9 / 18
9 友達
しおりを挟む
「――――ものすごい勢いで中身が飛び出すから、絶対人に向けて使うなよ」
ポッポの忠告が聞こえた次の瞬間――――ステッキから飛び出した何かが、エリオの帽子を真上に弾く。
と、帽子はそのまま、ポッポの顔に落下した。
「……おい。最後まで話を聞け」
怒りの滲んだポッポの声が、静かになった部屋に響く。
その勢いに驚いて固まっているシューゼとエリオの頭上には、ステッキから飛び出した何かが天井に突き刺さっており、その何かからはチェーンがプラプラとぶら下がっていた。
「こ、これは……?」
困惑の声を漏らしたのは、シューゼだった。
「一応、発射式のマジックハンドのつもりだったんだけどな」
ポッポは自分の顔に乗っていた帽子をどかす。そして、
「けど、勢いが強すぎて、チェーンが千切れるか、手からステッキが滑り落ちるか。結局、使い物にならねえ」
と言って、ポッポは飛んで天井からぶら下がったチェーンを掴んだ。
チェーンにかかるポッポの重みで、その先端が天井から抜け落ちる。と、それをポッポが受けとめる。それを見てシューゼが、
「拳、の形……?」
と、口にした。
「そ、本来は飛んでいった先にある鉄骨とかロープを掴んで、ステッキを引き上げるためのもんだったんだけど……」
ポッポはそう言いながら、手の甲に作られたスイッチを押して、拳を開いたり閉じたりしてみせる。
しかし、それからポッポはシューゼに拳を預けると、顔に飛んできたエリオの帽子を手に持って一転。――――怒ったように「っていうかなぁ……」と語気を強めると、
「何でもかんでも、すぐにスイッチ押すんじゃねえよ! ガキかてめえは!!」
と、エリオの顔に向かって帽子を投げつけた。
「――――ぶっ! な、何すんの!?」
エリオが、ポッポに食ってかかる。と、ポッポは、
「帽子を返してやったんだよ!」
と、エリオからステッキを奪い返した。
「だいたい、作ってるのが全部不良品なのがいけない!」
エリオが、言い返す。
「不良品じゃねえよ! 出来たのがたまたま本来の用途と違っただけだ!」
「じゃあ、ダメじゃん! ポンコツ発明家!!」
「うるせぇ! ガキ金髪!!」
「チビ!」
「アホ!!」
エリオとポッポ、2人のおでこがぶつかりそうになる。――――が、2人を止めたのは、シューゼの手だった。――――いや、止めたというよりは、チョップして無理やり黙らせたというのが正確な内容だけれど。
「はいはい、両成敗ね」
エリオとポッポは、チョップされたおでこを抑えてシューゼを睨む。と、そんな2人にシューゼは諭すように優しく声をかけた。
「まず、エリオ。説明を全部聞く前に、勝手に動かしたのが悪い。それに不良品だなんて言い方もダメ」
「……」
「次に、ポッポ。シンプルに口が悪い。あと、帽子を投げつけるのはダメ」
「……ふん」
「分かった?」
2人は黙りこくる。しかし、もう一度、シューゼが、
「……無理に仲直りしろとは言わないけど、せめて喧嘩はやめてね。分かった?」
と、聞くと、
「わーったよ」
「……分かった」
と、2人とも不服そうに顔を逸らしながらも、少しは落ち着いたようだった。
「……はぁ、初めは友達になってもらうつもりだったのに」
そう肩を落とすシューゼの傍で、エリオが帽子を再度被ろうとする。と、その時、シューゼが、
「あ。あと、その帽子。ここでは被らなくてもいいよ。全部話すつもりだから」
と、エリオに言った。
「え?」
「……ん?」
エリオが戸惑いを見せると、ポッポが顔を上げる。そして、エリオと目が合うと、
「……ん え、あ、金髪じゃん!?」
と、目をぱちくりとさせ、驚きを見せた。
「さっきガキ金髪って言ってただろ……」
シューゼは、突っ込まざるを得なかった。
▼ ▼ ▼ ▼
「エリオは、いま逃亡中のリリエ・エンドで、あの灰髪の少年に化けてて、外に出たがっていて……。はぁ、頭が痛くなるぜ……」
一息ついて、3人は椅子に座り、ポッポの出したお茶を啜る。その所作が1人だけ綺麗なエリオを見ると、ポッポはため息を吐いた。
「……ま、お前が意味のない嘘をつくとは思えねえしなぁ。で、何の用よ。まさか、友達になって終わりってわけじゃないだろ?」
「うん。1つはこれ」
そう言って、シューゼはポケットから例の銀時計を取り出す。
「銀時計? ……ああ、前に言ってた直しかけの」
「うん。だけど、僕の力だけじゃダメで。ポッポは【テンプ】って知ってる?」
「もちろん。時計の心臓部のあの細ーい針だろ?」
「そう。あそこがうまく機能しなくて、だから見てもらいたいんだ」
「おう。分かった。明日には直してやるよ」
「ありがとう! ……それで、もう1つなんだけど。例の飛行機って……」
シューゼは、ガレージに置かれた一際大きな発明品を見る。
それはシューゼたちがこのガレージに来るまでポッポがいじっていたものであり、固く分厚く細長い落花生のような見た目をしていた。その中心やや前方には、穴が2つ空いてもいた。
「おう! ついに決心したか! 準備できてるぞ! ちゃんと穴が2つの、2人乗りでな!」
「2人乗り!? これなら……」
「そうさ! これなら――――」
シューゼとポッポは顔を見合わせると、笑顔になる。
「――――エリオも外に出せる!」
「――――お前と一緒にこの街を出られる!」
しかし、直後――――2人の顔は希望と絶望に分かれた。
ポッポの忠告が聞こえた次の瞬間――――ステッキから飛び出した何かが、エリオの帽子を真上に弾く。
と、帽子はそのまま、ポッポの顔に落下した。
「……おい。最後まで話を聞け」
怒りの滲んだポッポの声が、静かになった部屋に響く。
その勢いに驚いて固まっているシューゼとエリオの頭上には、ステッキから飛び出した何かが天井に突き刺さっており、その何かからはチェーンがプラプラとぶら下がっていた。
「こ、これは……?」
困惑の声を漏らしたのは、シューゼだった。
「一応、発射式のマジックハンドのつもりだったんだけどな」
ポッポは自分の顔に乗っていた帽子をどかす。そして、
「けど、勢いが強すぎて、チェーンが千切れるか、手からステッキが滑り落ちるか。結局、使い物にならねえ」
と言って、ポッポは飛んで天井からぶら下がったチェーンを掴んだ。
チェーンにかかるポッポの重みで、その先端が天井から抜け落ちる。と、それをポッポが受けとめる。それを見てシューゼが、
「拳、の形……?」
と、口にした。
「そ、本来は飛んでいった先にある鉄骨とかロープを掴んで、ステッキを引き上げるためのもんだったんだけど……」
ポッポはそう言いながら、手の甲に作られたスイッチを押して、拳を開いたり閉じたりしてみせる。
しかし、それからポッポはシューゼに拳を預けると、顔に飛んできたエリオの帽子を手に持って一転。――――怒ったように「っていうかなぁ……」と語気を強めると、
「何でもかんでも、すぐにスイッチ押すんじゃねえよ! ガキかてめえは!!」
と、エリオの顔に向かって帽子を投げつけた。
「――――ぶっ! な、何すんの!?」
エリオが、ポッポに食ってかかる。と、ポッポは、
「帽子を返してやったんだよ!」
と、エリオからステッキを奪い返した。
「だいたい、作ってるのが全部不良品なのがいけない!」
エリオが、言い返す。
「不良品じゃねえよ! 出来たのがたまたま本来の用途と違っただけだ!」
「じゃあ、ダメじゃん! ポンコツ発明家!!」
「うるせぇ! ガキ金髪!!」
「チビ!」
「アホ!!」
エリオとポッポ、2人のおでこがぶつかりそうになる。――――が、2人を止めたのは、シューゼの手だった。――――いや、止めたというよりは、チョップして無理やり黙らせたというのが正確な内容だけれど。
「はいはい、両成敗ね」
エリオとポッポは、チョップされたおでこを抑えてシューゼを睨む。と、そんな2人にシューゼは諭すように優しく声をかけた。
「まず、エリオ。説明を全部聞く前に、勝手に動かしたのが悪い。それに不良品だなんて言い方もダメ」
「……」
「次に、ポッポ。シンプルに口が悪い。あと、帽子を投げつけるのはダメ」
「……ふん」
「分かった?」
2人は黙りこくる。しかし、もう一度、シューゼが、
「……無理に仲直りしろとは言わないけど、せめて喧嘩はやめてね。分かった?」
と、聞くと、
「わーったよ」
「……分かった」
と、2人とも不服そうに顔を逸らしながらも、少しは落ち着いたようだった。
「……はぁ、初めは友達になってもらうつもりだったのに」
そう肩を落とすシューゼの傍で、エリオが帽子を再度被ろうとする。と、その時、シューゼが、
「あ。あと、その帽子。ここでは被らなくてもいいよ。全部話すつもりだから」
と、エリオに言った。
「え?」
「……ん?」
エリオが戸惑いを見せると、ポッポが顔を上げる。そして、エリオと目が合うと、
「……ん え、あ、金髪じゃん!?」
と、目をぱちくりとさせ、驚きを見せた。
「さっきガキ金髪って言ってただろ……」
シューゼは、突っ込まざるを得なかった。
▼ ▼ ▼ ▼
「エリオは、いま逃亡中のリリエ・エンドで、あの灰髪の少年に化けてて、外に出たがっていて……。はぁ、頭が痛くなるぜ……」
一息ついて、3人は椅子に座り、ポッポの出したお茶を啜る。その所作が1人だけ綺麗なエリオを見ると、ポッポはため息を吐いた。
「……ま、お前が意味のない嘘をつくとは思えねえしなぁ。で、何の用よ。まさか、友達になって終わりってわけじゃないだろ?」
「うん。1つはこれ」
そう言って、シューゼはポケットから例の銀時計を取り出す。
「銀時計? ……ああ、前に言ってた直しかけの」
「うん。だけど、僕の力だけじゃダメで。ポッポは【テンプ】って知ってる?」
「もちろん。時計の心臓部のあの細ーい針だろ?」
「そう。あそこがうまく機能しなくて、だから見てもらいたいんだ」
「おう。分かった。明日には直してやるよ」
「ありがとう! ……それで、もう1つなんだけど。例の飛行機って……」
シューゼは、ガレージに置かれた一際大きな発明品を見る。
それはシューゼたちがこのガレージに来るまでポッポがいじっていたものであり、固く分厚く細長い落花生のような見た目をしていた。その中心やや前方には、穴が2つ空いてもいた。
「おう! ついに決心したか! 準備できてるぞ! ちゃんと穴が2つの、2人乗りでな!」
「2人乗り!? これなら……」
「そうさ! これなら――――」
シューゼとポッポは顔を見合わせると、笑顔になる。
「――――エリオも外に出せる!」
「――――お前と一緒にこの街を出られる!」
しかし、直後――――2人の顔は希望と絶望に分かれた。
10
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる