容だけれど。

「はいはい、両成敗ね」

 エリオとポッポは、チョップされたおでこを抑えてシューゼを睨む。と、そんな2人にシューゼは諭すように優しく声をかけた。

「まず、エリオ。説明を全部聞く前に、勝手に動かしたのが悪い。それに不良品だなんて言い方もダメ」

「……」

「次に、ポッポ。シンプルに口が悪い。あと、帽子を投げつけるのはダメ」

「……ふん」

「分かった?」

 2人は黙りこくる。しかし、もう一度、シューゼが、

「……無理に仲直りしろとは言わないけど、せめて喧嘩はやめてね。分かった?」

 と、聞くと、

「わーったよ」
「……分かった」

 と、2人とも不服そうに顔を逸らしながらも、少しは落ち着いたようだった。

「……はぁ、初めは友達になってもらうつもりだったのに」

 そう肩を落とすシューゼの傍で、エリオが帽子を再度被ろうとする。と、その時、シューゼが、

「あ。あと、その帽子。ここでは被らなくてもいいよ。全部話すつもりだから」

 と、エリオに言った。

「え?」

「……ん?」

 エリオが戸惑いを見せると、ポッポが顔を上げる。そして、エリオと目が合うと、

「……ん え、あ、金髪じゃん!?」

 と、目をぱちくりとさせ、驚きを見せた。

「さっきガキ金髪って言ってただろ……」

 シューゼは、突っ込まざるを得なかった。


   ▼ ▼ ▼ ▼
 

「エリオは、いま逃亡中のリリエ・エンドで、あの灰髪の少年に化けてて、外に出たがっていて……。はぁ、頭が痛くなるぜ……」

 一息ついて、3人は椅子に座り、ポッポの出したお茶を啜る。その所作が1人だけ綺麗なエリオを見ると、ポッポはため息を吐いた。

「……ま、お前が意味のない嘘をつくとは思えねえしなぁ。で、何の用よ。まさか、友達になって終わりってわけじゃないだろ?」

「うん。1つはこれ」

 そう言って、シューゼはポケットから例の銀時計を取り出す。

「銀時計? ……ああ、前に言ってた直しかけの」

「うん。だけど、僕の力だけじゃダメで。ポッポは【テンプ】って知ってる?」

「もちろん。時計の心臓部のあの細ーい針だろ?」

「そう。あそこがうまく機能しなくて、だから見てもらいたいんだ」

「おう。分かった。明日には直してやるよ」

「ありがとう! ……それで、もう1つなんだけど。例の飛行機って……」

 シューゼは、ガレージに置かれた一際大きな発明品を見る。
 それはシューゼたちがこのガレージに来るまでポッポがいじっていたものであり、固く分厚く細長い落花生のような見た目をしていた。その中心やや前方には、穴が2つ空いてもいた。

「おう! ついに決心したか! 準備できてるぞ! ちゃんと穴が2つの、2人・・乗りでな!」

「2人乗り!? これなら……」

「そうさ! これなら――――」

 シューゼとポッポは顔を見合わせると、笑顔になる。

「――――エリオも外に出せる!」

「――――お前と一緒にこの街を出られる!」

 しかし、直後――――2人の顔は希望と絶望に分かれた。
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